「権藤 ゴンドウ 雨、ゴンドウ」現役時代に名文句を生んだ野球殿堂入り名投手・名将の教えをたどる
6月10日(水)深夜2:50よりフジテレビで、第29回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品「権藤 ゴンドウ 雨、ゴンドウ ~壊れた肩が築いた“教えない教え“~」が放送される。
2019年末に東海テレビが制作・放送したドキュメンタリーで、野球人・権藤博氏の生き様と指導に迫ったものだ。
投手・権藤博は、佐賀県立鳥栖高校を経て、社会人野球・ブリヂストンタイヤへと進んだ。当時の若者にとって「夢」「富」の象徴が一杯のビールのうまさ。権藤は「頑張れば自分のカネでビールが飲める」と、投手・稲尾和久を徹底的にまねながら日々鍛錬を続けた。恵まれた身体能力とたゆまぬ努力を重ねた投手の評判は、プロ野球スカウト注目の存在となった。
ドラフト制が導入される以前の当時のプロ野球は自由競争。「野球は巨人」と言われていた時代の中、権藤は最初に具体的条件提示のあった中日ドラゴンズへ入団することを決意。「オレには東京じゃなく名古屋くらいがちょうどいいのではないか」そんな思いもあったという。
入団した昭和36年(1961年)は、読売ジャイアンツ(巨人)戦での初完封を含む35勝。2年目に30勝。連投に次ぐ連投で「権藤 ゴンドウ 雨、ゴンドウ…雨、雨、ゴンドウ、雨、権藤」と流行語にすらなる八面六臂の活躍を見せた。
しかし、登板過多は歴然で、肩には激痛が走るようになり、野手転向後を含む現役生活はわずか9年という太く短いものだった。
引退から4年。オイルショックに揺れた時代の昭和48年(1973年)、二軍コーチとして中日ドラゴンズに復帰。「指導者」という新たな野球人生が始まった。
自費で訪れたアメリカ・ルーキーリーグ、現地のコーチが見せる「Don't over teach(教え過ぎるな)」という指導哲学を目の当たりにし、権藤の心に衝撃が走った。自らの現役生活で経験した絶望の時間とこの体験が後に、「教えない教え」という独自の指導哲学の形成につながる。
中日退団後、仰木彬監督に招へいされた近鉄バファローズでは、昭和63年(1988年)の優勝を分けた「ロッテオリオンズ×近鉄バファローズ」のWヘッダー「10.19」を経験。
さまざな球団を投手コーチとして渡り歩く中で、ぶれなかったのは「選手に寄り添う」姿勢。その姿勢が監督とのあつれきを生む中で、現役時代とは異なる「自分ならこうしない」という「べからず集」を蓄積することになる。
1998年からは横浜ベイスターズの監督に。「肩は消耗品」という考えから中継ぎローテーションの導入、絶対的守護神・佐々木主浩への信頼を軸に、「マシンガン打線」を擁するタレント軍団を38年ぶりのリーグ優勝、そして日本一へと導いた。2000年までの監督期間、横浜ベイスターズはずっとAクラスの成績を収めた。
平成29年(2017年)には78歳でワールド・ベースボール・クラシック(WBC)・日本代表投手コーチに就任。招へいした小久保裕紀監督も舌を巻くほどの手腕を発揮した。
令和元年(2019年)。80歳となった権藤博は新時代初の野球殿堂入りを果たした。現役通算82勝ながら指導者としての手腕が高く評価されてのものだった。81歳の誕生日(12月2日)に開かれた権藤博野球殿堂入り祝賀パーティー。そうそうたる顔ぶれの「仲間」たちを前に語るメッセージには、昭和・平成を駆け抜けた野球人の「権藤博という生き方」が集約されていた。
権藤博の指導における自負は「教えない教え」。太く短かった現役時代、だからこそ築かれた指導者としての自負。昭和、平成を生きた野球人の生き様が語る令和ヘの「伝言」を番組は伝える。
東海テレビスポーツ局・森脇淳プロデューサーコメント
「令和元年、80歳という年齢で権藤博さんが野球殿堂入り。日本に職業野球が創設された2年後の昭和13年(1938年)生まれの権藤さんの生き様について、あらためてお話をうかがい、調べていくにつれ、それは日本の昭和・平成史と歩みを共にするものだと感じました。
佐賀県生まれの青年にとって、夢と富があふれる舞台への挑戦から始まったプロ野球での歩み。憧れの稲尾和久さんを徹底的にまねたフォームで新人時代からいきなりスターダムにのし上がるも、登板過多により短命に終わった現役時代。そしてコーチ経験を通じ、仕える監督に触れた中で蓄積した“べからず集”が相まって、権藤さんの、他とは一線を画す“技術じゃない、戦い方・頑張り方を教える”コーチング論が醸成されていきます。
王貞治さんを始めとするそうそうたるメンバーの“証言”を交え、“82勝の殿堂入り野球人” 権藤博という生き方が語る、野球だけにとどまらない令和時代へのメッセージを感じていただければ幸いです」
2020年6月10日(水)深夜2:50フジテレビにて放送
語り:三宅民夫
プロデューサー:森脇淳(東海テレビ スポーツ局)
ディレクター:砂川桂一(東海テレビプロダクション)
構成:森脇淳、砂川桂一、奥田繁(エキスプレス)