<消臭力ソングの秘密>ユニークだけじゃない「心に届ける、人に寄り添う」エステーのCM
エステーのCMで、出演タレントも一緒に人気者になってほしい
――エステーのCMは歌を絡めることが多いですよね。しかも、ほとんどのCMにダサいというか、シュールというか…微妙な歌が入っています。
鹿毛:(笑)。歌についてはね、予算の面も大きいです。広告費ランキングでいうと、トップ企業の広告費が年間約600億円、競合企業が約200億円。対してエステーの広告費は約28億円。200位圏外です。自ずと放送回数も限られる。その中で記憶に残り、心に届くのは何だろうと考えると、やっぱり歌は効果的な手段なんですよね。
ただその歌も、普通の歌では面白くない。CM業界では、CM曲を一手に受ける“音プロ”(音楽制作会社)があります。ここに頼むと普通の曲が上がってきて、普通のCMになってしまいがちです。かといって、誰もが驚く有名な方には予算の都合もあり頼めません。
――そこで鹿毛さんが自作を? 先ほど曲作りのアーカイブを見せていただきましたが、ギターを手に、作詞・作曲、仮歌まで手掛けられていたのは驚きです。
鹿毛:エステーのCMに入れたい既存の枠から外れるような曲って、音プロからは上がってこなくて、これも分業制の弊害ではありますね。一つ一つの歌詞を丁寧に作りたいし、だから自分で作っているんです。ただ、ダサい歌なはずなのに、西川さんたちは上手く歌い過ぎるので、違う意味で困ってしまうときがあります(笑)。
――西川貴教さんたちのことですが、エステーのCMはタレントの押し出しも強く、商品よりタレントを売りたいのかなと思うときがあります。
鹿毛:間違っていません(笑)。一般のタレントCMは、タレントさんの人気を借りてその人気を消費しているわけなんです。エステーのCMだけが人気が出るのでなく、出演いただいたタレントさんの人気度が一緒に上がっていくというものにしたいとずっと思っていました。
西川さんはもちろん大人気者なんだけど、もっと人気者になってほしい。高橋愛ちゃん、田中れいなちゃんのことをもっと多くの人に知ってほしい。この話はご本人たちには言ってませんが、この気持ちはきっと伝わっていると思います。だから西川さんも一緒にCMを作ってくれるんです。エステーのCMでお客さんが楽しんでくれて、タレントさんがますます人気者になってくれるのが僕の一番の幸せですね。