伊吹藍(綾野剛)×志摩一未(星野源)真逆バディの魅力
そもそも伊吹藍という男はかなり異質だ。前述した「キュルッ」「ウフりたい」などの“伊吹語”を数多く生み出している張本人で、「頭がゆるふわ」。ドラマ内でも「この人、本当に警察の人?」「『警察だ』って言ってるけど、なんかヤバそうな奴……」「警察……?」などと事あるごとに疑われている。
刑事ドラマ=スーツや制服をきっちり着込んだ真面目な人たちというイメージがある人も少なくないはず。もちろん、「相棒」の初代相方・亀山薫(寺脇康文)のようなラフな服装で体育会系の肉体派というキャラクターもいるが、伊吹はそういった類ともまた異なる。
とにかく足が速いことが取り柄で、野生の勘が鋭い伊吹。一般的な人間と目の付け所が違い、五感も異常に発達している。軟派な雰囲気にどこかつかみどころがない性格で、常識という概念がないため、やることなすこと滅茶苦茶だ。だが、決して憎めない。それどころか、愛くるしさすら感じさせる。おそらく、誰よりも自身の感情に素直でピュアだからだろう。
一方、志摩はある意味テンプレート通りの優秀な刑事である。規則に忠実で少し神経質。頭が切れて、抜かりがない。「俺は自分も他人も信用しない」と口にし、すべての物事を疑う。だが、何も信用していないからこそ、伊吹の根拠がないただの勘も頭から否定をせずに、可能性がゼロになるまでとことん付き合うという生真面目さ。
一見、志摩は常識人で頭が固いよくある刑事に見えるが、実のところはその逆で頭が柔らかく、自身の価値観や考え方を他人に押し付けることもない。自分とも他人とも適度な距離を保つため、冷たく見えるが、性根は優しく温かいことが端々から感じられる。その性格は、おそらく彼の過去が大きく影響しているのだろうが。なんとなく志摩は、自分自身の矛盾とも葛藤しているように見える。
つまり、自由奔放で野生児の伊吹と規律を守る真面目な志摩という真逆バディ。この凹凸加減が綺麗にかっちりとはまる。無意識にボケる伊吹に律儀にツッコむ志摩という絶妙な関係性が癖になる。真逆な2人だからこそ、お互いの個性をより際立たせ、生き生きして見えるし、共に性格に矛盾している部分があるのもまたリアルな人間らしくて魅力的だ。
第3話で志摩が伊吹のことを聞かれた際に、「俺はあいつを意外と買ってる。俺らにないところ」と評していたように、二人の間には確実に尊敬や信頼、絆が生まれてきている。おそらく、彼らはルーブ・ゴールドバーグ・マシン(ピタゴラ装置)という名の人生の中で、お互いにとって「行く先を変えるスイッチ」となる重要人物にあたるのではないだろうか。
毎週金曜夜10:00-10:54
TBS系で放送