「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ！オトナ帝国の逆襲」（'01年）、「―嵐を呼ぶアッパレ！戦国大合戦」（'02年）など、大人も泣けるアニメ映画のクリエイターとして人気の原恵一。彼が手掛けた「カラフル」が8月18日（木）にWOWOWで放送される。同作は、森絵都の小説をアニメ映画化したファンタジーで、死んだはずの主人公が、自殺した中学生の体を借りて生き返り、自分の人生を見詰め直していく姿を感動的に描いた作品。ことし6月にフランスで開催された第35回アヌシー国際アニメーション映画祭で、特別賞と観客賞をダブル受賞するという快挙を成し遂げた。そんな原監督にインタビューを敢行した。
――受賞を聞いたときの感想をお聞かせください
現地にいたので、その場で聞いて表彰されました。世界的に規模が大きいアニメのフェスティバルで、「カラフル」のような日本的な作品が賞をいただけたことが素直にうれしかったです。自分に縁がある賞だとは思っていなかったので
――会場のお客さんの反応はいかがでしたか？
日本以上に反応が大きかったです。笑えるシーンがほとんどない作品ですが、その中の少ない笑えるシーンで大きな笑いが起こったり。上映後に長い時間拍手をもらったり。日本だとこういうことってあまりないんですよ
――今回、映像化するに当たって注意した点はありますか？
なるべく原作に沿って作りたかったんです。僕も原作を読んでみて、面白かったのでなるべくその雰囲気を壊さずそのまま映像化できればと。原作ファンが多い作品なので、アニメにすることでファンの方々に違和感を与えたくはありませんでした。もちろんアニメオリジナルの要素も入れてあります。（主人公の案内役の）プラプラの声を演じたまいける君は大阪出身だったので、それに合わせてプラプラのしゃべり方を関西弁にしたり
――今回、宮崎あおいさんや、高橋克実さんといった多くの俳優の方が声の出演をされていますね
「カラフル」は、現実的で、生身の肉体を感じられるほうが雰囲気に合うのではないかと思い、こういったキャスティングにしました。」
――今回参加された俳優さんの中で特に印象深い方はいらっしゃいますか？
麻生久美子さんですね。元々「Stereo Future」（'00年）という映画を見てから個人的に大好きだったんです。実際の麻生さんの年齢よりも年上の、主人公のお母さん役をやってもらうことに悩みはあったんですが、お願いしたら快諾してくれたので。後から聞いたんですが、麻生さん自身アニメが好きだったらしく、僕の「クレヨンしんちゃん」の映画も見ていたので依頼が来てうれしかったですって言われて、逆に僕がうれしかったですけどね（笑）
――日本での初日舞台あいさつのときに、監督は「アニメは派手なことをやろうと思えばいくらでもできるけど、『カラフル』では人間の感情を描くことに徹底した」とおっしゃっていましたね
これまで「クレヨンしんちゃん」や、藤子・F・不二雄先生の作品で、いわゆるアニメっぽい作品を散々やってきたので、だんだんそうではない要素も入れてみたいなと思うようになって、今回こういうスタイルで作りました。でもこういったリアルさを追求していこうとは思っていません。こういう作品を作るのに我慢が必要だと身に染みるほど分かりました。作り手にもけっこう負担が掛かるんです（笑）
――それはどういった部分ですか？
日常的な動きなんですけど、特に食事のシーンですね。アニメだと食事のシーンって普通あまり描かないんですよ。同じ動きの連続で面白みがない。絵を書く枚数も多くて本当に大変で、アニメーターはみんな嫌がるんです。なのに、普通に見えて当たり前のシーンだから報われない。でも「カラフル」では食事が大事な場面になってくるのであえて多く入れました。現場では、みんな食事のシーンを描いてましたね（笑）
――最後に「カラフル」の注目ポイントをお願いします
やっぱり食事のシーンですね（笑）。あとは、クライマックスの屋上のシーンで、マジックアワー（日没時の空の色が刻々と変化する時間）がリアルタイムで小刻みに進行するという画期的なことを試してみたんです。なかなか自然にできたんですが、自然過ぎて誰にも気付いてもらえないんですよ（笑）。ぜひ注意して見てほしいですね
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
8月18日（木）夜0：00-2：10 WOWOW（WOWOW2、3も）で放送
