「クリエイターズ・ファイル」#62 ベストセラー作家・阿久津しのぶ
ロバート・秋山竜次扮(ふん)する最先端のクリエイターにインタビューする「クリエイターズ・ファイル」。今回は、第52回「中根賞」、第28回「大田原賞」をW受賞(平成7年)したことが注目された作家・阿久津しのぶ氏。
数ある代表作の中でも、1999年から開始したエッセイ「男の余裕」シリーズは累計150万部を突破している。これからの生き方を指し示すような独自の言葉の数々はどのようにして生まれているのか。いつも執筆のために訪れるという別荘で、ベストセラー作家の日常と創作の秘訣(ひけつ)を伺った。
何を書こうかなって考えてる時が一番楽しくて好きだな
――大人気シリーズ連載「男の余裕」が開始してから、20年。仕事、遊び、趣味、酒、女……自らの生き方に裏打ちされた阿久津氏の言葉の数々は、余裕のない現代人の心に深くねざし、新しい価値観を与えてきた。
阿久津「本当に美味いものは、食べた瞬間には美味いかどうかって分からないんですよ。でも、そこから2日たって、1週間たった時に『あれ、どうしてだろ? もう一度食べたいな』って思う。本当の美味さを脳みそが記憶してるんだよね。僕が書くものも同じなんですよ。読んだ瞬間にいい話だと思わせるつもりは一切ない。むしろ、『何が面白いか分からない』『これのどこがいいの』って、そう感じさせたらこっちのものですよね」
――阿久津氏はウイスキーを飲み、葉巻をくゆらせながら、そう語り始めた。
阿久津「今は、みんなスマホでこうするでしょ。スワイプ…って言うのかな。一回見てつまらなかったらもうスワイプ…っていう感じでね。本当に感じているのかなって思うよね。若い人たちを見てると、目の前の景色や経験したことも全てスワイプしてるように見える。仕事もそう。恋愛だってそう。次から次へとスワイプする。そういうことだよね」
スタイリスト=古沢愛/ヘア&メーク=伊藤有香/デザイン=hooop/編集=CTB
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