「そんないっぱい“刺さって”たら、刺さり過ぎて死んじゃうんじゃないかって」“超歌手”大森靖子が新曲に込めた思いを語る<インタビュー>
今年の2月にベストアルバムをリリースした“超歌手”大森靖子。6月には「大森靖子2020ハンドメイドホーム6」と銘打ち、アルバム「Kintsugi」の今冬発売やYouTube公式チャンネルでのラジオ番組「復活!ミッドナイト清純異性交遊ラジオ」配信など6つの企画を発表、実施している。
そんな大森は7月29日(水)に新曲「シンガーソングライター」を配信限定でリリース。そこで、今回は同シングルやコロナ禍でのレコーディング、自粛期間中の過ごし方などについて話を聞いた。
「“DON’T STOP THE MUSIC”って言うより“STOP THE MUSIC”って言われた方が自分に音楽が流れ出す」
――(インタビューの前に撮影があって)撮影お疲れさまでした。今年2月のベストアルバムの取材をさせてもらったときとは撮影中の大森さんの雰囲気が違うように感じたんですが、衣装によって見せ方を変えたりしているんでしょうか?
服がきれいに見えるように気を付けてます。
――今回リリースする「シンガーソングライター」は、テーマはタイトルそのままズバリだと思うんですが、具体的にはどんなことを歌っているんでしょうか。
自分のことを名乗るときに、私は“超歌手”って名乗っているんですけど、歌手って、例えばテレビに出ていてちょっとピッチがずれたりリズムが悪かったりすると、視聴者の方から「何であんなに歌がヘタなのにテレビに出てるんだ」みたいな感じで言われたりするじゃないですか。
そういうのを見て、別に歌はうまく歌ったり、ピッチを合わせたり、ビブラートをかけたりするのが目的じゃなくて、楽曲の魅力を伝えたり、ただ音楽であるためだったり、表現することが音楽の一番の目的だから、技術とか手段の方が目的になるのはちょっと悲しいなって思うところがあって、それで“超”っていう字を付けたんですけど。
仕事的には曲を作って歌っている人なので、「シンガーソングライター」って表記されることも結構多いんですけど、シンガーソングライターって何か怪しい職業っぽくない?って思っていて(笑)。
私はあくまで世界で起こっていることだったり、人間だったりを切り取って楽曲にして、それを歌っているだけなので、シンガーソングライターに何となくある“自分という人間がこうです”っていう概念、感覚が自分にはあまりないなと思って。
なおかつ最近は“刺さる”ってよく言われていたり、そういう楽曲が受け入れられるようになって、ちゃんととがった表現とかも受け入れられるようになったりするのはいいことだと思うんですけど、そんないっぱい刺さってたら、いろんなものが刺さり過ぎて死んじゃうんじゃないかって思っちゃって。SNSで「いいね!」を付けるのと同じ感覚だと思うんですけど。
例えば、現代文を読むときと漢文を読むときの感覚は違うじゃないですか。曲を作る人っていうのは「ここは“が”にするべきか、“は”にするべきか」とか、そういうところも気にしていたりするので、そういうこだわりを読み解くっていうことが人の気持ちを想像するってことだと思うんです。
今SNSでの友達の選び方とか、ブロックすれば友達をやめられるとか、そういうところからだと思うんですけど、自分の欲しい情報を選んで取れるっていうのはすごくいいことけど、でも何かもっと訳の分からないことを想像していく方が楽しいし、分からないものを理解していくことが想像力なので、その感覚の方をもっと大事にしたい。
そう思って表現活動をしていて、人間のダメなところをもっと歌いたいとか、ここはまだ言語化されていない表現だから表に出したいとか、そういうものを大事にしているから、懐疑心や想像力、優しさを持ってほしいなって願いがこもっています。
――今回の取材にあたって曲を聞かせていただいたんですが、“STOP THE MUSIC”と繰り返すのが面白い表現だなと思いました。
私、歌で本当に表現したいことには反語を使うのが好きで。“DON’T STOP THE MUSIC”だったら「ああそうか」ってなるじゃないですか。でも、“DON’T STOP THE MUSIC”より“STOP THE MUSIC”って言われた方が、「何で?」とか「止めちゃイヤだ」とかもっと考えるじゃないですか。
“DON’T STOP THE MUSIC”って言うより“STOP THE MUSIC”って言われた方が自分に音楽が流れ出す、これは自分があまのじゃくな性格だからかもしれないですけど(笑)。
7月29日(水)配信スタート