糸村が特別な存在になることは、どうやらなさそうです
――「遺留捜査」シリーズは2011年の4月期に連ドラとして登場以来、SP版も含めて足掛け9年。そして節目となる10年目に突入しましたね。
10年という数字を聞くと急に重たく感じます。まだ総括するには時期尚早なのかなと思いつつも、自分の中で振り返ってみて、これほど一つの役と長く付き合ったことがないのは確かなんです。改めて考えると、役者として大変に光栄なことを経験させていただいているんだと思います。
だけど、糸村が特別な存在になることは、どうやらなさそうです。
僕の心の中の糸村の立ち位置は、いつでも同じところにいるようにしか思えないんです。
であるからこそだと思うんですけど、1年間役を離れていたとしても大きく隔たりを感じることはないですし、糸村に演じるにあたっての意識めいたことも何一つ必要ない。
いつでも“遺留捜査の糸村”としての日常にすんなり入ることができる、何気ない存在なんです。
だから飽きることもないですし、今後もきっと時間空間的距離感を感じさせないような存在として、そこにいる存在なんだろうと思っています。
――「StayHome期間中」はどのようなことをして過ごしていましたか?
本を読んだり、アニメーションを見たり。あとはゲームをしていました。
――どんなゲームを?
「The Last of Us(ラスト・オブ・アス)2」というゲームが6月に発売されたんですけど、本来でしたら2月か3月頃だった発売予定が延期になっていたんです。
それもあって、一度クリアしていたんですけど「2」に向けての思い出しも兼ねながら改めて「1」をゆっくりと楽しんでおりました。
――また違う面白さを発見しましたか?
やっぱり名作と誉れ高い作品ということもあって、内容を全部分かっていながらそれでも物語の作り込みに胸を打たれる部分が多い作品でした。
新作が出るとなると、それまでの作品に対しての情報やスタッフの打ち明け話なども少しずつ世に出てくると言いますか、提供されていくことが多くて。
「1」について制作スタッフの方たちがいろいろ話していらっしゃるものをポツポツ目にする機会が増えてきたんです。
そういう情報を踏まえた上で改めてゲームをしてみると1回目にクリアした時とはまた違った解釈でそれぞれのシーンを楽しむことができて「2」への期待も増しました。
――そして、今は「2」に夢中?
休みの日に、のめり込んでやっております(笑)。
――2020年もあっという間に半分以上過ぎましたが、下半期にやってみたいことはありますか?
“個人的な目標”という質問に対する答えにはならないかもしれませんが、今回の「遺留捜査」のようにテレビドラマの撮影が再開されていく一方で、舞台公演もまた少しずつ息を吹き返してくると思うんです。
でも、その形態はお客様の入場数を制限したり区切りを設けたり、何らかの制約を余儀なくされるのが、当初の再開のされ方だろうとは思うんですけど、その過程を経て1日でも早く、これまで通りの劇場でのにぎわいが取り戻せるようになってほしいと願っています。
僕も舞台を務めてきた者として、お芝居をしている姿をお客様に目の当たりにしていただきたいですし、僕もお客様の姿を舞台の上から見せていただきたいという思いが強くあります。
――では、最後に「遺留捜査スペシャル」の見どころをお願いします。
「遺留捜査」という作品は、これまでも人と人とのつながりを描いてきました。
今回も同様に親と子の絆の中に生まれた“綾”や“業”ともいうべき人間模様を、SPならではの濃厚さで描いていきます。
京都ならではの風物、京野菜などを交えながら、人の想いと命の大切さを伝えていける作品をお届けしたいと思っています。
――“馬絡みのシーン”では糸村の盟友・村木(甲本雅裕)が大活躍!?
村木さんファンには何よりの見どころになると思いますし、糸村との変わらぬ掛け合いも楽しんでいただきたいです(笑)。
――捜査を進める中で糸村が馬の性別にこだわるシーンも気になります。
ああいうところにも“らしさ”を盛り込んでいただいて、糸村がスタッフからも愛されていると実感できる瞬間です。
取材・文=小池貴之