公開作品続々!北村匠海「今まで頑張ってきて良かったなと思うことが多くなりました」
芝居も音楽も「人間・北村匠海がやっているもの」だと自信を持って言える
――今作が公開された後も、「さくら」(11月13日公開)、「とんかつDJアゲ太郎」(10月30日公開)、「アンダー ドッグ」(11月27日公開)、「東京リベンジャーズ」など、たくさんの待機作がある匠海くん。昨年出版した写真集「u&i」のインタビューで「これから撮影する作品は自分にとってチャレンジなものばかり」と話していたのは、これらのことを指すのでしょうか?
北村:はい、そうです。実際、全部がチャレンジでした(笑)。でも、それによって自分がちょっと大きくなった気がします。
――多くの作品、監督から求められる現状を、自分ではどう感じていますか?
北村:正直、不思議な感じです。長い間オーディションで生きてきた人間なので、オファーをいただけること自体、どうして僕に?って思います。まだ“キミスイ”直後とかなら、ちょっと分かるんです。アカデミー賞新人賞を獲ったとか、話題になったとか、そういうので声が掛かることもあると思うんですけど。でも、今はちゃんとお芝居を観てくれてる人たちが声を掛けてくださってる感じがして。監督やプロデューサーの方が「北村匠海の演技が好きだから」と言ってくださるのは、本当にありがたいこと。今まで頑張ってきて良かったなと思うことが多くなりました。
――オファーがきたときの、「どうして僕に?」という気持ちを、どのように役や仕事に落とし込んでいますか?
北村:確かに最初は疑問には思うんですけど、あんまり気にはしていないかもしれません。せっかく呼んでくださっているわけですから。だったら(周囲に)嫉妬されるぐらいやろう、羨ましがられる存在になろうと、そのお仕事の最中は思っています。
――2019年は何かを「確立したい」という気持ちでスタートしたと話していましたが、それは達成できましたか?
北村:2019年に確立したいと思っていた理由は、さっきもお話しした通り、携わっていた作品が全て自分にとってチャレンジで、自分の幅を広げるものばかりだったから。それらが完成しつつある今、自分の中では、何々路線というのではなく、北村匠海独自のものを確立できたような気もしています。それと同じことが音楽活動にも言えて、(自分の中で)これまでは北村匠海とDISH//は別物といった感じで解離していたのが、一つになった感覚があるんです。なので、ここからさらに自分の道を歩めそうというか、芝居も音楽も「人間・北村匠海がやっているもの」だと、自信を持って言えるようになったと思います。
――そう思えるきっかけは何だったのでしょう?
北村:多分、「猫 〜THE FIRST TAKE Ver.〜」が大きかったと思うんですけど。
――「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)での単独歌唱も話題を呼びましたね。
北村:あの時(※注:歌唱のラストで歌詞が飛んでしまうハプニングがあった)は頭が真っ白になってしまって……ビックリしました(苦笑)。あんなこと今までなかったのに。メンバーがいないと、こうも違うのかと思いました。放送が終わった後に携帯を見たら、信じられないくらいの数の友達から連絡がきていました。
――そんなに!?
北村:こんなに友達いたっけ?って思ったくらい(笑)。でも、みんな(放送を)観てたよって言ってくれて、ありがたかったです。
――そんな印象的な出来事があった2020年、現状ではどんな年になっていると思いますか?
北村:2020年は……負けない年。やっぱり、この新型コロナウイルスの影響でライブができなかったり、撮影がストップしたり、エンターテインメント業は苦しい状況に置かれていて。でも、だからこそ踏ん張り時っていう気持ちがあります。
――そういった状況の中でも、エンターテインメントの新しい可能性を感じることもあったのでは?
北村:それもすごく感じています。DISH//で無観客配信ライブを行ったんですけど、1万人近くの方たちが観てくださって。自分たちも、すごいじゃん!って驚いたんですけど(笑)。でも、普段東京でやるライブだと地方に住んでいる人や海外の人は来られなかったりするのが、配信ライブであれば観られるので。もちろん、ライブは生で観たいものだし、僕らもやりたいものだけど、こういうやり方もあるんだってことには可能性を感じています。それは舞台とかも同じで、例えば無観客でもカメラを入れて、ある意味、2時間長回し芝居みたいな形もできるんじゃないかなって思ってます。
――では最後に、“北村匠海の現在地”を教えてください。
北村:一言で言うとしたら、自由とか安定、かな。以前と比べると今はすごく心に余裕があるんです。それを顕著に感じるのが、人とのコミュニケーション。何か今、メンバーとかスタッフのみなさんと、しっかりコミュニケーションが取れている気がするんです。前は何に対しても余裕がなくて、でも経験は積み重ねてきてるから、上辺だけのきれいな言葉でしゃべって、本心を伝えなかったこともあった気がするんです。それが今、そういう上辺だけの自分を作らなくてもよくなって、素直に話せている気がします。
取材・文=片貝久美子