“平成唯一の三冠王”松中信彦がハンドボールに携わったきっかけと見据える“東京五輪後”<インタビュー後編>
――KINGSのスタッフには実績のある方々がそろっています。
中学のJOCでいろんな先生方と出会えましたし、特に(長男が)高校に入ってからは試合や合同合宿で他の県の先生方と懇親会をやったりもして、そこでいろいろお話していたので、総監督やいろんな先生方を紹介していただきました。そういう形でチームスタッフは組みましたね。
スタッフの皆さんも仕事をされていて、来られないときもあると思うので、子供が増えたときにそこが不安材料にならないように、チームスタッフは増やしていこうかなと思っています。
――ハンドボールで今注目している選手はいらっしゃいますか?
ひいきかもしれないですけど(笑)、部井久アダム勇樹選手ですかね。彼は今後日本を背負う選手じゃないかなと思います。息子も一緒に練習させてもらいましたし、あれだけの体格とシュート力があれば、すごいエースになるんじゃないかなと思ってます。
――最後に、野球界とハンドボール界、それぞれに今後期待することを教えてください。
プロ野球は、コロナが収束したら自然と盛り上がってくると思います。なので、今関わっている独立リーグでいうと、選手たちにもっとハングリーさを出して、“プロに行く”んじゃなくて“プロで活躍する”という気持ちでやってほしいなっていうのはありますね。
ハンドボール界はですね、来年に東京オリンピックが開催されたとしても、僕はそこじゃなくて、目標はその次の2024年のパリと、さらにその次の2028年のロサンゼルス。僕はそのための東京オリンピックだと思っているので。
僕の夢ですけれども、競技が違ってもうちの息子にも同じようにオリンピック選手になってほしいと思う中で、こうやってハンドボールに携わるようになって思うのは、ずっと本大会に出られていないので、まずは本大会に出られればいいと思うんですよ。いきなり本大会で金メダルを取れとは思っていません。
本大会に出ないと競技人口も増えてこないし、メディアにも取り上げてもらえない。昨年の世界選手権を見て、女子は1人ポストプレーヤーが入れば大いにチャンスはあるのかなと思ったんですけど、じゃあ男子はそのために何を強化をしたり、日本らしい長所を生かせば予選を通過できるのか。
来年の東京オリンピックは開催国として出られるわけなので、その次のパリに出るために、ハンドボール協会で枠を作ったりして、今の大学生や社会人の若い選手をどんどん海外に行かせたらどうかなと僕は思っています。
アダム選手(※現在、中央大学に在学しながらフランスリーグでプレーしている)が話してくれたのは、全然“当たり”が違うと。同じプレーをしても、日本では相手を抜けたりシュートを打てたりするけど、ヨーロッパでは弾かれると言っていて。なので、男子はまずそういうところ、その当たりとか、当たったときに打てるのかとか、その辺りをヨーロッパのトップで経験した方がいいのかなと思います。
東京オリンピックが終わってから「じゃあやりましょう」では僕は間に合わないと思う。今、20代前半くらいのいい選手は結構いるんです。
でも、僕が見ている中では、ハンドボールの男子はもう満足している選手が多過ぎる気がして。やっぱり競技人口も少ないから、代表入りして安泰という選手は競争力がなくなってしまうので、世界に行かせてハングリーさを身につけるというかですね、野球もそうですけど、チーム内で競争させないとチームというのは強くならないので、そういう形になってくれればいいなとは思っています。