『カネ恋』初回放送で三浦春馬さんしのぶ声広がる「笑顔が見られて幸せ」<おカネの切れ目が恋のはじまり>
“ささやかな暮らし”の清々しさを丁寧に描く
“お金の使い方”をテーマに据えた「おカネの切れ目が恋の始まり」。
第1話では、130円のお菓子ひとつと持参のほうじ茶で一週間の疲れを癒し、千数百円の豆皿を買うのに一年も思いを募らせる玲子の“清貧”ぶりが、丁寧に描かれた。
ほかにも、冒頭に「方丈記」の冒頭の一節が登場したり、古いものを直して大切に使う伝統技法“金継ぎ”が印象的に取り入れられたり…目まぐるしく、刺激に満ちた現代に生きる中で忘れがちな“心のゆたかさ”が散りばめられている。舞台となる鎌倉の町並みや、大きな決断の前に部屋を清める玲子の心のありようも美しい。
対して、玲子の前に現れるキャラクターは浪費男子のほか、自分に投資しすぎ女子、ドケチ節約男子など、金銭感覚が極端で“ほころび”だらけ。そんなキャラクターたちが、傷つき、傷つけられながらも成長していくさまが描かれていく。清貧をモットーに生きる玲子でさえ、あこがれの人には惜しまず貢ぐ一面を持っている。
印象的なセリフも多い。金継ぎを見た慶太が「新しいの買っちゃったほうが早くない?」と問いかけたシーン。玲子は「新しいものと出会う楽しさもあるけど、使い続ける喜びもあると思うんです。モノって、繕うほどに愛着がわくものだと思うから」とその“心”を語る。また、経理部の玲子は、板垣(北村匠海)の丁寧な領収書の処理を、あえて一日の最後にまわす、と話す。それは「清くて、美しくて、癒やされるから」。
より刺激的なモノに流れがちな現代人だからこそ、古くても思いの詰まったもの、地味で目立たないけれどきちんとしたものに目を向ける心のゆとりを持ちたい、そんな思いを抱かせてくれる作品だ。“お金”というテーマは、その心を伝えるためのわかりやすい事象のひとつ、ということなのだろう。
「凪のお暇」でも“ささやかで丁寧な暮らし”の清々しさを描いた大島脚本が、それぞれに“ほころび”を持つキャラクターたちをどう成長させていくのかにも注目していきたい。(文=ザテレビジョンドラマ部)
毎週火曜夜10:00-10:57
TBS系にて放送