吉岡秀隆、“人間の弱さ”演じきる名優が「エール」の物語に深みを与えた
昭和を代表する多感な少年・青年役といえば吉岡秀隆
吉岡秀隆といえば、「北の国から」シリーズ(フジテレビ系)のナイーブな少年(どんどん成長して大人になっていく)や、映画「男はつらいよ」シリーズでは寅さん(渥美清)の甥、「ALWAYS 三丁目の夕日」では主人公の小説家。
国民的人気作にこれほどたくさん出て、その時代の日本人の気持ちを代弁するような役を担ってきた俳優である。昭和を代表する強くてかっこいい男が高倉健だとしたら、昭和を代表する多感な少年および青年は吉岡だった。
そんな彼が昭和を代表する女のドラマである朝ドラにこれまで出たことがなかったことが不思議なくらいである。ただ、平成になると、「エール」のチーフ演出家・吉田照幸の演出、木皿泉の脚本で、新しいタイプのホームドラマ「富士ファミリー」(2016、2017年)に出演している。そこでは、小泉今日子演じる妻に先立たれながらも彼女の実家で暮らしていたが、「エール」にも出ている仲里依紗演じるコスプレ趣味の女性と再婚するという、流れに身を任せたふわふわした感じの人物を愛嬌たっぷりに演じていた。
また、同じく吉田照幸の演出作、金田一耕助シリーズ「悪魔が来たりて笛を吹く」(2018年)、「八ツ墓村」(2019年)で名探偵・金田一耕助を演じている。過去に様々に個性的でレジェンドを打ち立てている金田一俳優がいるが、吉岡金田一も敗けていない。新鮮な金田一像を作りあげた。これまでの金田一の誰よりも事件や犯人に対して物凄く感情移入して見えて、それはそれで味わい深いものがあった。