「生きていて良かった」綾野剛が“自分自身”を再確認した115日間に密着!!
俳優・綾野剛、30歳。そういえば、ここ1年、彼の名前を聞く機会が増えた。'11~'12年のNHKの連続テレビ小説「カーネーション」でヒロインの恋人役を務め、幅広い層に“認知”された。世間の反応は、はっきり変わったという。'12年に入ってからも、映画「ヘルタースケルター」などの話題作や民放の連続ドラマ出演と、一躍人気俳優の仲間入りを果たした。
だが、意外にもデビューは21歳。ゆっくりと時間をかけて大きな花を咲かせた綾野を、6年以上前から親交のある映像作家で映画監督の中野裕之氏が115日間密着した。
「生きていて良かった」
綾野は取材中、何度この言葉を使ったのだろう。密着に対し、「初めは嫌だった。自分が予期せぬ、想像できない自分が映るのが正直怖い」と恐れを感じていた。だが、気心の知れた中野監督がカメラを回すと聞き、「面白そうだなと思えた」と“役者”センサーが反応した。
「変わることを恐れなくなった」という綾野の元には、次々と仕事のオファーが舞い込む。彼は映画の衣装合わせや撮影、写真集の握手会、舞台稽古など多忙の中でも次々と仕事をこなし、淡々と顔を変えていく。
中野監督は「(役によって)顔が“物理的に”変わる。だから、変わる瞬間が撮りたい」と望むも、会うたびにすでに顔を変えている綾野に、こんな質問を投げ掛ける。「どうすれば違う人間になれるのか?」。
俳優の仕事を“生きがい”と言い切り、一番生きている実感ができるものと語る綾野。でも、「どこかしら撮られてる意識があった」せいか、まだ彼の素顔がよく分からない――。
密着取材が始まったころ、彼は「福島で米を作っている親友に会いに行きたい」と告げた。
そして、「僕が僕を生きている時間を大切にする」ため、福島・猪苗代へ向かった。5年間一緒に音楽を作っていた仲間と5年ぶりの再会。二人は「ぐっとくるな」と言いながら、ただただ何度も抱き合う。それは多くの役を演じ、さまざまな顔を持つといわれる綾野が“自分自”を確かめるように、“何者でもない自分”を感じているようにも見えた。
「結果だけを見られる役者という仕事をしている自分を、何でもないときも見てくれてる人がいてうれしかった」。密着取材の後、綾野はこう振り返った。
おでんの白滝がどれだけ煮込まれても色が変わらないことに感銘する彼は、どんな役を演じ続けても、何ものにも染まらず、ありのままでいたいと強く願っているのかもしれない。真面目に、いちずに役者と向き合うが故に、不器用に生きる30歳の俳優の生きざまを見てほしい。
「裸にしたい男『綾野剛』」(NHK BSプレミアム)の11月27日(火)放送の前編では、写真家・蜷川実花氏による撮影や初めての握手会の様子に密着。28日(水)の後編では、'12年8~9月に上演した舞台「雪之丞一座~参上公演 ロック☆オペラ“サイケデリック・ペイン”」の稽古を追う。“ロック・オペラ”という未体験な世界に困惑しながらも、綾野は劇団☆新感線の演出家・いのうえひでのり氏の演出に引き込まれていく。【記事:大畑千恵子】
11月27日(火)、28日(水)
夜11:15-0:00
NHK BSプレミアムで放送