「日本のアニメーションを一歩進められた」高畑勲監督が14年ぶりの新作の手応えを語る
スタジオジブリの最新作「かぐや姫の物語」の完成報告会見が11月7日に都内で行われ、高畑勲監督と朝倉あきら主要キャストが登壇した。
「かぐや姫の物語」は、高畑勲監督の実に14年ぶりとなる新作アニメーション。“日本最古の物語”と言われる「竹取物語」を原作に、“人間・かぐや姫”の姿にスポットを当てながら、かぐや姫が地球へやってくる原因となった「姫の犯した罪と罰」を斬新な映像で描き出していく。
高畑監督は、「長い時間と高い製作費をかけてやっと完成することができました。共に仕事をしたスタッフや、力を合わせてやってきた皆さんには心から感謝します」とコメント。また、「私は一緒に仕事をする仲間にはそれほど感謝しないというか、苦楽をともにしてお互い分かち合うこと(で表してきた)と思ってきたんですが、今回ほどありがたいという気持ちになったことはありません」と、本作に対する満足感を口にした。
本作におけるこだわりを問われると、高畑監督は「私は絵を描かない人間ですから、逆にどういう絵でやるか、それがどういう表現になりうるかということに常に関心を持ってやってきました。(映像の)表現が新しいですが、単に新しい(映像表現を目指した)というだけじゃなくて、意味があってやってることなんです。なのでそれが達成できたということは、図々しく言うと日本のアニメーションを一歩進めたような気がします。それは本当にスタッフの力です」と、独特の映像に対する思いを語った。
主人公・かぐや姫の声を担当した朝倉あきは、オーディションで数百人の中から選ばれた。かぐや姫を演じるにあたっての心境を問われると、「すごく高貴で手の届かないような美女というのは、どうやったら自分の中で出せるだろうかと悩んだりしましたが、高畑監督からいただいた台本で、すごくのびのびと、自分の生を楽しむ素直な女の子の姿に出会ったときに、心のままに演じてみようと思いました」と、演じた上での率直な思いを述べた。
本作は、映像の前に声を録る「プレスコ(プレスコアリング)」という手法を用いて制作されたが、それにより完成を前に昨年亡くなった地井武男さんが、かぐや姫を育てた翁役で出演している。プレスコの際に共演を果たした朝倉は、「完成した映画で地井さんの声を久しぶりに聞いて、一気にその時の記憶が蘇りました。緊張して何も言えなかった時も、いつも自然体な地井さんのお姿を見て、安心して演じることができました。お芝居についても、地井さんは本読みの時から全力で演じて下さったので、その姿に引っ張られて、翁に相対するかぐや姫を演じることができたと思います」と、地井さんの思い出を明かした。
最後に、先日引退を表明した宮崎駿監督について聞かれた高畑監督は、「何の思いもないんですけどね(笑)。(宮崎監督が)いなくなったわけでもないので」とあっさりとコメント。また、「引退というのは、本人としてけじめをつけたいと思って言ったんでしょう。しかし『今度は本気です』なんて言ってましたが、変わる可能性も十分あると思います」と、長い付き合いのある間柄ならではの見解を示した。
11月23日(土)より全国東宝系にてロードショー