Jリーグ初の無観客試合が静寂の中で開催
3月23日にサッカー・Jリーグ初の無観客試合「浦和×清水」が埼玉スタジアム2002で行われた。
試合は、6万人以上収容できるスタジアムに限られた関係者と報道陣数百人のみが入場を許されるという厳戒態勢の中で開催。スタジアム周辺の公園にもサポーターの入場が許されず、公園入口や最寄りの埼玉高速鉄道・浦和美園駅はもちろん、JRと同鉄道の乗換駅である東川口駅にも「公園内には入れません」と書かれたプラカードを持った係員が立つなどの徹底ぶりだったが、浦和が事前にスタジアム周辺での応援の禁止と来場しないことをお願いしていたため、大きなトラブルもなく試合開始に至った。
選手入場の際には、「SPORTS FOR PEACE!」の言葉が背中に書かれた白いTシャツを着用していた浦和の選手たち。そのTシャツを着たまま集合写真を撮影すると、Tシャツを脱いでいつもの赤いユニフォーム姿になり、再度集合写真を撮影して、11人がピッチへと散っていった。
試合は、前半19分に長沢駿がコーナーキックの流れからゴールを決め、清水が先制。後半31分、浦和の原口元気が同点ゴールを挙げ、そのまま1-1でタイムアップ。原口のゴールの際にこそ関係者や報道陣も唯一立ち入りが許されたメインスタンド高層階では、ホームの関係者が多かったせいか「おぉ~」という声も聞かれたが、長沢のゴールの際にもほとんど声が上がらないという、終始静寂の中での試合だった。普段は全くスタンドには聞こえてこない選手同士のコーチングの声だけが、ビルの5階に相当するメインスタンド高層階からもよく聞こえた。
試合終了後の会見では、まず清水・ゴトビ監督が、試合内容の前に今回の無観客試合に至った経緯について苦言を呈し、サポーターがいない試合について「魂が抜けていた」と表現した。また、浦和・ペトロビッチ監督は「サポーターがいないことはホームチームにとって不利だった」と語った。
今回の無観客試合について、来場できないサポーターと同じ立場でとの思いからスタジアムではなくテレビで観戦したというJリーグ・村井満チェアマンは、このような事態になったことにお詫びし、トラブルなくこの試合が行われたことに感謝するとともに、「本日の試合をもってこの度の悲しい事件が終わりになるわけでは決してありません。本日の試合の意味を、Jリーグに関わる全ての皆様とともに考えていきたいと思います。また、浦和レッズには、もう一度フェアプレーというスポーツの原点に立ち返り、不快な思いをされた全ての皆様の信頼回復に努めていただきたいと思います。そして、浦和レッズを愛する全てのファン・サポーターとともに、安心、安全で世界に誇れるスタジアムを作っていただきたいと切に願います」とコメントした。