細田守監督&杉井ギサブロー監督スペシャルトーク(3)~作り手として映画に託したものと、受け手側に託したもの(1)~
「池袋シネマチ祭」の特別企画として6月7日、池袋HUMAXシネマズで細田守監督作品「おおかみこどもの雨と雪」('12年)、杉井ギサブロー監督作品「銀河鉄道の夜」('85年)の上映が行われ、アニメ・特撮研究家の氷川竜介氏を聞き手に迎えて両監督のスペシャルトークが実施された。その模様を伝える第3回。
■作り手として映画に託したものと、受け手側に託したもの(1)
――ここで会場の皆さんからの質問をしていきたいと思います。「『銀河鉄道の夜』を父に薦められ小さいころに見て、あのころよく内容が分からなかったけれども、とても印象に残っていました。その作品をもう一度スクリーンで見ることができてとてもうれしいです。なぜ、この作品が今再び求められているとお考えですか?」
杉井:不思議なもので、賢治が童話に託している問題が、いつの時代の問題にもシンクロしていて、「グスコーブドリの伝記」もそうなんですが、何か不思議な力をもっていると思うんですよね。
――やはり本質に迫っているからなんでしょうか?
杉井:そうですね。「銀河鉄道の夜」の場合は「生と死」というのをコンセプトにしたつもりなんですけれども、今一番大事なのは、命を見直すことなんじゃないでしょうか。やっぱり命って愛おしいもので、「銀河鉄道の夜」という作品は感覚的にそれを伝えることができていたからだと思うんですよね。
――次は細田監督への質問です。「細田監督の作品には時間をテーマにしたものが多いように感じます。何かご自身の中で時間というものを強く意識したエピソードがあるのでしょうか?」
細田:確かに、「時をかける少女」もそうですし「おおかみこども―」も作品の中で長い時間を経ています。意識はしていないけれど、そうかもしれないと思いました。
――自覚的なわけではないんですね?
細田:そうですね…。変化していく事が面白いと根本的に思っているからでしょうね。下の立場の人間が上になっているとか、好きじゃなかった物が大好きになるとか。逆に大好きだった物がそうじゃなくなったりとか。その変化を促すものが時間のような気がするんですよ。自覚がなくても1年前の自分と今の自分は違うでしょう。3カ月前と今とか、昨日と今とか。同じだと思い込んでいるだけで、人間関係も微妙に違うし、細胞だって入れ替わるっていうし、考え方だって変わる。そういう変化を時間というのは与えてくれるわけですよね。それによって描くべきものがすごく魅力的に見えるというのかな。昔懐かしい風景を思い返すのも面白ければ、今までなかった新しい街ができるというのも一方で面白いことだったりとか。時間というのは描くのが面白いテーマだと思っていますね。
――次に杉井監督への質問です。「『銀河鉄道の夜』で使われている列車のSE(効果音)というのはいったい何でできているんでしょうか?」
杉井:僕個人にとってもとても印象的でした。車内の列車音のことですよね。これは柏原満さんというSEの効果音を作っている方に、「これは宇宙そのものが生命のありどころというコンセプトなので、胎児がお母さんのおなかの中にいるときに聞いている心臓の音を列車の音にしてくれ」と依頼したんですね。柏原さんのSEが僕は大好きで、普通は効果音ってガラスが割れたらガラスが割れた音を足すといったような、説明をするものじゃないですか? でもあの人のSEというのは、音に情感を持たせることができる。音源が何かは分からないんですが、あのカタカターン、カタカターンという音ができ上がったときにすごいなと思いました。
――では、細田監督に質問です。専門学校に通ってらっしゃる方からですが、「細田監督作品に出演するのが夢ですが、どうすれば出演することが可能でしょうか?」ということです。
細田:オーディション主義なので、オーディションに参加できればいいんですよ(笑)。声優さんとか、舞台俳優さんとか、俳優さんとか、あらゆる人がいて、どのジャンルに絞るということはありません。ただ一般オーディションというのはやっていないので、キャスティングディレクターの人の連絡の届くところ、つまり事務所に所属してもらって、オーディションを受けにきてくれればそんなチャンスがあるかもしれませんね。
――(4)に続く
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