日9ドラマ「おやじの背中」トップバッターは岡田惠和! ずば抜けた「会話劇の魅力」を読み解く
いよいよ7月13日(日)からスタートするドラマ「おやじの背中」(夜9.00TBS系)。日本を代表する脚本家10人が週替わりで「父と子」をテーマに執筆、豪華キャストが出演することで話題の同作。初回を飾るのは岡田惠和脚本、田村正和と松たか子が共演する「圭さんと瞳子さん」だ。4月クールの「続・最後から二番目の恋」(フジ系)でも絶好調だった岡田脚本の魅力は、生き生きとしたキャラクター造形と、せつなくもクスッと笑えて、心に刺さる会話劇。その味わいの秘密を彼の代表作や、岡田自身のコメントから探ってみよう。
1959年生まれの岡田は雑誌ライターを経て、'90年に脚本家デビュー。「ビーチボーイズ」('97年フジ系)など青春群像劇を得意とし、「アルジャーノンに花束を」('02年フジ系)、「バンビ~ノ!」('07年日本テレビ系)など多彩なヒット作をもつ。NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」('01年)、「おひさま」('11年)はいずれも好評を博した。
'07年、「ちゅらさん4」(NHK総合ほか)の放送時には、「週刊ザテレビジョン」の取材にこんなコメントを残している。
「僕は気が弱いので、役者さんに嫌われたくないんです(笑)。だから、展開よりもその人(登場人物)のことを一生懸命描いていくと、(話が)なかなか進まない。(最終回までの展開は)あまり考えてないです。最後は必ずコレ、ってものもない。ラスト変わっちゃうこともあるし」「プロットにしたら企画通らないと思うぐらい、特別なーんも起こらない(笑)」、そして「テーマって考えたことがない。書き始める段階では、こういう関係を描きたい、というゆるい感じしかない」とも。訴えたいことや展開を決めるより、魅力的なキャラクターがどう動いていくかに任せるのが、岡田流の劇作術のようだ。
その持ち味が結実した作品として記憶に新しいのが「最後から二番目の恋」シリーズ。'12年の第1弾では、5度目となるザテレビジョンドラマアカデミー賞の脚本賞を受賞。「メーンの5人がただしゃべっているだけで面白いなと思っていたので、せりふは思い切り書きました。普通の連ドラは1話につき100シーンほどあるのですが、この作品は30シーンくらいしかないんです」と手ごたえを語っている。
今回の「圭さんと瞳子さん」は、郊外の古い一軒家で暮らす父・圭太郎(田村)と娘・瞳子(松)の物語。母を亡くして以来、寄り添うように静かに暮らしてきた2人の日常に、ささやかな変化が訪れ、やがてじわりと胸を打つ結末が待ちうける。本作も、2人の会話でじっくりと展開していく作品。せりふと、その行間のたくさんの「……」に、父と娘の揺れる思いがぎっしりと詰まった佳編となっている。
そして、せりふが魅力の岡田作品の成功には必ず、ハマリ役の芝居巧者の存在が伴っている。「彼女たちの時代」('99年フジ系)の深津絵里の圧倒的なリアリティー、異色作「銭ゲバ」('09年日本テレビ系)の松山ケンイチの熱演。そして「最後から二番目の恋」の小泉今日子と中井貴一の唯一無二の空気感…。今回演じるのはいずれも岡田作品は初出演となる田村正和と松たか子。素晴らしい化学反応が期待できるはずだ。
また、10月14日(火)からは、岡田が脚本を手掛けるNHKドラマ10「さよなら私」の放送が決定(毎週火曜夜10:00-、NHK総合)。幸せな家庭を築いた友美と、映画プロデューサーとしてキャリアに生きる薫。対照的な人生を歩むかつての親友同士が41歳で再会し、過酷な運命に翻弄されていく。26歳の平凡なOLたちの友情をリアルな言葉で紡ぎ、語り継がれる名作となった「彼女たちの時代」を生みだした岡田が紡ぐ、「人生の分岐点」にいる40代女性と真の友情とは…。出演は永作博美、石田ゆり子、藤木直人ほか。岡田の重ねたキャリアと年齢がどのように大人のドラマに表現されていくのか、こちらも目が離せない。
第1話『圭さんと瞳子さん』
7月13日(日)夜9:00-9:54
TBS系で放送
脚本=岡田惠和
演出=山室大輔
出演=田村正和、松たか子、バカリズム、キムラ緑子、角野卓造、渡辺 大
「さよなら私」
10月14日(火)スタート
毎週火曜 夜10.00-
NHK総合で放送
脚本=岡田惠和
演出=黒崎博、田中正
出演=永作博美、石田ゆり子、佐藤仁美、谷村美月、りりィ、尾美としのり、藤木直人