岡田准一、迫真の演技に過去のトラウマ蘇る!? DVD発売「永遠の0」山崎貴監督インタビュー(1)
昨年12月に公開された、百田尚樹原作の「永遠の0」。岡田准一主演で映画化された本作は興行収入87億円を突破。多くの人を感動の渦へといざなった、山崎貴監督に改めて作品への思いを聞いた。
司法試験に落ち続け、人生の目標を失いつつある青年・佐伯健太郎(三浦春馬)と、フリーライターの姉・慶子(吹石一恵)は、本当の祖父について調べ、その祖父が太平洋戦争で特攻により戦死した宮部久蔵(岡田准一)という人物であることを知る。調べ続けるうちに、宮部は敏腕のパイロットでありながら、生きることに執着し、臆病者と呼ばれていた人物であることを元戦友たちから聞かされる。だが、祖父についてさまざまな情報を得た2人は、やがて驚愕の真実に辿り着く。
岡田演じる宮部久蔵は、戦争の時代において「生きて帰りたい」「命を大事にしろ」と堂々と言い放った男。それゆえに臆病者と呼ばれ、上からはにらまれていた。だが、彼を慕い、彼こそ生きていてほしい、と思う部下、同僚も存在していた。山崎監督は宮部久蔵という男を「すごくストイックな人で、先を見通せる人。それゆえに自分の命が大切なのではなく、自分がいなくなることで自分の家族がどういう風になってしまうのか、そういうことまでも見通せた人」と、捉え描き出した。
そんな宮部が、なぜ特攻という道を選んだのか。百田の長い原作小説を2時間強の映画に落としこむ際に監督は、この謎について向かっていくよう物語を紡ぎ出していった。
「お客さんをどこに連れていきたいのか、というのが基本にあるんです。宮部さんがどういう人かというのが分かっていくにつれて、なぜ彼が特攻に行ったのか、という疑問が逆にわいてくる。その答えに近いところまでは連れていくけど、最後は考えてください、というところに連れていけばいい、と考えたんです。その流れを考えて、必要な話をピックアップしていく、という作業ですね。無数にある話の中で、一番宮部さんというものを語っている物語を繋いでいった感じです」
ストーリーが後半に進むにつれ、宮部の「生きること」への信念は揺らいでいく。演じる岡田はどんどん「狂気」をはらんだ表情へと変貌していき、その岡田の姿に監督も圧倒されたと言う。
「岡田さんはすごく本を読める人で、狂気大事ですよね、とおっしゃっていた。狂気に向かっていくことが最後の宮部の決断なんです。自分の大事にしているものが真っ二つに分かれていく人間のつらさってあるじゃないですか。卑怯者と言われても家族のために生きて帰りたい、卑怯者でもいいんだ、という気持ちと、一方で大切な教え子たちが次々と特攻で亡くなっていく。自分の大切なものが、真逆の方向に引き割かれていく宮部は、もう狂気に逃げ込むしかないんです。その彼の状況というものをきちんと(お客さんに)伝えないと、最後の宮部の思いに繋げることができないんです、と岡田くんにはしょっちゅう話していました。岡田くんもそれを分かっている感じで、新井(浩文)くん演じる景浦のところで自分の気持ちを激しく吐露するシーンがあるんですけど、怖かったですね。岡田くんに余計なことを言って、今作っていることを壊しちゃいけないな、と思うぐらい入り込んでいました」
そんな岡田の迫真の演技を逃してはいけない、という監督の思いの裏にはあるトラウマが。
「『これはそんなに何度も(演技)できるものではないので、よろしくお願いします』と岡田くんに言われ、何かあったら大惨事だと思って。すごいトラウマになってる事件があるんです。「ALWAYS 三丁目の夕日」で、淳之介(須賀健太)が本当のお父さんに連れて行かれ、茶川役の吉岡(秀隆)君が一人で家に帰って大暴れするシーンがあるんですよ。そしたら途中でフィルムが切れちゃって。手違いがあって短い使いかけのフィルムが入っていたんです。吉岡君が一世一代の大暴れをしているのに、どうするんだよ、みたいな。結局現場のボスは僕だから謝りにいくしかないですよね。吉岡さんは紳士な対応でしたけど、あれは怖かったし申し訳なかったです(笑)。だから、今回は岡田くんの感情を逃してはいけないなっていう思いだけで撮りました。そういうのは全部、カメラマンはじめ、スタッフ全員に伝わるものなんですね」
「永遠の0」 Blu-ray/DVD豪華版 初回生産限定仕様 7月23日(水)発売
発売・販売/アミューズソフト Blu-ray 7020円 DVD 6480円
(C)2013「永遠の0」製作委員会
Blu-ray/DVDの豪華版特典には、ARカードが封入されており、専用無料アプリをダウンロードし、カードにスマートフォンをかざすことで0戦が飛び立つ映像を体感できる