二階堂和美インタビュー(1)平和のために必要なこと
二階堂和美の2年ぶりとなる新曲「伝える花」が、7月15日にリリースされた。この曲は、ことし終戦70年を迎えるに当たってRCC中国放送が展開する“被爆70年プロジェクト「未来へ」”のテーマソングとしても使用されている。
今回リリースに際して、二階堂本人へのインタビューを実施。この曲に込められたメッセージなど、率直に語ってもらった。
――あらためて、今回の楽曲を制作された経緯をお聞かせください。
私は今、故郷でもある広島に住んでいるのですが、毎年、8月6日(広島平和記念日)の前後には、やっぱりその話題が多くなるので、自然と意識も高くなるんです。特にことしは終戦70年、被爆70年の年ということで、何か(やりませんか)という話は各所からいただいていました。
私自身も、この大きな節目の年に新しく曲を作りたいと思っていたところへ、地元の放送局であるRCC中国放送さんから“被爆70年プロジェクト”のテーマソングをご依頼いただいたので、それに合わせて書かせてもらったのが今回の曲です。
――今回は広島のミュージシャンの皆さんと録音されたということですが、レコーディングも広島で行ったんですか?
そうですね。ここのところ他の作品も割りとそうなんです。私自身は楽器を弾きませんが、いつも支えてくれるピアノとベースのメンバーが広島にいるので、それが一番自然な形で。「かぐや姫の物語」の主題歌「いのちの記憶」の時や、小泉今日子さんに提供させていただいた曲の演奏も広島で録っています。今回初めてご参加いただいたストリングスの皆さんも広島の方たちなんです。
――そんな中で、今回の楽曲制作に当たってこだわった点はどんなところでしょうか。
今回、プロジェクトのテーマとして“未来へ”というのがあったので、そこを意識して作りました。1番では70年前のヒロシマに生きた方々を、2番では現在を生きる私たちが未来を担っていくという意思を、歌詞に込めました。そして70年という歴史の流れを、間奏で表現したいと思って、いつも一緒にやっているピアニストの黒瀬みどりさんに編曲を託しまして、ストリングスのアレンジをしてもらいました。
その演奏も、広島の方にしていただくのがいいんじゃないかと。バイオリンの上野眞樹さんは元広島交響楽団のコンサートマスターで、“平和なバイオリニスト”と名乗っておられる方でもあります。
――広島の方々とのレコーディングで、気持ちの入り方に違いはありましたか?
被爆70年という大きいテーマに向き合って、いつもより強いメッセージを込めた曲です。それを広島に育った方々とやれたのは心強かったですし、広島から発信する平和のメッセージという意味合いをより強く出すことができたと思います。
なので、私が歌う、私の作品としてリリースをさせてはもらいますが、そういうことを越えて、楽曲が長く残ることで、平和のメッセージが広く長く伝わっていくことを意識して制作に当たりました。
――今回CDジャケットの絵を担当されたのも、広島在住の画家・nakabanさんとのことですが、出来上がったデザインを見てどのようなことを感じましたか?
実際に広島を歩いて描いてくださったので、“今の広島”をすごく感じました。それと同時に、やっぱりどの絵にも川が描かれているというのが印象的でした。当時(原爆投下によって)川が死体に埋め尽くされたというのは、私たちはずっと聞かされてきましたし、そういった光景を体験された方の描かれた絵でもよく見ていました。
もちろん川だけでなく、地面もそうなのですが、nakabanさんが今の広島を描きつつも、その下にある無数の、亡くなられていった方の命というものをこの絵の中に込めてくださっているのを感じ取ることができました。nakabanさんの絵のおかげでまた一つ、この曲が大きな力をもらったと思います。
――今回の楽曲には平和へのメッセージが込められていますが、そうしたメッセージを長く伝えていくためには、どういったことが必要だとお考えですか?
やっぱり節目だからと今だけ声高に言うのではなくて、継続的に発信していくことだと思います。人から聞いた話ではありますが、広島市内の小中学生でさえ、8月6日が何の日かきちんと言えない子が多くなっているらしいんですね。それは大人たちの意識の低さが、そのまま子供たちに伝播していっている表れだと思うんです。
私も大人になりましたので、自分が伝える側の立場になったなというのも近年思うんです。私は歌を歌うってことをしていますので、歌を聴いてくださった方がそれを考えるきっかけにしてくださったらいいなと思いますし、私自身も、歌うことで自覚的になっていきます。野暮なようですけど、ライブでは歌の前後でそうしたことに触れることもできますし、自分のできる範囲のことは探っていきたいですね。
――今回の楽曲は、前作「いのちの記憶」ともメッセージ的につながっているような印象を受けましたが、そういった点で何か意識されたことはありましたか?
受け取ってくださる方がどう思われるかはお任せするところですが、これらの曲に限らず、一貫した思いはあります。それは「生きている」ということと「命が終わる」ということです。
かけがえのない、限りある命を私たちが生きているということ、その上で「(命は)終わるけれど(それで)終わりじゃない」というのが、私の作品に一貫したテーマといえるかもしれません。それが表面的にもしっかり出ている2曲なのでしょうね。
二階堂和美
7月15日発売
926円(税別)
[収録曲]
01:伝える花
02:伝える花(Inst version)
03:伝える花(Piano version)
04:伝える花(vocal less version)
※中国放送RCC被爆70年プロジェクト「未来へ」テーマソング
『にじみ』(限定アナログ2LP)
8月5日(水)発売
3241円(税別)
[収録曲]
SIDE-A
歌はいらない
女はつらいよ
説教節
あなたと歩くの
PUSH DOWN
SIDE-B
ネコとアタシの門出のブルース
麒麟
蝉にたくして
岬(ウーリッツァーバージョン)
ウラのさくら
SIDE-C
Blue Moon
萌芽恋唄
とつとつアイラブユー
いつのまにやら現在でした
SIDE-D
お別れの時
めざめの歌
足のウラ
にじみ(ボーナストラック)