貧乏だけどトキメキ感!月9セットのこだわりとは
毎週月曜に放送中の有村架純・高良健吾主演ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(フジテレビ系)で、美術デザインを担当するフジテレビ美術制作局デザイナーの宮川卓也氏にインタビュー。
音(有村)の質素ながらもどことなくかわいらしさが漂う自宅や、“和”がテーマになった練(高良)の部屋のほか、音が働く介護施設、若者たちが集う静恵(八千草薫)の自宅セットのこだわりについて語ってもらった。
まずは北海道から上京し、東京で地に足を着けて暮らし始めた音の部屋。月9主人公の生活スペースでこだわった部分とは?
「月9ということで、音は貧乏でオシャレも興味がないようなキャラクターながらも、“トキメキ”がある空間を心がけました。全体の色調はパステルにし、家財などはリサイクルショップをはじめ、いろいろなところからかき集めたものだけれども、なぜかかわいらしく見える、ということを意識しています。
また、壁紙はレトロな花柄のものを用い、昔で言うと“ダサい”のかもしれませんが、今だと“レトロかわいい”に見える、絶妙な加減を意識しました」
そんな音の部屋だが、もう一人の主人公である練(高良)と音は、貧乏な点や、あまり個性がないところ、ファッションに興味がない点などで多数共通し、2人の部屋の差別化には苦労したそう。
「当初、台本のト書きには音の部屋、練の部屋とも“木造”とだけ書かれていました。なので、そこの2人の性格の色付けをどう行い、異空間に広げていくかは監督と相談していきました。
部屋の色調に関しては、音はパステル調、練は渋い色合いにすることでパッと見て二人の部屋が違うものだと分かるようにしたほか、練は福島出身の農業を営む祖父の元で育ったということで、昔ながらの和室に住むんじゃないか、という話になりました。
まず、練は古い木造の建物ということが決まり、音は鉄筋造りをベースに貧乏感は出すようにしていきました」
古い和室がベースとなった練の部屋だが、細かいところには、エッジの効いた要素も盛り込んだそう。
「床の間の脇に違い棚があったりする『床脇』というのが和風建築にあるんですが、そういったところで、あえてボロボロのトタン板を入れたりだとかしているんですよ」
細部にこだわりが光る主人公たちの部屋。音が働く介護施設にも、“施設の方への心配り”と“仕事の厳しさ”という二つの面でポイントがあると宮川氏は明かす。
「介護施設の利用者から見える表部分は、ごく一般的な施設といった趣ですが、従業員側から見ると、仕事に力を入れていこうという厳しい側面が感じられるよう、二面性を強く出しました。
また、実際には介護施設にはないバックヤードを作ることで、音たちの置かれたそういった環境が感じられるようにもしています」
東京では、厳しい環境のもと懸命に暮らす主人公たち。静恵(八千草)の自宅は、そんな若者たちの憩いの場所になっている。
「静恵は築70年ほどの和室で悠々自適の生活をしているイメージ。また、包み込んでいる感じと言いますか、ここに関しては、静恵の温かさをどれだけセットに反映できるか意識しました。コタツという最強の武器(笑)をドンと中央に配置し、古い家の懐かしさを出すようにしています。
さらに、アメフトが好きという裏設定も静恵にはあり、セットの細かい部分でその要素を出しました」
これまでバラエティー「クイズ!ヘキサゴン」('05~11年)、ドラマ「問題のあるレストラン」('15年)をはじめ、報道番組「スーパーニュース」、映画「暗殺教室~卒業編~」(3月25日(金)公開)など、多岐にわたるデザインを手掛けてきた宮川氏。今後はリオ五輪のスタジオセットの制作も控えているそうだが、美術セットで得意なジャンルは?
「フジテレビ美術がそうなんですが、あえて得意分野というのは作らないようにしていて、多岐にわたるデザインというのを一番大事にしています。
実際の仕事では、バラエティーで使った素材を、普段あまり使わないだろうけど、ドラマに取り入れてみよう、ということもあるんですよ」と語った宮川氏。それぞれの仕事が相互に生きているようだ。
最後に、一般視聴者を交えて行われた今回の月9セットツアーだが、その感想は?
「新鮮でしたし、皆さまに説明するということで、緊張もありました。まずはキャストの方々あってのドラマですが、意外にも、美術セットにも注目してくださる方も多くいらっしゃるんだなと感じました。本当に、身が引き締まる思いです」と控えめながらも、真っすぐに語った。
毎週月曜夜9:00-9:54
フジテレビ系で放送