ディレクター人生を懸けて撮り続けた「家族の絆」
3月13日(日)にBS日テレで放送される「5YEARS 母と僕の震災日記」。東日本大震災から5年の月日がたった被災地の現状、変わったこと、変わらないことを1つの家族を通して伝える。
日本テレビの武澤忠ディレクターは、東日本大震災で被災した実母を震災直後から今日まで、自らカメラを回し撮り続けてきた。今作は、通常のドキュメンタリーとは違い、武澤氏による“完全主観ドキュメンタリー”で、取材対象者が実母という新たな試みでもある。
東日本大震災で被災した実母・順子さんの姿を追ったシリーズは大反響を呼び、これまで5回放送され、今回で6回目を迎える。被災した当初、生きる気力さえ失っていた順子さんだが、亡き夫の思いを胸に生きる力を取り戻していく。当初、武澤氏は撮影用ではなく記録として撮っていたこと、また息子が撮っているという特殊な距離感だからこそ、出てくる順子さんの本音。息子と母だからこその会話が、今回余すところなく紹介される。
また、順子さんが震災直後から誰に見せるわけでもなく、書き続けた日記が書籍化(「生きてやろうじゃないの!母と息子の震災日記」青志社)されたことを機に、歌手の箱崎幸子によって歌となり(「生きてやろうじゃないの」)、さらには「いわき市立小浜第一中学校」の合唱部の合唱曲にもなった。
そして、今では武澤氏と共に順子さんは「被災者の役に立ちたい」と講演も行っている、そんなさまざまな広がりを見せる順子さんの姿に密着する。
新たな試みであるディレクターによる“完全主観ドキュメンタリー”を制作するに当たって、どんな思いかを武澤氏に聞いた。
――震災から5年がたち、武澤さんから見て被災地はどんなふうに変わりましたか?
復興は進んでいると思われているけれども、物理的にも精神的にも被災地に住む人にとっては、まだまだ進んでいないのが現状です。特に福島県は原発の問題もあるし、(福島県に限らず)沿岸沿いは構造的な問題もあるので。
――この作品を通して一番伝えたいことは何ですか?
被災地にはまだまだ深刻な状況の方もたくさんいると思います。でもだからこそ、被災者の方に見ていただきたいし、多くの命を失った中で、自ら自分の命を絶つことのないよう、命の尊さを訴えたいです。
――6回目を迎える今作の見どころをお聞かせください。
“個”を追求することによって、普遍性につながるということを発見し、自分の家族をさらけ出すことによって、これまで多くの人が共感してくれました。被災地の現状も親子の関係も自分に置き換えて見られる作品になっていると思います。そして、これは震災の記録ではなく震災でも崩れなかった家族の絆の物語です!
3月13日(日)朝11:55-昼1:25
BS日テレで放送
プロデューサー=小山人志
ディレクター=武澤忠
ナレーション=林田尚親、湯浅真由美