ホラーファンにはたまらない「残穢─」スピンオフ作品
映画「残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-」のスピンオフ作品「鬼談百景」のDVDが7月2日(土)に発売される。
「残穢─」原作の小野不由美が、初めて手がけた百物語怪談集「鬼談百景」は99話で構成され、100話目が「残穢」ともいわれている。今回は、その中から10のエピソードが映像化された。
監督は「残穢─」の中村義洋監督の他、白石晃士監督、安里麻里監督、岩澤宏樹監督、大畑創監督、内藤瑛亮監督と、Jホラーを代表する6人が手掛けている。本作のプロデューサーを務めた永田芳弘氏が、「残穢─」との関係、製作の裏側などを語った。
──「鬼談百景」の製作の経緯は?
中村義洋監督と映画「残穢―」の脚本の打ち合わせをしていく中で、監督が「『鬼談百景』の原作は99話しかないんですよ。『百物語』は100話目を語ると災いが起こると言いますが、その100話目が『残穢』らしい」と話してくれたんです。その仕掛けを聞いて、何て魅力的な話なのだと思い、最初は「残穢─」だけで動いていましたが、途中で「鬼談百景」も製作することになりました。
──そもそも「残穢─」を映像化したいと思われたのは?
私がもともとホラー好きだということと、小野先生が大好きだったということ。そして自分自身の経験談ですね。
独身のころ、とあるマンションに引っ越したんですが、その夜10時ごろにドンドン!とドアをたたく音がしたんです。セキュリティーのしっかりしたマンションだったのでおかしいなと思いつつ、ドアを開けたら誰もいない…。
その日は気味が悪いなと思いながら寝たんですが、翌日もそのまた翌日も、同じ時間帯になるとドアをたたく音がして、のぞき穴から見ても誰もいない、というのが毎晩続いたんです。怖いですよね。でも、人って不思議なもので、毎晩続くと慣れてくるんです。そして、慣れたら聞こえなくなってしまったんですよ(笑)。
だから小野先生の原作を読んだ時にも、とてもリアルに感じましたし、意外と多くの人が共感できるのでは、と思いました。
あとは、身近で嫌なことが起きると、つい関連させて考えてしまう日本独自の“穢(けが)れ”への意識も「残穢─」に通じると思いました。これまでのJホラーのテーマとしては斬新だし、Jホラーのセカンドステージになるという期待感もありました。
──6人の監督がそろいましたね。
中村義洋監督や白石晃士監督のいわば、Jホラーの第2世代から2.5世代の安里麻里監督、そして第3世代の岩澤宏樹監督、大畑創監督、内藤瑛亮監督がそろいました。
岩澤さんに関しては、中村監督が手がけた「ほんとにあった! 呪いのビデオ」の後輩に当たる監督で、中村監督から「すごく面白い監督がいる、メンツに入れてもらいたい」と推薦されました。皆さん、お声掛けしたらとても喜んでくれました。
今回6人それぞれに優先順位をつけて、原作からやりたいエピソードを挙げてもらったのですが、全員の第1希望が見事にバッティングしなかったんです。みんな、個性的でおのおのの趣味嗜好があるからでしょうね。だから、どの作品を誰にやってもらうかという点は困らなかったです。
──映像化に当たって気を付けられたことは?
怪談特有の“余韻”は大切にしたいと思っていました。それもあって、「鬼談百景」のナレーションは早い段階から「残穢─」主演の竹内結子さんにお願いしたいと考えていました。竹内さんのナレーションと安川午朗さんの音楽のおかげで、「残穢─」と「鬼談百景」の世界観が統一されたと思います。
一方で、「鬼談百景」は「残穢─」とは違ってもいいんだ、とも思っていました。「残穢─」は2時間かけて怖がらせる。でも、「鬼談百景」はクライマックス×10本でいい。6人の監督さんには「余韻は大事だけれど、個性も出してください」とむちゃぶりをしました。10本それぞれ監督の世界観が表現された作品になっています。
──特典映像に1日限りのオールナイト上映で、6人の監督が一堂に会したトークイベントが収録されていますね。
Jホラーの第2、第3世代を背負っている6人が勢ぞろいしたわけで、ホラーファンにはたまらない特典映像になっていると思います。実際、私自身も感動しました。
──その特典映像の中で、白石監督は最初からトリを狙っていたとお話しされていました。
こちらとしても、漠然と頭は中村監督で最後は白石監督だと話していました。白石監督のストイックな感じがトリに合うよね、と。
──「鬼談百景」ではどんな点を楽しんでほしいですか?
やはり6人の監督と小野先生とのジョイントですね。それぞれの監督のファンに小野先生を知っていただきたいですし、小野先生のファンの方には、先生を通して6人の個性を楽しんでもらえたらと思います。
7月2日(土)発売
価格=4200円(税抜)
発売元・販売元=ハピネット
原作=小野不由美「鬼談百景」(角川文庫刊)
「追い越し」脚本、ナレーション監修=鈴木謙一
メインテーマ=安川午朗
ナレーション=竹内結子
◇追い越し
監督=中村義洋
出演=岡山天音、藤本泉、森崎ウィン、吉倉あおい、長井短
◇影男(かげおとこ)
脚本・監督=安里麻里
出演=根岸季衣、山田キヌヲほか
◇尾(つ)けてくる
脚本・監督=安里麻里
出演=久保田紗友、田村泰二郎、眼鏡太郎ほか
◇一緒に見ていた
脚本・監督=大畑創
出演=淵上泰史、屋敷紘子、重松隆志、中原和宏、緒沢あかりほか
◇赤い女
脚本・監督=大畑創
出演=高田里穂、加弥乃、比嘉梨乃、石川絢子、和地つかさほか
◇空きチャンネル
脚本・監督=岩澤宏樹
出演=高尾勇次、石賀和輝、谷井優貴、佐々木幸子ほか
◇どこの子
脚本・監督=岩澤宏樹
出演=小野孝弘、野村修一、江森咲輝
◇続きをしよう
脚本・監督=内藤瑛亮
出演=石井蓮、酒井天満、安藤千織、北原十希明、三澤和歩、正垣那々花、矢口凛華、大藤瑛史、江口湊太
◇どろぼう
脚本・監督=内藤瑛亮
出演=萩原みのり、小橋めぐみ、西田薫、忠海蓉子ほか
◇密閉
脚本・監督=白石晃士
出演=三浦透子、細川佳央、西山真来
(C)2015「鬼談百景」製作委員会