ロックバンド・キュウソネコカミ 写真加工に物申す!?
2014年6月にアルバム『チェンジ ザ ワールド』でデビューを果たした、今もなお関西に拠点を置く5人組ロックバンド・キュウソネコカミ。身の回りの事柄への愚痴や文句を綴ったリスナーの共感を呼ぶ歌詞に加え、思いつく限りの演出を詰め込んだ過剰とも言えるライブパフォーマンスが話題を呼び、今最も勢いのあるバンドの一つに数えられている。そんな彼らは、先ごろ千葉・幕張メッセにて行われたライブの模様を収録したDVD&Blu-ray「DMCC REAL ONEMAN TOUR -EXTRA!!!- 2016」を発売し、そして8月3日にはニューシングル「サギグラファー」もリリースする。
――幕張メッセでのライブついて、あらためてお話をお聞きしたいのですが。
ヨコタシンノスケ(Key&Vo):やっぱあんなデカいところでやることは、何回もあることじゃないんですけど。小さいライブハウスでちょこちょこ、ちょこちょこやってきたことを出すのもそうですし、モニターとか特効とか、最後のゴンドラとか、ああいう部分も…やっぱり普通、バンドはここまでやらないだろうってところまでもやりたかったし。結構キュウソが見えたライブが出来たんじゃないかなって。まさに全部。過去も未来も全部やろう、みたいな。
ヤマサキセイヤ(Vo&Gt):盛ったな。
ヨコタ:盛ったね。
――お客さんは楽しいと思いますが、やる方は大変ですよね?
カワクボタクロウ(Ba):大変、大変。
ヨコタ:あのときはハイになってたから、大変というか、やろう!やろう!ってなってたけど、この前SHISHAMOとかの大阪城ホール見に行ったら、やり過ぎだったね、俺らね(笑)。もっと普通に曲やってもいいなって(笑)。
ヤマサキ:本来のバンドのライブみたいな感じやった。
ヨコタ:ね。多分(俺らのは)みんな、あんまり曲覚えてない(笑)。
ソゴウタイスケ(Dr):でも、そういうのをやらないと不安っていうか。やらないと、俺ららしくないんじゃないかって思っちゃうっていうか。
ヨコタ:他のバンドとかに勝ちたいと思ってやってるから、どうしても、パフォーマンスが派手になるというか。
ヤマサキ:ワンマンって途中で飽きますからね、絶対。どんなに好きでも。飽きると思うんですよ。でも僕らのライブは、一時も目が離せないくらい次のセクションでは何かが起こるし、アンコールまでずっと会場にいないと損するくらいの、絶対飽きられないライブをしたいと思っているんです。
――DVDも副音声が入っていて見応え十分ですもんね。そして、そんな中、8月3日はニューシングル「サギグラファー」が発売されます。写真加工が当たり前の時代に一石を投じるような問題作(!?)ですが、このテーマで歌詞を書くことになったきっかけは?
ヨコタ:やっぱり雑誌の人を前にして、ちょっと言いにくいかなっていう感じかと思いますが…。
ヤマサキ:このテーマにつながる実体験があったんです。それは、僕らがお世話になってる雑誌で表紙を飾らせてもらったとき、僕の顔だけちょっといつもとは違って…(笑)。雑誌が発売した瞬間、ファンのみんなから「セイヤさん、顔いじってますよね?」って言われて、「えっ!?」と思って確認したら、「何じゃこれー!?ってなって」
――それはメンバーの皆さんも気付いた?
ソゴウ:すぐ分かりました。
オカザワカズマ(Gt):僕ら4人は普段と変わらなかったのに。
ヤマサキ:俺だけ顔が変わってて、めっちゃ恥ずかしかった。
ヨコタシンノスケ:そこがセイヤをモヤモヤさせたんだな。僕らはカッコつけないのを売りにしてるバンドで、これまでも自主的にはそういう加工を一切してこなかったので。だから、ちょっとくらい言ってもいいんじゃないかな、と。歌詞的にはそういう風潮に対するアンチっぽさが強く出てますけど、どちらかというと悲哀というか。結局、このままの俺たちを愛してくれ!っていうことですから。
ヤマサキ:でも、このシングルの発売が決まったときに、宣伝としてTwitterに初めてアプリで加工した自撮り写真を上げたんですよ。そしたら今までにないくらいの「いいね!」が付いて。結局、世の中そんなもんなんだって思ったんですよね。
ヨコタ:カッコイイのを欲しがってるのかもしれない。そのイメージしかない人やったら、ヤマサキセイヤはイケメンってことになるもんなあ。
ヤマサキ:だから多分、その写真しか知らない人がライブに来て俺を見たら、“全然ちゃうやんけ!”ってなると思います(笑)。もうやらないですけど。1回試しにどんなもんじゃい!ってやったらめっちゃ気持ち良かったです(笑)。
――今回はジャケ写も初の実写版だとか。
ヨコタ:そうなんです。表面が全員レタッチを施したキメキメの8頭身で、裏面はその元となる無加工の写真で。ここからこうなりましたっていうネタばらしをしてます(笑)。
ヤマサキ:今回のジャケ写とかミュージックビデオもそうなんですけど、そういうのが完成するにつれて切なくもなりました。俺って世で言われてるイケメンじゃないから、こういうことをしてるんだなって…。
ヨコタ:めっちゃ凹んでる(笑)。でも、すっげぇ分かる。修正されたポイントが自分の欠点ってことやからな。そこが浮き彫りになる。
カワクボ:ただ、今は加工するのが当たり前というか、マナーというか(笑)。こんなはずじゃない!って、自分の理想に近付きたい気持ちも分かるし。そこを僕らがピエロになって、笑ってくれ!っていうような曲なんです。
ヨコタ:僕らは頑なに、やったらダサいなぁって言い合うようなヤツらだったんで、お互いは。だから、やってなかったけど、雑誌が引き金となって曲を作るまでに(笑)。
ヤマサキ:反抗するぞ!ってな。
――本当の自分を愛してほしい、という気持ちの裏返しでもあるわけですよね?そしてキュウソの曲を聴いてるのは、写真加工を楽しむ若い子たちだと思うのですが、そういう子たちにいいの?それで、と、問い掛ける意図もあったのかと思うのですが。
ヤマサキ:それでいいんですよ。夢見た方がいいんです(笑)。だから、俺らは、現実スタートなんで今ここにいるんですけど、夢見させ続けているプロたちは、夢見させ続けてくれますからね。絶対に、ちゃんとした自分しか見せないっていうプロがいますから。僕たちはちゃんとしてない部分を見せまくってきてからのコレですからね。
ヨコタ:だからこそ、やれるというかね。やっぱ、今までやられた以外はやってないので。自主的には。だから、まぁちょっとくらい言ってもいいというか。世の中そういうものだって分かったときの、アンチというより悲哀だよね。虚しさというか。
ヤマサキ:ブルースですよ。
ヨコタ:アンチっぽいのが強めに出てるけど、結局俺たちを愛してくれ!というか。それぐらいしか言えないというか。
――ところで、皆さんは今も関西に拠点を置いてますが、上京する予定はないんですか?
オカザワ:行きたくないですねぇ。
ソゴウ:この人(オカザワ)、すごい穏やかな街に暮らしてるんですよ。
ヨコタ:イノシシが出るようなところ。
オカザワ:イノシシと鹿が出ます(笑)。まぁでも、普通メジャーデビューのタイミングで行くじゃないですか。そのときに誰も「絶対東京でやろう!」って言う人間がいなかったんですよね。
ヨコタ:関西のテレビ番組見られなくなるの嫌やし。
ヤマサキ:関西にいると、同じバンドマンとか業界の人にほぼ会わないっていうのが最高です。だって、俺らしかいないんだから。
ヨコタ:知り合いのバンドマンにあんまり会わないのもいい。
カワクボ:会いたくないというか、例えて言うなら、仕事帰りに上司と一緒の電車になっちゃった気分(笑)。気まずいんですよね。あと、うちらライブ多いしね。
ヨコタ:そうそう、フェスとかでも。意外と僕ら対バンすごく多いから、それで友達ではあるんですよ。プライベートは会わないって感じだよね。
カワクボ:そう。ライブモードが戦闘モードって感じで、ガッていくんで、それ以外で会っちゃうと、あれ?って。
ヨコタ:そうそう。それに、東京に行くと危ない遊びを覚えそう(笑)。
ヤマサキ:クラブに行くとかして、スレそう(笑)。
ソゴウ:もちろん関西にもクラブはあるんですけどね(笑)。でも、そもそも行かないので。
ヨコタ:僕ら、女人禁制なんですよ
5人:爆笑
カワクボ:そうやったんや!?。
ヤマサキ:あ、でも別に、女になんか興味ないです!っていうようなバンドじゃないですよ。なんなら興味はめちゃくちゃありますから(笑)。ただ単に、チャラチャラしたのは禁止っていうだけで。
カワクボ:誰か一人が抜け駆けしても嫌やしなぁ。
ヤマサキ:一人だけモテてるヤツがいても嫌やし。
ヨコタ:そうやな。なんか、そいつの悪口言うてしまいそうや。違うことが原因でダメやのに、女がいるからダメやとか。
オカザワ:ちょっとちょっと、女の話しすぎや!(笑)。
ヨコタ:こんだけ言うても(女性を)バリ意識してる(笑)。
ヤマサキ:それを抑えてるから『夏っぽいことしたい』みたいな曲ができるんですよね(笑)
――(笑)。この曲はライブでも盛り上がりそうな曲調ですが、それを想定してアレンジしたんですか?
ヨコタ:僕らの場合、ライブを想定した曲が多いですね。自然とそういうのが組み込まれているというか。このパートではこういう景色を見たいよねとか、サビではみんなで手を振ってもらいたいよねとか。曲作りの段階からそういうことを話しつつ、アレンジを練っていきます。
――今年の夏フェスでも盛り上がりそうですね。
ヤマサキ:やっぱり新曲やったほうがいいですよね?
カワクボ:え、さすがに発売したらやるっしょ!?
ヤマサキ:どうしようかねぇ
ヨコタ:やるかやらないかは…(笑)
オカザワ:何でテレビジョンの人と駆け引きしてるの(笑)
ヨコタ:まぁ基本的にはやりたいですよね。「夏っぽいことしたい」なんて、夏にやらないでいつやるのって曲だし(笑)
――また、3曲目の「辛あわせ」はグリコのカレー「LEE」のWEB CMソング用に書き下ろした1曲。ライブ想定ではない、こういった書き方もされるんですね。
ヤマサキ:はい。こういう書き方も嫌いじゃないですね
カワクボ:セイヤの、こういう依頼内容に合わせて書くっていうのはすごい才能だと思います。職人だなって
ヤマサキ:30秒ってちょうどいいんですよね。僕、ドラムとかのフレーズを自分で作れるわけじゃないんで、1曲丸々作るのが実は苦手で…。30秒だったらやりたいことだけをスパッと詰め込める、一番いい長さだなって思うんです。
ヨコタ:そのとき思いついたインパクトを入れるのが得意だよね。「MEGA SHAKE IT!」とか。こういうところ、セイヤはキラーフレーズ野郎なんで(笑)
ヤマサキ:キラーフレーズ野郎って(笑)。
――ヤマサキさんのキラーフレーズとライブをイメージした新曲で、夏フェスは盛り上がること間違いなしでは?
ヤマサキ:ですね。どの曲もやれよ!って感じですよね(笑)。むしろ『夏っぽいことしたい』とかはライブをイメージして作った曲だから、めっちゃやりたいですし。しっかり盛り上げたいと思います!
片貝久美子
発売中 ビクターエンタテインメント
5292円(Blu-ray)4212円(DVD)
「サギグラファー」
8/3水発売 ビクターエンターエンタテインメント
1080円
収録曲=サギグラファー/夏っぽいことしたい/辛あわせ