1月11日(水)、日本テレビ系にて放送されるスペシャルドラマ「愛を乞うひと」で、主演を務める篠原涼子にインタビューを敢行。前編となる今回は、自身初となる一人二役や、共演者とのエピソードなどを語ってもらった。
――今回初めて一人二役に挑戦されましたが、撮影はいかがでしたか。
とても楽しかったですね。(一人で)二つの役を演じるというのは初体験でしたし、この「愛を乞うひと」という作品も10年前に(映画を)拝見していまして、その時にものすごく興味を持ったんですね。
「今すぐはきっと無理でだろうけど、いつかやりたいな」とずっと夢抱いていたのですが、この年になって挑戦するという形になって。ものすごく学ばせていただくことがたくさんありましたし、とてもいい経験をさせていただいたなと思います。
――今回一人二役ということで、かなり正反対の役どころだったかと思いますが、それぞれの役を演じられていかがでしたか。
虐待を加える豊子という役が、ものすごく衝撃的なキャラクターで。この役をやっている時は、私も実際子供がいるので、「こんなことを平気でやる親っているのかな」思って、すごく不思議な気持ちになりましたが、豊子というキャラクターに成り移って、頑張ってやりました。
ただ、やっぱり虐待をする人も問題があって、理由があるからやるんだと思うのですね。なのでそのあたりをしっかりと描いていけたらと思いながら演じさせていただきました。
照恵の方は、やっぱり幼少期にものすごい虐待に遭っている人なので、話ができなくなっているんですよね。
本当に思っている気持ちなど、自分自身を表現できない、すごく難しい女性に成長して。なので、そのあたりは演じながら(役柄を探っていきました)。
先に豊子のシーンを撮っていたのですが、豊子を演じる中で大きい声で怒鳴ったりとか、身振り手振りの暴行をやりたい放題やっていたので、照恵を演じる時には、性格も引っ込み思案な分「やっていて物足りないな」みたいな気持ちになってしまいました(笑)。
――10年前に映画をご覧になったとのことでしたが、その時にどういった部分が篠原さんの琴線に触れたんでしょうか。
10年前に拝見させてもらった時は、まず虐待というテーマにものすごく衝撃を受けたということと、その虐待を映像化して作品にしているということにも衝撃を受けました。
あとは虐待の内容ですよね。「ここまで見せちゃうんだ」っていう映像にも非常に驚かされましたが、それを原田美枝子さんが抜群の演技で演じている姿を見て、やはり同じ女優として自分も挑戦してみたいなという気持ちになりました。
こういう作品を見て、本当にこういう虐待をされている子がいるのかと思った時に、私も「こういう人がいちゃいけないよな」と思ったりもしたので、救える形が何かできないかなと思ったこともちょっとありましたね。
――親子役で広瀬アリスさんと共演されていましたが、広瀬さんとの共演はいかがでしたか。
(広瀬の演じた)深草の立ち位置が、照恵にとってはものすごく救いとなる立ち位置なので、それを彼女が本当にうまく演じてくださって。すごくかわいらしいけれど、ボーイッシュに演じ上げていたので、そういう意味では本当に自然な親子に見えているんじゃないかなと思います。
照恵は母親でありながらものすごくか弱く生きてきてしまった人なので、逆に娘の深草が親というか、お姉さんみたいな感じですよね。そんなような形で演じてくださったので、本当に役を演じながらに助かっていたという感じはしました。
――親子役ということで、一緒のシーンも多かったと思いますが、普段の広瀬さんの印象や、撮影の合間はどのように過ごされていましたか。
結構サバサバしていて、ボーイッシュなタイプだったなっていう感じがしましたね。私もサバサバしている方なので、すごく話が合ったっていうか。話していてすごく楽しかったですね。
年齢もすごく離れているんですけど、ちゃんと私にも(話を)合わせてくれる、会話の大人な感じも持っていますし。親子なんだけど友達みたいな感覚で会話ができましたね。
――台湾ロケにも行かれたとのことですが、台湾はいかがでしたか。
阿里山という、茶畑が有名な地域が舞台になるので、そこへ行ったんですが、結構山奥なので車で片道3時間くらいは平気でかかる距離なんです。でも、天気が悪いと何度も行かなくちゃいけないので、本当に、あちらに行くのはもういいんじゃないかなって…(笑)。十分堪能しました。
――行き帰りの移動時間なども長かったと思いますが、そんな時は何をされていたんですか。
寝てました(笑)。みんなも会話がだんだんなくなって来るので、ほとんど「寝るしかない!」って状況に陥っちゃうんです。何かどんどん思い出してくるので、この辺でいいですか?(笑) 結構つらかったので、あまりいい話はできないかもしれない(笑)。
寝たいんですけど寝られないんですよ。山道なんで(振動で)シートからお尻がどんどん滑っていくので、足で踏ん張ってこう体に力を入れてキープして…。「何でこんな思いして寝るんだ」って思いました。私だけじゃなくて皆さんそうだと思いますけど。
――(幼少期の照恵を演じた)鈴木梨央さんを虐待するシーンでは、現場もすごく殺伐とした雰囲気だったかと思うのですが、何かフォローするなど、気持ちを和らげるようなことはされたんでしょうか。
彼女もものすごくプロフェッショナルなので、変に何かやってしまうと、ありがたいとは思ってくれるけど、(いざ演じるとなった時に)気持ちの入り方も違くなっちゃうので。あえて声をかけないようには心掛けていました。
でも、初めのリハーサルの時には「本っ当にごめんね!」って。「そんな人間じゃないんだよ! よろしくお願いします!」っていうふうには伝えときました(笑)。その後は特に、クランクアップするまでは特に普通に(やっていましたね)。
強いて言うなら、(鈴木が)風邪をひいてしまって頑張っている時があったので、その時にちょっと差し入れをしたりということはありました。飴とかそういう感じですけど。喉を壊しちゃっていたので。
――照恵は自分探しの旅の中で、豊子の気持ちも分かってきたりすると思うんですが、そのあたりの照恵の心の変化についてはどのようにお考えですか。
照恵は、たぶん豊子のことを最後の最後まで憎んでるんだと思うんですね、。だけど、やっぱり豊子が、母さんのことがやっぱり好きで好きでしょうがないんですよね。
幼少時代の照恵が豊子に対して「お母さんお母さん!」って言って、ギュッて抱きしめるシーンがあるんですけど、それを見ると照恵はやっぱり、どんなに虐待を受けて、愛されていないニュアンスを出されても、母親として血のつながった豊子に対する愛情が強いんだろうなって思いました。
それを分かっている照恵だからこそ、大人になった時に「もう一度会ってみたい」ってちゃんと素直な気持ちで思えるんだと思いますし、葛藤と愛の間だったんだと思いますね。でもやっぱり愛の方が勝つというか。そんな気がしました。
――照恵と再会した時の豊子の心境はどうお感じになられましたか。
ものすごいうれしかったんじゃないかなと思います。ずっと会いたかったんだと思いますし、ずっと謝りたかったと思うんですよね。やっぱり子供って、毎日いると、ああやって虐待するくらいですから、自分の体だと思って、分身だと思ってやってるから、そんなに悪気はないんだと思うんですよね。
でも一度離れると、憎しみだったところが強烈な愛に変わって、豊子も照恵のことが会いたくて会いたくて、気になってしょうがない対象だったと思うんですよね。
それが目の前にパッと現れた時には、本当にうれしくて抱きしめたくてっていうようなことだと思いますね。でも、豊子はそういうことができるような人ではないので。唯一最後に、言葉を投げ掛けたっていう。それが一番の、自分の思いだったんじゃないかなと思います。
なので、そのシーンが豊子にとっても希望になるように、(スタッフ演者含めて)みんなで考えてそこにたどり着くように作っていきました。
1月11日(水)夜9:00-10:54
日本テレビ系にて放送