ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第112回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞 受賞インタビュー

(C)TBS

マイファミリー

戦争のニュースが流れる中で、家族の姿を描く割合は増えていきました(飯田和孝P)

作品賞を受賞した感想を教えてください。

作品賞を始め5部門の賞を頂き、ありがとうございます。このドラマは原作なしのオリジナルで、黒岩勉さんが巧みに構成してくれた脚本をよりどころに、スタッフ、キャスト一人一人が発想力や想像力をフル回転させて作りました。

「ゲームアプリの画面をストーリーにシンクロさせたら」「本当は機械音設定である犯人の音声をナレーターさんで収録したら怖さが増すのでは」など、現場にいるみんながどういう仕事をすれば見る人を楽しませることができるのか考え抜いた結果、評価していただけたのかなと思います。


「ノンストップファミリーエンターテインメント」と銘打ち、サスペンスと人間ドラマというジャンルをミックスした点も評価されました。

まず、テレビドラマがエンターテインメントである以上、視聴者の方々に全10話のドラマを飽きないで見てもらうためには、「次は何が起きるんだろう」と思えるように、何かがどんどん起こっていくことが必要だと思いました。黒岩さんの素晴らしいアイデアに乗っかって、先の展開が読めない、つまり、犯人が分からないという仕組みを作った上で、次にどういうメッセージを発するドラマなのかということを考えました。誘拐が起きる物語ですが、単なるサスペンスにはしたくなかったんです。


二宮和也さんの4年ぶりの主演ドラマということも大きかったのではないですか。

二宮さんには「翻弄(ほんろう)される主人公と家族のエンターテインメントを描きたいんです」と伝え、二宮さんも新しいジャンルとしてのさじ加減を考えてくれました。二宮さんが演じる主人公が娘を誘拐され、ここまでのピンチに陥るというのは、4年前の日曜劇場「ブラックペアン」(2018年、TBS系)では見られなかった要素なので、全く違うキャラクターにできると思いました。二宮さんは、父親になりきれていなかった温人が最終的に「父になる」という成長をしっかり演じてくださいました。


他にも、多部未華子さん、賀来賢人さん、濱田岳さん、玉木宏さんという主演級のキャストがそろっていました。

そうですね。実は僕は多部さん以外の4人の方とは、今回初めてお仕事しました。ストーリーやキャラクターに合うと思う方に集まっていただき、そんな皆さんが見応えある芝居をしてくださったからこそ、視聴者の方々を最後まで引きつけられたのだと思います。


脇役にも印象的な人が多かったですね。IT系企業の社長・阿久津を演じた(十代目)松本幸四郎さんもインパクトがありました。

阿久津役は、気品がありかつ不穏さも出せる人がいいと思い、松本幸四郎さんにお願いしました。幸四郎さんは2018年に襲名してからテレビドラマには出ていらっしゃらなかったのですが、今回快諾いただきました。やはり、撮影現場にいるだけでオーラがありましたね。


キーパーソンを演じた日本舞踊家元の藤間爽子さんも注目を集めました。温人の会社のスタッフであり、実は東堂の妻の妹でもあった鈴間という役でしたね。

あの役のキャスティングは難しかったです。ドラマによく出ている人だと、最初からその役に意味があるとバレてしまう。かと言って、視聴者の皆さんが見たときにちょっと引っ掛かる何かは欲しい。そこで藤間さんにお願いしましたが、鈴間というキャラクターをうまく作ってくれましたね。


2022年4月クールの連続ドラマで平均視聴率トップ。成功した理由はどこにあったと思いますか。

ヒットの方程式なんてないわけですから、結果論になってしまいますが、「こうしておけば見てもらえるだろう」ということではなく、とにかく細部まで丁寧に作ることを意識しました。真犯人を明かすまでの過程で視聴者に引っ掛かってほしいサスペンス要素は要所、要所に盛り込んでいきましたが、まずはストーリーの面白さをしっかりと視聴者に届けることに徹しました。

キャストの皆さんがおっしゃっていたのは「このチームは自分を消すことができた」ということ。つまり、物語をちゃんと届けるために一人一人がどういうパフォーマンスをすればいいか、スタッフも含め全員が考えて仕事をしたということだと思います。


今回は二宮和也さんと多部未華子さんが夫婦役で、家庭内別居状態から和解し、第二子をもうけるまでの変化を演じました。飯田さんのプロデュース作品では、他にも「義母と娘のブルース」(2018年、TBS系)、「ドラゴン桜(第2シリーズ)」(2021年、TBS系)など、親子や夫婦のやり取りが印象に残るものが多いですね。

僕自身、俳優さんたちの演技、やり取りを見るのが大好きなので、やはり撮影現場で見ていて「すごい!」と興奮できるような人に演じてほしいという希望があります。その意味で、キャスティングは人間ドラマを描く上で大事にしているポイントですね。


マイ”ファミリー”、つまり”家族”というテーマを追求しているのでしょうか。

今作の場合は、2022年2月に海の向こうで戦争が起き、ニュースでは戦地の映像が流れる中でドラマを作っていました。僕もそうですが、家族のことを考える機会は自然と増えていたと思うんです。特に戦地で離れ離れになる親子の映像が目に焼き付いて忘れられませんでしたし、そんな時、改めて家族とは何だろうと…。自然と、ドラマの中で家族の姿を描く割合は増えていきましたね。

ただ、家族とは人それぞれ向き合い方、捉え方は違うものなので、安易に「家族って良いもんだよ」という押し付けのメッセージにはならないように注意しました。このドラマを通して、視聴者に「家族を考えるきっかけ」「家族と向き合う時間」を与えられたらいいなと思っていました。

ドラマの始まりでは、父親になりきれていなかった温人が、皮肉にも人生最悪の事件を通して徐々に父になっていく…そんな主人公と、登場人物たちの家族との向き合い方を通して、視聴者にもメッセージを伝えることができたなら、とても幸せに思います。

(取材・文=小田慶子)
マイファミリー

マイファミリー

人生最悪の事態に見舞われた家族の姿を描く“ノンストップファミリーエンターテインメント”。主人公・温人(二宮和也)はゲーム会社の社長で、プライベートでは妻・未知留(多部未華子)と小学生の娘を持つ父親でもある。そんな一見幸せそうに見える家族の日常は、娘が誘拐されたことで一変する。脚本は黒岩勉が務める。

第112回ザテレビジョンドラマアカデミー賞受賞インタビュー一覧

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