ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第112回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞 受賞インタビュー

(C)TBS

平野俊一、田中健太、宮崎陽平、富田和成

“ノンストップファミリーエンターテインメント”を僕たちなりに達成できた(平野俊一)

「マイファミリー」で監督賞を受賞した感想を教えてください。

率直にうれしいです。なかなか僕たちスタッフが評価されることは少ないので、代表して賞を受け取らせていただきます。主演の二宮和也さんとは、まだ嵐が結成される前、「あきまへんで!」(1998年、TBS系)でご一緒して以来でした。24年ぶりに仕事ができたので、その作品で受賞できたというのもうれしいですね。

監督から見た、二宮さんの演技はいかがでしたか?

本番に懸ける集中力が素晴らしいので、演出としては事前に撮影のシミュレーションを重ね、二宮さんが集中しているところを逃さず撮影することに徹していました。

とにかく始めから完全に鳴沢温人としてセリフを放ってくるので、こちらが台本を読んだときのイメージと違い、驚くこともありました。でも、結果的に二宮さんの演技が一番伝わりやすいなと納得していましたね。

特に第3話、誘拐されていた娘を救い出し、抱き合う妻と娘をそのまま抱き締めるところ。「みんなで帰ろう」というセリフは台本になく、二宮さんから出てきた言葉です。最初は自宅に帰るのを嫌がっていた父親がそう言うことで、温人の成長が見えました。妻と娘を包み込んでいる様子が印象に残っています。


連続誘拐が起き、「その犯人は誰なのか?」というところで、「登場人物の誰もが怪しく見えた」という演出が評価されました。

クランクイン前にあらすじは結末までできていたので、そこから逆算して演出プランを立てました。高橋メアリージュンさんや松本幸四郎さん、みんなが怪しく見えるというミスリードは意識していましたが、あまり強調するのも良くない。

香菜子(高橋)が第1話のラストで、温人の娘が誘拐されているのを知って息を飲む場面も、怪しく演じるのではなく、「本当に知らなかったから驚いた」という芝居にしてくださいとお願いしました。


東堂役の濱田岳さんが助演男優賞を受賞しました。第1話から8話までずっと真実を隠しているという役柄でしたが、どう演出されましたか?

濱田さんは最初から東堂という人物に対して明確なイメージができているなと感じましたね。難しい役で繊細さが要求されたけれど、そのさじ加減は絶妙でした。

現場では「温人に協力するふりをして、実は温人の自宅に盗聴器を仕掛けている」というような状況確認はしましたが、本番では細かいことは忘れてやってほしいという話はしました。

ただ、例えば、第4話で救出された温人の娘が病院にいて、そこで東堂が「誘拐は最も卑劣な犯罪だよ」と言った後に、罪悪感いっぱいの顔をする。第8話で出したその表情などは、あらかじめ撮影していました。後から撮り直すのは無理だから、そういった場面はなるべく長めに撮って押さえるようにしましたね。


誘拐ものというと、被害者に電話がかかってきて犯人の口元が映って…という場面がよくありますが、このドラマでは姿すら映らず、スマホから犯人による機械音声が流れるだけでした。

そこはやはりクランクイン前、議論になりました。「犯人が映らないのに見る人の興味を引っ張っていけるのか」という意見は出ましたね。でも、実際に音声だけでやってみたら、映像はなくてもいいと確信しました。

もし、視聴者の皆さんが娘を誘拐された両親の視点にシンクロしたら、当然、犯人の姿は見えないわけなので…。それはやはり両親役の二宮さん、多部未華子さんの演技がしっかりしているので、成立したわけですが。


また、身代金の受け渡しなど、車移動のシーンが毎回のように多数ありました。ロケ撮影は大変だったのではないですか?

黒澤明監督の名作「天国と地獄」に、列車から身代金を投げる有名な場面があるように、誘拐モノに“乗り物での移動”は必須。そこは絶対にはしょれない。

物語の舞台となった湘南を中心に、山梨、群馬、千葉、富山などでロケをしました。ただ、このご時世、役者さんを頻繁に外には連れていけないので、活用したのがLEDスクリーンのシステム。

カメラマンがあらかじめ背景を360度カメラで撮影してきて、車を囲むように設置されたスクリーンに映し出し、車内で役者さんに演技してもらいました。本当に技術の進歩のおかげでリアルな映像にできたので、そうして撮っていると気付いた人は少なかったのでは?と思いますね。


このドラマで、演出家として達成したことは何でしょうか?

考察系ドラマとして見てくれた人もいましたが、このドラマは“ノンストップファミリーエンターテインメント”という打ち出し方をしました。最初の頃は同業者からもよく「どういう意味?」と聞かれましたが、「まぁ、見ていてくれよ」という気持ちでいました。

そして、過去の作品には当てはまらないオリジナリティーを作ろうとして、二宮さんを中心に新しい仲間が集まって、新しいことに挑戦できた。最初に課した“ノンストップファミリーエンターテインメント”は、僕たちなりに達成できたのではないかなと思います。

(取材・文=小田慶子)
マイファミリー

マイファミリー

人生最悪の事態に見舞われた家族の姿を描く“ノンストップファミリーエンターテインメント”。主人公・温人(二宮和也)はゲーム会社の社長で、プライベートでは妻・未知留(多部未華子)と小学生の娘を持つ父親でもある。そんな一見幸せそうに見える家族の日常は、娘が誘拐されたことで一変する。脚本は黒岩勉が務める。

第112回ザテレビジョンドラマアカデミー賞受賞インタビュー一覧

【PR】お知らせ