ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第112回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演女優賞 受賞インタビュー

(C)NTV

今田美桜

温かくて楽しい現場だったので、いまだに“麻理鈴ロス”です

「悪女(わる)」で初めて主演女優賞を受賞した感想を教えてください。

主演女優賞を頂けて、びっくりです。同時に、視聴者の皆さんに「悪女(わる)」を見ていただけたんだなと改めて実感しています。共演した方々やスタッフさんたちと作ったドラマが届いていたのかなと思うと、すごくうれしいですね。

投票した読者と審査員、記者からは「漫画っぽいキャラクターで笑わせ楽しませてくれた」「普通ならあざとく見えるような難しい役を嫌みなく演じきった」と評価されました。

麻理鈴(まりりん)は底抜けに明るくて、とことん真っすぐ。へこたれるときもあるけれど、それでも立ち直る。こんな天真らんまんな役はこれまであまり演じてこなかったので、最初に原作漫画を読み、石田ひかりさんが演じられた「悪女(わる)」(1992年、日本テレビ系)を見て、「どうしよう、私にできるかな」と思いました。

もちろん連続ドラマ初主演というプレッシャーもありました。今までは主演の方々についていく側だったので、そういう意味では緊張したけれど、「とにかくやってみないと分からない」と飛び込んでみて、現場で皆さんにすごく助けてもらいました。特に、憧れの先輩である峰岸という役そのままにかっこいい江口のりこさんに、かなり甘えさせていただきました。


麻理鈴のキャラクターが面白く、会社内を走って停止するとき、ズサーッと足を滑らせる動作も毎回のようにありました。

あの“ズサーッ”は、最初は全然できませんでした。クランクイン前に靴の裏に滑る素材を貼り付けてやってみたら、思ったより足が滑ってしまって、転んでもいいようにマットを置いてもらったり、足にサポーターを付けたりしながら練習しました。スタイリストさんが靴と靴裏の素材の組み合わせを工夫してくれました。太ももの内側が筋肉痛になるぐらい繰り返し、最後の方は1発でオッケーが出るようになったので、めちゃくちゃうれしかったですね。

でも、クランクアップの場面で向井理さんが初めてしたズサーッを1回で上手に決め、さすがだなと…。ちょっと悔しかったです(笑)。


今田さんと言えば、スタイルブックも出すぐらいの洋服好きですが、麻理鈴の衣装は、現在のトレンドとは違うテイストでしたね。

衣装は麻理鈴にとって大切な要素なので、プロデューサーさんたちと何度か話し合って方向性を決めました。「どこで売っているの?」と思われるぐらい独特のシャツやネクタイを身に着けていて、それらの洋服はスタイリストさんが自作してくれたり、古着屋さんで探してきてくれたりしました。

ちゃんと着こなせていたかは分からないけれど、あの髪型になってあの服を着ると、“麻理鈴スイッチ”が入る感じで、自然とテンションは上がりましたね。


クランクアップした瞬間は、どんな思いでしたか?

無事に終わってほっとしたんですけど、撮影が本当に楽しかったので、「まだまだ麻理鈴を演じたかった」という気持ちが湧き上がり、泣けてきました。本当に温かい現場だったので「明日からは、みんなに会えないんだ」という寂しさもありました。


恋愛面では、憧れの「T・Oさん」こと田村(向井理)か、頼りになる小野(鈴木伸之)か、かわいい後輩の山瀬(高橋文哉)かという三択になりました。

現場でもよく「自分が麻理鈴だったら誰を選ぶ?」という話になりました。現場では小野派が圧倒的に多かったです。小野さんは会社では麻理鈴にいろいろと言ってきますが、結局のところは優しい。周りでも小野派が圧倒的に多かったです。原作漫画の展開もあるので、最終的にはT・Oさんとくっついてほしいという思いもありつつ…。でも、やっぱり麻理鈴には会社の中でもっと上を目指して頑張ってほしいですね。


小野役の鈴木さん、山瀬役の高橋さんとの共演はいかがでしたか?

鈴木さんはお茶目な人で、現場のムードメーカーでした。第4話で会社の125周年プロジェクトに張り切る小野忠がとても面白くて、魅力的でしたね。映画「東京リベンジャーズ」(2021年)にも一緒に出演しましたが、共演シーンはなく、私は完成した映画を見て「(悪役を演じていて)鈴木さん、めっちゃ怖い!」と思っていたので、小野役とのギャップがすごかったです。

高橋くんはいろいろな豆知識を持っていて、よく雑学の話をしていました。演技についてはとても真面目で、山瀬くんが前半ではお掃除探偵で、後半はできる新入社員になるという変化を真剣に考えていました。山瀬くんは麻理鈴を好きになってくれましたが、恋愛というよりきょうだいのような関係だったのかなと思いますね。


劇中で会社の働き方改革のリアルな問題が描かれましたが、今田さんにとっても気づきはありましたか?

そうですね。例えば、会社員のお母さんも昔に比べてかなり働きやすくなったと言われているけど、まだまだ、熱を出した子供を預けることは難しいなど、こんな問題もあるんだと思いました。最近、現場で小さいお子さんがいるお母さんと会うことが多くて、長い撮影の間、子供を預けながら働いていてすごいなと…。

もし、この仕事にも子育て中の人は早く上がれる「時短制度」などがあれば、きっとお母さんたちはうれしいでしょうし、自分がお母さんの立場になったら仕事と両立できるかなとか、そういうことを考えたりしました。


ドラマでは、子育ての支援制度があっても、女性が完全に楽になるわけではないということも描かれていましたね。

マミコ先輩(桜井ユキ)がそうだったように、どうしてもお母さんが「すみません」と言うことになりますよね。麻理鈴が「なんでいつも謝るんですか、子育てしているだけなのに」と言ったのは、そのとおりだと思います。

麻理鈴は純粋に「なぜ」と思っているだけなのですが、世の中では暗黙の了解で「やはり子供の世話はお母さんがする」となっている場合が多いから、少しでも変わってほしいなと思いました。そして、女性も大変だけれど、男性にもいろいろなプレッシャーがかかっているんだなということも実感しました。


今回、「悪女(わる)―」に主演して達成したことはありますか。

この作品で得たものは、麻理鈴の考え方かもしれないですね。仕事を楽しんですること、何事にも全力で当たること。そうすると、見えてくるものが変わりそうだなと思います。今の世の中に訴えかける作品でもあったので、そのメッセージが伝わっていたらうれしいなと思います。

麻理鈴もそうでしたが、一人でできることは限られていて、周囲の人の協力があれば一人じゃできないことも実現できる。このドラマの現場も、まさに助け合いのあるチームでした。麻理鈴と出会えて本当に良かった。正直、いまだに麻理鈴ロスです。

(取材・文=小田慶子)
悪女(わる) 〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜

悪女(わる) 〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜

今田美桜主演で、深見じゅんのコミック「悪女(わる)」を30年ぶりに再ドラマ化。主人公・田中麻理鈴(今田)は、大手IT企業に就職するも、窓際部署に配属される。同じ部署で働く謎多き先輩社員・峰岸雪(江口のりこ)からの「あなた、出世したくない?」という言葉をきっかけに、麻理鈴の会社人生が大きく変わっていく。

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