ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第95回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞 受賞インタビュー

撮影=大石隼土

高橋一生

志を貫いた作品を作ることができました

まず、受賞の感想をお聞かせいただけますか?
ありがたいことです。しかし、僕だけでなく、周りの方たちも一緒になって政次をつくってくださっていたので、こういう取材を受ける度に共演者の皆さんやスタッフの方々の顔が浮かびます。この賞は皆さんにあげたいです。世のサイクルはすごく早くて、人はすぐに忘れて行くことが当たり前になってしまっているのに、1年を通して見てくださった方々の記憶に少しでもお邪魔することができたのでしたら、僕はそれだけでお芝居をしていてよかったと思います。ただ、難しくなってくるのはこれを超えていかなくてはならないということ。今後も政次のような役をいただけるように自分もお芝居を詰めて行くべきだと思いますし、お芝居に対して自分の中で飽きないようにしていきたい。あるメソッドが出来上がってしまうと、自分の得意な武器を振り回したくなるんですけれど(笑)、'17年は“自分ができることをしない”ということを掲げていたんです。やろうとしてとっさに思いつくものは全部避けて通ったので、そこを進んだ結果、このような形になったということはとても良かったのかと思っています。今後も自分に飽きそうになったら、また違う手を試してみようかと思います。
その考え方はまさに政次のようですね。政次は囲碁の手のように、幾多の策を練り、そこ以外の道を選んだりしていたんだと思います。
多分に入っているんです、政次の思考が、僕に(笑)。どの役をやらせていただいてもそうなんですけれど、役と自分を切り離して俯瞰で見ることが苦手で、考え方から在り方から多分に影響されているんだと思います。
高橋さん自身の中で、印象に残っているセリフやシーンは?
政次は自分で自分の本質を語るのではなく、他の人が語ってくれていたんです。自分自身で本質的なことには直接触れていない。政次が自分の考えを吐露したシーンといえば、「戦わぬ道を選ぶ」と言ったところくらいでしょうか。今川から戻ってきて、はっきりと直虎さんに言ったシーン。このセリフは今の時代にも通ずる、とても大切なセリフのように感じます。戦わずして、受け入れる。戦うとどうしても敵ができてしまうので、“戦わずして、敵をつくらない”ということこそ“無敵”なのではないかと思うんです。そういう意味でも、あの井戸端のシーンは僕の中でとても印象に残っています。
多くの方が印象的だったと語っていた、第33回「嫌われ政次の一生」での処刑シーンについてうかがいたいのですが。撮影当日は、柴咲コウさんや、監督の皆さんとどのようなお話しをされたのでしょうか。
当日は柴咲さんとは、ほとんど話さなかったです。「おはようございます」と言って、それぐらい。周囲のスタッフの皆さんも直虎、そして政次と同じ気持ちになっていたので、自然と気遣ってくださいました。演出の(渡辺)一貴さんも「このシーンは何度も撮れるものではないと思うので、ひと続きに撮ろうと思います」とおっしゃってくださって。撮ってくださるんでしたらそれは俳優の仕事ですから、何度でもやる気持ちではいましたが(笑)、皆さん本当に気遣ってくださいました。
キャスト、スタッフ含め、現場の皆さんの思いが一つになっていたからこそ、それが視聴者の皆さんにも届いたのでしょうね。
みんなで何かを投げる時は、力を添えるのが非常に難しくなると思うんです。一人で投げる方が、飛距離が出ますから。みんなで一緒に、二人羽織、三人羽織どころでなく、何百人羽織になった状態で投げると、そこに力を乗せるのはとても難しいものです。しかし、「直虎」にしても、また「カルテット」(‘17年TBS系)にしても、そういう力の相乗効果が確実に存在しましたし、振り返るとまず自分たちが面白いと思うものをつくらないと伝わらないんじゃないかということを制作陣の方々一人一人が強く思っていたのではないかと思うんです。そういった作品をこう言った形で評価していただけた以上は、このやり方を改めて曲げたくないと思いました。実はここ10年ぐらいの間ずっと思っていたことだったのですが…。
そのことを改めて確信させてくれたのが、この作品だった。
ええ。その思いを形にしてくれた作品だったと思います。何につけても志って大事なんだということがはっきり分かったし、差異もはっきり分かってくるんです。志が重なって、一つの作品になると(芝居という)“ごっこ遊び”を超える瞬間が生まれる。たたが“ごっこ遊び”、しかし、されど“ごっこ遊び”と思っているのが俳優で、それを自分の中でちゃんと通していかなければならないと思いました。また、自分たちが信じた志を貫いた作品を作ることができたおかげで、見ている方々に面白いと思っていただけたとも思うんです。例えば、「直虎」ではあのゴールデンタイムに血を吐くというシーンはなかなか受け入れられ難いことだったと思うんですけれど、僕は台本に書かれている通り吐きたいと思った。もちろん一貴さんもそのつもりでいました。(批判が生じるかもしれないシーンだったが)共に歩み、これは絶対に大丈夫だと迷いがなくなった状態のなかで物事が練られていくと、ちゃんと皆さんにもそれが届くという自信になる。ですから、見てくださる方のことを気にしないでお芝居をするということが、この「直虎」と「カルテット」で僕のモットーになったかもしれないです。作品を構築するために、自分が一個のピースとして作品世界に入って行くことを忘れない。これはここ数年ずっと思っていたことだったのですが、'17年にはっきりと言語化することができました。
現在、「わろてんか」(毎週月~土朝8:00ほか、NHK総合ほか)で伊能を演じている真っ最中の高橋さんに、政次を語っていただくというのは何とも不思議な感覚で(笑)。
そうですね(笑)。これから伊能も苦しくなっていきます。軍部に言論を弾圧されてしまったり、自分がやろうとしていることに規制を掛けられたり。映画の中での自由恋愛なんてもってのほかみたいになってしまうのですが、人間の自由って愛とか、恋とかじゃないの?と、苦しくなって行くんです。そういう構図がちょっと現代と似ている、なんて感じながら、今までの伊能とは違う姿をお見せする形になってくるのではないかと思います。

取材・文/及川静

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