ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第95回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞 受賞インタビュー

撮影=下田直樹

福澤克雄、田中健太

迫力のある大規模なシーンに見応え!

「陸王」で、最優秀作品賞に選出されました。受賞のお気持ちをお聞かせください。 
福澤克雄:受賞できてよかったです。50歳を過ぎて、面白いものさえ作ればいいってものじゃない人生になってきたなと感じています。昔とは考え方が変わりました。TBSの日曜21時は看板枠。『華麗なる一族』の時から思っていましたけど、男性もよく見ている時間帯なんです。だから、ドラマを見て元気になってもらって、また月曜日から働いてほしい。特に日本を支えている製造業の人たちに見てもらいたいですね。僕もかつて富士フィルムに勤めていたから分かるんですけど、フィルムがなくなっていくんじゃないか、車のエンジンは全部モーターに変わるんじゃないか。時代の流れの中で、今まで作ってきたものが全部ムダになるんじゃないかって結構ビクビクしているんですよ。現場で働いている人たちは。でも「陸王」は、今まで培ってきた技術は決してムダにならないことを教えてくれる。伝統を守ってきた「こはぜ屋」の人たちが、時代の波に押されながらも新しいものに取り組む姿を見て元気になってもらいたい。特に製造業の方たちには、勇気を持っていろんなことに挑戦してほしいという願いを込めて作りました。
田中健太:僕もそういう思いを抱きつつ、とにかくいいものを作りたい。それだけを考えながら粛々と撮っていました。
役所広司さん、寺尾聰さんという両ベテランの共演は見ごたえがありました。
福澤:役所さんと寺尾さんには、何も演出していません(笑)。ここは、力を入れて話してほしいとか、ちょっと相談するくらいです。お二人はとてもいい方たちで、芝居経験が少ない阿川(佐和子)さんにずっと付き合ってあげたり、どんなに時間が掛かってもいつもニコニコしているんですよ。だから、若い俳優さんたちも安心してぶつかることができる。キャストの皆さんはとても仲が良かったですね。
大先輩を相手に、若手の山﨑賢人さん、竹内涼真さんも熱い演技を披露していましたね。
福澤:山﨑くんは、人の良さがにじみ出ていますよね。常に役所さんと寺尾さんに挟まれて、大体どちらかと芝居していたので、その経験は大きいと思いますよ。就職活動がうまくいかない大地の苛立ちを自然な形で表現していましたよね。竹内くんはセリフも絶対間違えない。何でも一生懸命に取り組む姿に好感を抱いていました。今回の作品でも、その印象は変わりません。これから、どんどん勉強してすてきな俳優さんになっていくと思います。
俳優が本業ではない、阿川佐和子さん、松岡修造さんの起用もズバリ的中した印象です。
福澤:阿川さんが演じたあけみは、チャキチャキしたおばさんみたいなイメージだったので、大きな声を出して欲しかったんです。最初の頃は、照れくささもあったのか声が小さかったんですけど、もともと頭が良い方ですから飲み込みが早い。セリフ覚えもいいし、すぐに大きな声で芝居するようになりましたね。松岡さんの場合、阿川さんとは逆。最初、こんな感じでと、演技を見せてくれたんですけど、すごく声が大きかったんです。だから、声を抑えた演技をリクエストして、あんな感じのキャラクターに。とても初めてとは思えないくらいうまかったですね。
マラソンシーンは臨場感あふれる演出でしたけど、苦労した点は?
福澤:役所さんが「映画でもこんなことしないよ」と驚くくらいたくさんのエキストラの方たちが協力してくれました。でも、うちのチームは「下町ロケット」や「LEADERS リーダーズ」などで、1000~2000人規模のロケをしょっちゅうやっていたから慣れているんですよ。道路の封鎖とか交通整理など、やり方を知っているんです。マラソンは常にランナーが走っているから、それに合わせてカメラも移動させないといけない。カメラ3台ぐらいで、中継車を使いながら撮影しましたね茂木を演じた竹内くんにもギリギリまで頑張って走ってもらいました。平日なのに4000人近くエキストラの方たちに集まっていただいて。観客はCGを一切使っていません。全部本物。おかげで迫力のある画が撮れました。
田中:大掛かりなロケが終わった後にファンサービスをやったこともありましたね。
福澤:キャストの皆さんも快く協力してくださって。抽選でサイン入りグッズが当たるプレゼント企画をやりました。エキストラの方たちへの感謝の気持ちです。
田中:僕はマラソンシーンではなく、選手たちが競技場を何周も走るシーンを撮ったんですけど、ずっと同じところを走っているのでカット割りなどで見せ方を工夫しました。観客役でたくさん集まっていただいたエキストラの方の存在をムダにしないようドローンを使ったりして、大人数だからこそ撮れる臨場感あふれる画面作りを意識しました。
登場人物の表情をアップで見せる演出も健在でしたね。
福澤:アップで見せるやり方は「半沢直樹」と一緒。結局“東京中央銀行”を中心に、半沢、佃社長、宮沢がいるという設定なので、あの世界に関しては撮り方を変えるのはやめようと思ったんです。日本では引いて撮ったり、カットを割らない演出がいいというような傾向がありますけど、ちょっとカッコ悪くても分かりやすい方がいい。それは自分のためじゃなくて、お客さんのため。いかに最後まで飽きずに見てもらえるか、毎回それを意識しながら撮っています。
陸王

陸王

「半沢直樹」(2013年TBS系)の制作陣が集結し、池井戸潤の同名小説をドラマ化。創業から100年以上続く老舗足袋業者「こはぜ屋」四代目社長・宮沢(役所広司)が、会社の存続を懸けてランニングシューズ開発に挑む企業再生ストーリー。資金繰りに悩む宮沢が、新規事業参入のため一世一代の勝負に出る。

第95回ザテレビジョンドラマアカデミー賞受賞インタビュー一覧

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