ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第96回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞 受賞インタビュー

撮影=ToshiSENDA

塚原あゆ子、竹村謙太郎、村尾嘉昭

失礼のない程度の軽さ、そのさじ加減がとにかく難しかったです(塚原あゆ子監督)

「アンナチュラル」が、最優秀作品賞をはじめとする6部門を受賞しました。受賞のお気持ちをお聞かせください。
今回たくさんの方が面白いと言って下さっていたことが、スタッフ・キャスト一同の大きな励みになり、それに支えられて最後まで作り続けられました。作品を作ることで皆さまの声が届くということが、私たちにとって一番幸せなことなので、それを支えに今後も頑張って作っていきたいと思います。オリジナル作品のドラマ化が難しくなっている時代なので、そういう意味でも、今回関わってくださった方々と総力戦で作った作品が賞をとれたというのは本当に良かったです。原作ものももちろん素晴らしいですけれど、オリジナルでもこれだけ力のある作品を作っていけるのだということをアピールしていきたいですね。
「UDIラボのメンバーが魅力的」という声も多かったのですが、UDIラボのメンバーの演出の際に意識したことはどんな部分でしょうか?
キャラクターの色が近くならないように、気を付けました。一人の脚本家が書き、一人の演出家が演出すると、キャラクター同士が似てきてしまうということは普通にあり得ることなんです。キャスト本来が持っているような味や力に、なるべく近いキャラクターを育てていくよう演出しました。ご本人たちに無理なく演じてもらうために、キャラクターを一緒に作っていくことはとても大切な作業だったと思います。
今回は、脚本の段階から“あて書き”だったそうですね。
あて書きしたから演者さんが簡単にやれるわけではなく、石原さんをはじめ、みなさんがどのように演じたらいいのか悩まれていました。結局、あて書きっていうのは誰かが感じた“石原さとみ像”であって、前に作られた石原さんのキャラクターのイメージをどうしても引きずったりもするだろうし、あて書きだからこそ、「私のどの部分をあてて書いたんだろう?」と思ったと思うんです。そのさじ加減を見るのが私の仕事でもあると思うのですが、「私はこういう風に思われているんだな」とキャスト自身が飲み込んでいく作業自体が、台本から映像作品にしていくということだと思うので、そこにはそこの苦労があったと思います。
今回、石原さんが演じられたミコトという主人公はどのように作られたのでしょうか?
現代における女性の主人公はどんなキャラクターがいいのかなということをすごく考えました。吠えて噛みつくキャラや、堅物なキャラ、長いものに巻かれないような個性的な主人公は今までにも多いのですが、今の時代にそれが合うのかなと。ミコトのような、たおやかで柔らかい上、世の中の不平不満に対しても独自の理論を持っていて、自分なりのアプローチがあるという女性こそが今の世の中の主人公にふさわしいんじゃないかと思いました。石原さんにとっては今までになかったキャラだと思うので、視聴者の皆さんには新しく感じられたかもしれません。
確かに、ミコトは本当いそうな親近感の湧くキャラクターでしたね。
そう言っていただきたかったんです(笑)。いそうにないキャラを主人公に据えるドラマは結構あるんですけど、それを人が演じると嘘くさくなってしまうことがあるので。今、ドラマを見ている皆さんの目がすごく肥えてきていて、日本だけでなく海外の作品も含めてたくさん見ることができる時代になってきたじゃないですか。その中で視聴者の皆さんの「こんな設定ありえない」という気持ちが「しらける」に直結するんだなと感じていました。なので、「近くにいそうで、なおかつ何となく物事に突っ込んでいけるキャラクターを作りたい」ということを、野木(亜紀子)さんとずっと話していました。
最初は態度も悪かった中堂も、徐々に愛着がわいてくるようなキャラクターになりましたね。中堂についてはどのように意識して演出されたのでしょうか?
最終的には、UDIラボのメンバーたちが影を背負った彼を仲間だと意識している状態で最終回を迎えた方がいいだろうなと思っていました。井浦さんには、中堂本人は仲良くなる気はないんですけど、距離感やちょっとしたアドリブで少しずつ心を許し合ってきているという雰囲気をうまく出してほしいと相談しました。台本だけだと、中堂は堅いのか柔らかいのかツッコミ待ちなのか分からないので、「どんな感じだろう?」って井浦さんもなっていたと思います。その隙が中堂の温かみだったり、深みになったのかもしれません。
法医学というジャンルを扱う上で、苦労した点を教えてください。
“ご遺体に対する尊厳をどこまで重視するか”です。実際、解剖医の方々は一日何体もの遺体を検案されていて、その世界を描いた時にいちいち手を合わせたりはしないだろうっていうリアリティーも必要なのではと思いました。ご遺体に対する尊厳はもちろん大事なんだけれども、一体一体にきちんとやるドラマにしていいのかな?と。このドラマには“たくさんのご遺体を検案し、今生きている人たちにいかしていく”という大きな命題があるので、一体一体に涙を流すキャラクターたちではないんです。今の時代の法医学ミステリーとして銘打った時に、亡くなった方のための話じゃないんだということを伝えたかったんです。もし、感染病にかかった患者を1000体検案できれば、早く特効薬ができたり防止策ができますよね。それこそが、法医学の大きな役割の一つだと思うんです。そこを伝えるには、リアルな世界を描かないといけないと思いました。なので、ご遺体を検案しながらちょっと不謹慎なことあえて言うという、野木さんの怖がらない台本に沿っていきました。失礼のない程度の軽さ、そのさじ加減がとにかく難しかったです。
特に思い入れがあるシーンを教えてください。
第5話で泉澤祐希くん演じる巧が、人を刺し殺そうとするところですかね。あえて、二度刺してしまったシーンです。刺していいのか、刺す瞬間を見せるべきかどうかも含めてかなり悩んだシーンです。きれいに描きすぎて讃美になってもいけないし、やったことは悪いことで絶対に許されない。そういうことを踏まえた上でどう見せるか、本当に悩んだ分、思い入れがあります。殺人は人のエゴで起こると思うので、それを決してきれいなシーンにしてはいけない。ストーリー的には、残された巧の方に感情が出てしまうので、美化してしまいそうになる部分を止めなくては、と。すごく難しかったです。
主題歌の「Lemon」について感想をお願いします。
今回、曲ありきで編集していたので、「Lemon」の歌詞やメロディーにはとても助けられました。今回だけではなく、曲がある状態でカットを割っていくのでバチッと当たるところを用意して待っている感じです。「Lemon」が当たった、っていうのは編集していたので分かります(笑)。
最後に、改めて「アンナチュラル」の魅力を教えてください。
このドラマは一話完結でしたが、私にとっては視聴者の皆さんが“ミコトたちに会いに来られる”という連続性が魅力の一つじゃないかなと思います。もちろん、縦のストーリーもありますけど、一話一話楽しく見ることができて、毎週キャラクターに会いに来て彼らの成長を見て欲しいなという思いで作りました。そこがうまく魅力として皆さんに伝わって、楽しんでもらえたんじゃないかなと思います。そこにいつもいそうな人たちをのぞきみる感じと、一話完結としての面白さ。その2つ魅力が合わさってこそ、「アンナチュラル」だったと思います。

第96回ザテレビジョンドラマアカデミー賞受賞インタビュー一覧

【PR】オススメ情報