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<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「忘れないように、忘れられないように」【短期集中連載/第11回】

2020/11/02 23:30

映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第11回
映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第11回

芸人、絵本作家ほか、ジャンルの垣根を飛び越えて活躍する西野亮廣。2016年に発表し50万部を超えるベストセラーとなっている絵本『えんとつ町のプペル』だが、実は映画化を前提として設計された一大プロジェクトだった。構想から約8年、今年12月の映画公開を目前に、制作の舞台裏と作品に込めた“想い”を語りつくします。第11回目は、西野亮廣を作品制作に駆り立てる、あまりに大きな動機について、です。その出来事が起こってしまった2015年の夏を振り返ります。

映画『えんとつ町のプペル』より煙の向こう側を目指すルビッチとプペル。公開に向けていよいよ制作も最終局面に突入
映画『えんとつ町のプペル』より煙の向こう側を目指すルビッチとプペル。公開に向けていよいよ制作も最終局面に突入

おとぎ町


とてもセンシティブな内容なので、これまでずっと黙っていたのですが、映画『えんとつ町のプペル』ができるまでの物語を語る上で、絶対に外すことができない思い出があります。絵本『えんとつ町のプペル』が世に出る一年前の話です。
 
あの夏、僕は東京・青山で『おとぎ町ビエンナーレ』という個展をおこなっていました。SNSで皆が「いいね」や「フォロワー」と求めるようになり、国民全員が発信者となった今、お客さんは「サービスを受け取る」だけでは飽き足らず、面白い発信をする為にコストを割くようになりました。僕らがイベントチケットを販売するときは、チケット料金が安い順から「B席」「A席」「S席」「スタッフになれる権」とあるのですが、毎回、一番最初に完売するのは最も値段の高い「スタッフになれる権」です。

それこそ、エッフェル塔でおこなった個展の際に出した「スタッフになれる権」は即完。エッフェル塔の中で、パリの夜景をバックにスタッフの皆とおこなった打ち上げは、とても良い思い出です。

「面白い仕事を買う」「お金を払って働く」は、上の世代の人からすると「ブラック企業」や「やりがい搾取」、はたまた「カルト宗教的」に見えるそうですが、本質的には「お金を払って火をつける」や「お金を払って肉を焼く」とやっているBBQやキャンプと変わりません。今となっては、(少なくとも自分達周りでは)ベターとなりましたが、当時は、「お金を払って働く」なんて、誰も考えていません。そんな中、その道を切り開いたのが『おとぎ町ビエンナーレ』でした。
 
スタッフは、ほぼ全員がボランティアか〝有料ボランティア〟。仕事の対価は、仕事終わりの打ち上げと、「まだ何者でもない自分達が、万人規模のイベントを仕掛けている」という体験です。ボランティア募集をかけたところ、200枠がすぐに埋まり、そこで僕は「今のお客さんは発信したがっている」ということに気がつきます。
 
ボランティアスタッフが集まった最初の会議で、僕は、「発信者と受信者の境界線を曖昧にして、お客さんが作って、お客さんをお招きするエンタメを作りましょう」と話しました。その話を他の誰よりも前のめりで聞いていたのが、「ノンちゃん」でした。四六時中、前歯を出してデレデレ笑っている女の子です。

ボランティアスタッフのリーダーに立候補してくれたノンちゃんは、僕とボランティアスタッフの間に入ってくれて、全員に分け隔てなく愛情を注ぎ、時々、「もっと、しっかりしてくださいよ!」と僕を叱ります(笑)。
 
個展会場の設営は学生時代の文化祭のようで、僕も仕事が終われば会場に向かいトンカチ片手にトンテンカン。設営の終わりが近づくと、誰かが近くのコンビニから大量の缶ビールを買ってきて、まもなく個展会場の前で宴が始まります。「オープンに間に合うかな」と言いながら、ビールと枝豆を口に放り込み、完成前の個展会場の入場ゲートを眺める面々。

『おとぎ町ビエンナーレ』の入場ゲートには、少し汚れた幕が垂れています。これはノンちゃんからの提案でした。

「西野さん。この幕の、新しい感じ、なんか鼻につきません?」「鼻にはつかないけど、言いたいことはわかるよ」「ちょっと〝汚し(よごし)〟を入れてアンティーク感を出した方が、温かい感じがすると思うんです」「そうだね。ちょっと汚そうか」「私、やっときますね」

そう言うと、「ノンちゃん」は近くの〝植え込み〟に走ります。何事でしょうか? 様子を見ていると、植え込みから盗んできた土を、入場ゲートの幕に塗り込むノンちゃん。

「ノンちゃん! 土でやっちゃうの?」「一旦、土で試してみます」「それより、植え込みの土は盗んじゃダメだよ」「わかってますよ。絶対に黙っておいてください。ギャハハ」。また前歯を出して笑います。

映画『えんとつ町のプペル』より。MV(欄外動画)でもおなじみの、スモーキー達によるハロウィンパーティーのシーン
映画『えんとつ町のプペル』より。MV(欄外動画)でもおなじみの、スモーキー達によるハロウィンパーティーのシーン
下に続きます
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PROFILE●1980年、兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年、梶原雄太と「キングコング」を結成。2001年に深夜番組『はねるのトびら』のレギュラー出演決定と同時に東京進出を果たす。2005年に「テレビ番組出演をメインにしたタレント活動」に疑問を持ち、「自分の生きる場所」を模索。2009年に『Dr.インクの星空キネマ』で絵本作家デビュー。2016年、完全分業制による第4作絵本『えんとつ町のプペル』を刊行し、累計発行部数50万部を超えるベストセラーに。2020年12月公開予定の『映画 えんとつ町のプペル』では脚本・制作総指揮を務める。現在、有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰。会員数は7万人を突破し、国内最大となっている。芸能活動の枠を越え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中。

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  • 映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第11回
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  • 2015年8月に行われた個展『おとぎ町ビエンナーレ』。ここで得た経験によって、「えんとつ町」の世界観がより強固なものになった
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