明石ガクト氏によるシナリオ本文
ガランゴロンガランッ!
テーブルの上で、緑色の瓶が勢いよく回る。僕の鼓動の速さとは相反するように瓶はゆっくりと速度を落としながら、彼女の方向を向いた。
静寂のヴェールを乱暴に剝がすように湧き上がる歓声。自粛中に観た『梨泰院クラス』に出てくる「真実ゲーム」を真似しながら、僕らはZoom飲み会では味わえない好奇と興奮の混じった匂いを楽しんでいた。
お調子者の加藤が「じゃあ今夜、この中の誰かと〝不時着〞してもいいか答えてください!」と彼女に絡む。僕は気取らぬように笑いながらも内心はドキドキだった。
彼女は女優のように静かに微笑むと横を向いて、やおらチャミスルを一気飲みする。
「それは内緒……トイレに行ってくるね」
席を立つ彼女を追いかける格好で、僕もあとに続く。薄暗い廊下で彼女が振り返り、悪戯っぽく「ちょっと酔っちゃった。君の家に不時着しようかな」と言い残して男子禁制の扉の向こうへ消えていく。
僕も慌てて用を足す。彼女と手をつないで、この合コンの境界線を抜け出す方法を考えながら。