門脇麦&水原希子の価値観が変わった“出会い”は…
――華子も美紀も、新たな出会いによって人生が開けていきます。お二人が気付きを得たり、価値観が変わったりした“出会い”があれば教えてください。
水原:ドラマ「ブラを捨て旅に出よう~水原希子の世界一周ひとり旅~」(2020年、Hulu)の撮影でインドに旅行したことですかね。よくみなさん価値観変わるっておっしゃいますけど、まさしくそういう経験でした。何が正しいとか正しくないっていうことは人間が作り上げたことであって、世界はそういうことに関係なく、ただ生と死を繰り返しているんだな、って思ったんです。
旅行中、ガンジス川で沐浴をしたんですよ。
ガンジス川はヒンドゥー教徒にとって聖なる川と言われていて、現地の方は沐浴をするほか飲み水として飲んだり、洗濯をしたりしている川なんです。実はスタッフの方は衛生面を気にして「足を浸すくらいでいいよ」って指示してくださったんですけど、どうしてもそういう気持ちになれなくて。
とはいえ生半可な気持ちで潜るのも失礼だろうなと思い、現地の方に聞いてみたら「頭を3回水の中に入れないとカルマが浄化されない。足を浸すだけじゃ意味ないよ」と言ってくださったんです。
そこで、教えていただいた通りの手順で潜ったのですが、ちょうどその瞬間に日が差し込んできて、心が震えるのを感じました。
門脇:それこそ、今回の撮影は衝撃体験が多い現場でした。
岨手由貴子監督って“台本6.5割、現場で3.5割を注入して完成”みたいなスタンスの方だと勝手に思っているんですが、現場での変更によって、なんでもない場面が印象的なシーンに変わった経験がたくさんあるんですよね。
例えば、華子のおじさんを演じられている山中崇さんと話すシーンがあるんですが、ここで岨手監督が私に「ジャムを指にとってなめて」って指示を現場で出されて。
この変更によって、“いつもきっちりしている華子も、おじさんの前ではちょっとお行儀の悪いことができる”という、2人の関係性が見えるシーンに変わったわけですよね。そういう衝撃体験がたくさんありました。
水原:ここ、すごくいいシーン。大好きだった!
――映画「あのこは貴族」はお二人にとってどんな作品になりましたか?
水原:今しかできない作品、運命を感じる作品だったなと思います。
この作品を撮影したのは実は2年前なんですけど、その時の自分と美紀が本当にリンクしていたんです。撮影時、私は28歳だったんですが、ちょうど起業も経験したタイミングで。ここまで境遇の似ているキャラクターって巡ってこないんですよ。そして、年をとって見返しても「あの時頑張ってたな」と思えるような作品にもなったと思います。
門脇:たくさん気付きがある作品でした。特に“台本が全てではない”という気付きはとても大きかったです。
台本を成立させることが役者である私たちの仕事だから、「おや? 違うぞ」と思っても、自分の中で「おや?」を自己解決してしまいがちなのですが、疑問を抱いたら監督と一緒に台本を成長させて行くことができるんだな、と気付くことができました。
2月26日(金)公開
監督・脚本:岨手由貴子
出演:門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオほか
原作:山内マリコ(「あのこは貴族」集英社文庫刊)
配給:東京テアトル/バンダイナムコアーツ
(C)山内マリコ/集英社・「あのこは貴族」製作委員会