観客動員150万人、興行収入20億円突破と大ヒットを記録している『映画 えんとつ町のプペル』。原作・脚本・製作総指揮を務める西野亮廣が何かと話題に上がるが、本作のアニメーションのクオリティーも「とにかくすごい!」と評判だ。そこで今回、本作を手掛けたアニメーション監督、STUDIO4℃の佐野雄太氏に『映画 えんとつ町のプペル』の圧倒的な映像世界がどのように出来上がったのかインタビューを実施。公開から2か月、すでに“何プぺ”もしたという人も、まだの人も、過渡期にあるアニメーション映画界をけん引する本作の新たな魅力を感じてほしい。
『映画 えんとつ町のプペル』はアニメーションとしても“挑戦”している作品
――基本的な話で恐縮ですが、アニメーション監督の役割から教えてください。
作品によって変わってくるのですが、基本は作品内の「動くもの」の責任者です。動きを演出したり作ったり、調整するのが主な役割です。CGではキャラクターのモデルが存在しているので、顔が崩れたり頭身がおかしくなったりすることはありません。ただし、CGでも顔はポーズ毎に調整していかないと本当にいいものにはなりませんし、一枚一枚描いている作画に比べて、モデルを動かしているCGアニメーションは比較的簡単にできる反面、ポーズも動きも説得力に欠けるものになりやすい傾向にあります。そのため本作ではすべての動きをアニメーション監督が細部までチェックして、何度もリテイクを重ねながらキャラクターの動きが生き生きしたものになるようにしています。いま、まさに日本のアニメーションは作画からフルCGに移行している時期で、試行錯誤している最中なんです。そんな中で『映画 えんとつ町のプペル』は“挑戦している”作品になっています。
――絵本のアニメーション映画化ってなかなかないですよね?
絵本を見て、まず絵の密度、特に主人公のプペルの密度がすごい濃いなと思いました。プペルはいろんな無機物(ゴミ)が集合したキャラクターじゃないですか。なので作画は難しいなと思いました。作画で無機物の形の正確性を保ちながら動きを描くのはかなり難しいのですが、その無機物が無数についているキャラクターです。1カット描くのも至難の業ですが、本作は約1400カットです。不可能ですよね(笑)。CGはそこは得意分野でモデルさえ作ってしまえばどんなに複雑なキャラクターでも表現できます。一方でフルCGだと、キャラクターの豊かな表情、体の表現をなかなか伝えられない。そこは苦労するだろうなと思いました。
―――最も苦労したのはどんな点ですか?
キャラクターの動きとそこから生まれる感情表現ですね。ルビッチはとても小さいですから、基本はかわいらしい動きなんです。足を伸ばしたまま、チョコチョコ歩く感じだったり。一方で父親(ブルーノ)を亡くし、えんとつ掃除夫として働いて頑張っている少年でもあるので、芯のある表情や動きを入れているんです。
―――プペルはどうですか?
「ゴミ人間」といえども、人間が中に入っているようには見せたくなかったんですよね。でも、目らしきものが2つあるからどうしても人間に見えてしまう。なので、目の位置をずらしたり、口を斜めに曲げて、立ち姿も少し斜めにすることで人っぽくない感じをまず出しています。それが物語が進みルビッチをはじめ様々な人と触れ合うにつれて、少しずつ人間らしい動きになっていくんです。なかなか気づいてもらえない部分だとは思うんですけど(笑)。
――最初に動きを佐野さんが考えて、アニメーターの方に伝えて作っていくんですか?
そうですね。アニメーションを作る上で重要なことは、まずキャラクターをプロファイリングすることだと僕は思っています。アニメーターって役者と一緒なので、(アニメーション監督である自分が精度の高いキャラクタープロフィールを共有することで)アニメーターがキャラクターに完全になりきることができれば、何も考えなくてもキャラクターを動かすことができるはずなんですよ。だんだん作っていくうちにアニメーターとも共通認識ができていくので、そうなってからはすんなり進みましたね。ただコロナ禍だったので、なかなか実際に会って打ち合わせができる状況ではなくて、文章にして伝えるわけにもいかず、画面越しに動きを懸命に伝えていました。そこから動きを作ってもらって、自分で修正することもあれば、予想以上のいい動きが来た場合は、自分のキャラクターの解釈にその動きを加えて、作品全体を調整していきました。
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■映画チケット情報
https://theater.toho.co.jp/toho_theaterlist/poupelle.html
■関連書籍情報
エッセイ集『ゴミ人間 日本中から笑われた夢がある』KADOKAWA/発売中
映画公開に合わせて出版された、西野亮廣の自叙伝的初エッセイ集。初めてエンターテイメントを意識した少年時代、テレビタレントとして挫折を覚え、絵本作家を志してからのバッシングに耐える日々、そういった体験から『えんとつ町のプペル』という着想を得て以降の、絵本そして映画制作の舞台裏が赤裸々に綴られる感動作。重版を重ねる大ヒット作。より深く映画を楽しみたい人は必読!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322008000225/