ぶっ飛んだ狂気のキャラを演じ「何でもできる」
大きな転機となったのは、30代になって出演した「主に泣いてます」(2012年、フジテレビ系)だ。ほぼ初めてのバリバリのコメディー作品で、感情の起伏の激しいぶっ飛んだ狂気のキャラクターを演じ、強烈な印象を残した。これを演じてからは「何でもできる」と思うようになり一気に役柄も広がった。
「自分の好きなものを好きと言えるようになった」のもこの頃だという。小さな頃から大人の世界にいた彼女はその“副作用”として「人の顔色を伺ったり、人が欲しい答えを言うことが癖になっていて、ずっとそれが正解だ」と思うようになっていた。けれど、そうではないと気づいた。そう気づいてからもしばらくは“癖”が抜けきらず勇気も出なかったが、30歳を過ぎ「まぁもういっか!」と吹っ切れたのだ(「モデルプレス」2019年4月22日)。
全身女優、安達祐実という“人生”を享受
物心ついた頃にはもう女優だった為、プライベートと仕事の境目がわからないという。「皆さんに人生を見ていただいて成長してきた部分もあるので、プライベートも仕事も全てがあって安達祐実という人間が出来上がっている」(「リアルサウンド」前出)。だから、隠したり、誤魔化したくはない。二度目の結婚を経て「やっと幸せになりました」と言う彼女。 日々、安達祐実の写真を撮り続けるカメラマンの夫・桑島智輝は「棺桶に入るまで撮って、そこで完結ということにしよう」(フジテレビ系「アウト×デラックス」2016年12月8日)と語る。まさに全身女優。僕らは、安達祐実という“人生”を享受している。
文=てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「全部やれ。日本テレビえげつない勝ち方」
※『月刊ザテレビジョン』2020年8月号