生駒里奈が鬼才・KERA戯曲に挑む理由「ここで受けて立たないと!と思って」<カメレオンズ・リップ>
まさに今、一つずつ学んでおります
――いざ稽古に入って、ドナ/エレンデイラ役についてどんな風に感じていますか?
台本を読んだだけじゃ、全然読み解けなかったです。バックボーンが複雑で、しかも二役なので…。私自身は、自分で言うのもなんですが、とっても素直なので(笑)。そういう人間からすると、想像つかないようなメンタリティーだから、すごく難しいです。
いろんなことを準備して、計算式に当てはめていく演技というか。私自身は普段は、計算式なんて無視。答えさえ合っていればいいというタイプなので。緻密な計算を苦手とする人間がまさに今、一つずつ学んでおります。実際に演じてみないと、すぐにはできないものなんだなと実感する毎日ですね。稽古を重ねるうちに、だんだん見えるようにはなってきてますが…。
――せりふの応酬で物語が進んでいく作品ですが、ルーファス役の松下洸平さんとの掛け合いはいかがですか?
相手を動かすのも自分だし、自分が動かされるのも相手なんだと、改めて気付かされています。そこをお芝居では考えなきゃダメだよなと。松下さんも『探り探りだ』っておっしゃっていましたね。私もだんだん分かるようになってきて、今までずっと松下さんから投げてもらっていたってことに気付き始めました。待たせてしまってごめんなさい!って思いつつ、一緒に頑張っています。
松下さんご自身は、とっても頭が良くて、経験値もあって年齢も上なので、すごくフォローをしてくださるんですが、爽やかなだけの人じゃないというか(笑)。いろいろなことを経て、この落ち着きなんだろうなと思います。お互い人見知りなんですけど、最近やっとお芝居じゃない時にも松下さんの目を見て話せるようになりました(笑)。私はもともと人見知りなんですけど、どんどん人見知りになっちゃって。
――そうなんですか。普通は、逆になっていきそうなものなのに。
だからこそ、劇団「少年社中」の稽古場は、ホントに甘えられるというか。そういう場所ができたから、すごく充実はしていますね。私の周りに河原さんから演出を付けてもらったことのある人もいるので、「どんな感じでやればいいの?」など質問することもありました。自分自身も、お芝居でそういう話ができるようになったんだなって感慨深いです。ちょっとずつ経験を積み上げてこられたんだなと。
――今回の役柄は、ラストへ向けて人間としての爆発力も必要とされそうですよね。そういう部分については、どんな風に挑もうと思っていますか?
稽古の最初のころは、どうやればいいんだろう?と嵐の中に放り出された感覚でした。稽古を重ねるうちに、なんとか生き残れるかもってところまではたどり着けたかな。毎日、「うーん」って頭を抱えてる状態ですが、それはこの作品が決してハッピーなストーリーじゃないからだ!とも感じていて。
というのは、以前、ハッピーな作品をやった時、かなりそこに引っ張られちゃったんですよ。体は疲れてても走り出したり、食欲も増して朝からご飯を3杯くらい食べたり。で、終わった途端に食べなくなるんです。だから、テンションがそのお芝居になっちゃうんですね。そういう性格なので、今回もちゃんと戯曲が分かってからじゃないと、役が体の中に入ってこないのかなって。
――だとすると、今回の役が入ったら大変なことになりそうですね(笑)。
はい、どうなるんだろう(笑)。でも、そういう自分の未知数を広げていきたいという思いもあります。私が周りから持たれるイメージって『素直で明るい子』というのが多いんですが、一方でとんでもなく変な人と思われがちな面もあるんです。『生駒ちゃんって天然だね』ってよく言われたりして。『この人は何を考えて、こんな行動をしてるんだろう』って人に思わせてしまうような、“謎”がある一面を役に生かせたら、面白くなるんじゃないかなと思います。単なる嘘つきのお姉さんにしか見えない、ということだけは避けたいと思っています。
「カメレオンズ・リップ」
4月2日(金)~
シアター1010、シアタークリエ他、福島、大阪、愛知、新潟にて上演