“朝ドラ”こと連続テレビ小説「おちょやん」(NHK総合ほか)が、本日5月14日に最終回を迎えた。最終週「今日もええ天気や」では、ラジオドラマ出演をきっかけに人気俳優となった千代(杉咲花)が、別れた一平(成田凌)と一回限りの再共演、一平の不倫が元で離婚したふたりが演劇を通して負の感情を水に流した。喜劇俳優を題材にした「おちょやん」は劇中劇がふんだんに挿入され、演じる側には従来の朝ドラ以上に高いスキルが求められたといえるだろう。難しい課題をやり遂げた杉咲花の実力を、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説する。(以下、一部ネタバレが含まれます)
最終回は千代の人生と重なる“人情喜劇”
半年にわたり放送された「おちょやん」のクライマックスは、離婚した千代と一平が一回限りの再共演。
一平が若い劇団員との間に子どもを作って離婚することになったとき、千代は芝居の本番でセリフに詰まってしまった。
これまでどんなことがあっても持ち前のガッツと機転で舞台のアクシデントを乗り越えてきた千代が芝居を続けることができなくなったのは、よっぽど精神的にダメージを受けていたのだろう。
千代が失意のまま道頓堀を去ってから約2年。ラジオドラマで復帰した千代は人気者になる。そして亡くなった父テルヲ(トータス松本)と継母・栗子(宮澤エマ)の孫で千代の姪に当たる春子(毎田暖乃)を養女にして人生の再出発をしていた。
新たな生活にも慣れてきた頃、鶴亀新喜劇に特別に出てほしいと頼まれ、悩んだ末、承諾。「たとえ1日でもやるからには手ぇ抜けへんで」「望むところだす」と一平と千代は長年の遺恨を捨てて俳優として対峙する。
演目は、千代が芝居を止めてしまった因縁の芝居「お家はんと直どん」。かつて愛し合いながら、ちょっとしたすれ違いで別れてしまったふたりが、歳月を経て再会する話で、千代と一平の人生とも重なって見えてくる。
いろいろな出来事に悔し涙にくれたこともあったけれど、お互い別々の道で、仕事も順調、それぞれの家庭をもって前向きに生きていくことを噛みしめる。人情喜劇を見るような味わいだった。