第47回放送文化基金賞の贈呈式が6月30日、東京會舘で行われ、番組部門<テレビエンターテインメント番組>で奨励賞を受賞した「ガンライザーTV」(TVI)のスタッフが登壇。「賞というものには縁遠いエンターテインメント番組なので…」と恐縮つしつつ、感謝の思いを述べた。
2011年の東日本大震災で多大な被害を受けた岩手で、「子どもたちに元気と笑顔を!」を合言葉に誕生したローカルヒーロー「鉄神ガンライザー」シリーズ。同局の子ども向け番組「らどんぱ!」の1コーナーとしてスタートし、2019年から特撮ドラマに旅コーナーやクイズコーナーを加えた30分番組となった。
現在では、県内のステージショーや握手会で「岩手の小学生でで知らない子はいない」と言われるほど人気となったガンライザー。シリーズには、岩手出身の中田勇樹、鈴木裕樹、志田友美、戸塚純貴、小松彩夏、浅沼晋太郎、加村真美のほか、須賀貴匡、唐橋充ら特撮ファンに馴染みの面々、片桐仁、ガッツ石松らも出演している。
受賞した放送回は、震災から10年の節目にあたり、ガンライザーの番組が始まった経緯や番組への思いを、デザイン・造形の海老名保氏、テーマ曲「鉄の約束」を歌う森口博子ら関係者のインタビューを交えて構成する内容。
「胸にさんさ太鼓、両肩に南部鉄瓶が光る鉄神ガンライザーは東日本大震災を機に誕生した岩手の特撮ヒーロー。震災後に子どもたちが楽しめる番組を作ろうと、ゼロから企画を立ち上げ、10年も続く長期シリーズへと育てた。この番組の成長そのものが地域の復興の歩みと重なっている」ことが受賞の理由となった。
脚本・演出・プロデューサーを務める廣嶼文樹(ひろしま・ふみき)氏は、「なかなか…今チラリと(30秒ティザー映像を)見てお分かりかと思うんですけど、賞というものにはおよそ縁遠い、いわゆるエンターテインメント番組ですので、受賞の連絡を頂いたときは本当に驚きましたし、本当に名誉に思っています」とあいさつ。
「このガンライザーというのは、私も震災取材を現地でずっとやっておりましたけど、その中で、やはり子どもたちを笑顔にしたい、エンタメの力、ヒーローの力で元気にしたい、そんな思いで始めた企画です」と誕生の経緯を語る廣嶼氏。
「とはいえ、我々ドラマというものを制作したことは全くありませんし、出演者もオーディションで演技経験のない人を集めて始めるという、結構無謀なスタートだったものですから、最初は上手く行かず、SNSですごく叩かれたのを覚えておりますけど(笑)。“岩手の恥だ”なんて書かれたこともあったんですが…」と、今となっては意外な状況を告白。
「それが2年、3年やるうちに風向きが変わりまして、震災から10年という節目の年にこれほど大きな賞を頂いたということは、本当にスタッフ一同うれしく思っております。これを励みにこれからも頑張っていきたいと思います。どうもありがとうございました」と感謝とともに締めくくった。
その他、企画・主題歌製作の千田亨氏も登壇した。
◆取材・文=坂戸希和美