清原果耶と共演した伝説の「透明なゆりかご」
蒔田にとって、若くして子供を生む役は「朝が来る」が初めてではない。
清原果耶が主人公をつとめ、安達奈緒子が脚本を書いた「透明なゆりかご」(2018年、NHK総合)の第2話でも蒔田は高校生で出産する役を演じている。
同作は、清原演じる産婦人科の看護助手が人それぞれの妊娠や出産を通して命の尊さに触れていくドラマで、蒔田は赤ん坊を捨ててしまう高校生を演じた。
当初、主人公はその態度を責めるが、なぜ家からとても遠いところにある産婦人科の前に捨てたのか彼女の葛藤を想像し、単なる悪と断罪できない、生きる上でぶち当たるどうしようもない人間の業のようなものに思い至る。
主人公をそう思わせる蒔田の芝居が迫真。ひとりで子供を生む場面、それを自転車に乗せて猛進する場面、主人公と対峙する場面……どれにも大きな質量があった。
にらみ合う清原果耶と蒔田彩珠の表情や、同じ道をそれぞれが自転車で全力疾走するときのパワーのぶつかりあいが近年指折りの名場面である。
「おかえりモネ」の蒔田と清原の再共演は、このときの生きるとは何かを問うふたりの、激しく濃密な芝居をもっとたっぷり時間をかけて再現する試みのようにすら感じる。
地元に残ることを選んだ者、地元の役に立つことをまだ模索している者、各々の立ち位置をきちっと示し合う、二大“十代演技巧者”対決という贅沢なものになっている。
余談だが「透明なゆりかご」の第2話には「モネ」で汐見湯の大家さん菜津役を演じるマイコも出演している。