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髙嶋政宏「俳優と料理人の仕事はちょっと似ているかも」 芝居で大事なのは“客観性” <3週連続インタビュー:第3回>

2021/09/03 16:00

芝居で大事なのは“客観性”「要は“できればいい”世界」


数々の舞台を経験した髙嶋が語る、芝居、演技へのこだわりとは 
数々の舞台を経験した髙嶋が語る、芝居、演技へのこだわりとは 撮影=山田大輔

鹿肉しかり、今回の放牧豚しかり、「ELEZO」は、徹底したこだわりをもって食材づくりに取り組んでいるが、では、俳優・髙嶋政宏は、どんなふうに“ものづくり=芝居”をしているのだろうか。作品とのファーストコンタクトは非常にシンプルだった。

「僕、舞台とかのお話をいただいて、出演を決めるときって、台本を読まないんです。誰が脚本を書いて、誰が演出して、タイトルは何、で『これ面白そうだな』って思って、出るって決めちゃう。そのあと初めて台本を読んで愕然とするときもありますよ。えー、こんなにセリフいっぱい…って(笑)。でもほとんどハズれてないんです」

そして、究極の答えにもたどり着いた。

「どんなにすごいセンスの持ち主でも、役者はセリフを覚えていなかったらアホ扱いなんで。寝ないでセリフを覚えてても、朝まで飲んだくれてても、『できればいい』っていう世界。それしかない。“何となく”はないんですよ。そこですよね、ポイントは」

若い頃は、事務所の色や風潮にとらわれ、“勘違い”もしていたと振り返る。そんな中、舞台「王様と私」(1998年)に出演した際、演出家に言われた言葉が髙嶋に突き刺さった。

「今もなんですけど、事務所が東宝芸能なので、20代の頃は、最初は三船敏郎さんとか高倉健さんに憧れてたし、周りからも『男は黙って、だぞ』みたいに洗脳されていたんですよね。あんまりしゃべるな、って。だから、ボソボソしゃべったり、自分の感覚でしゃべったりすればいいと変な勘違いをしてたんです(笑)。でも、役は毎回違うし、舞台だったら内にこもっているとお客さんには全然通じないんですよ。『王様と私』の演出家の先生に『いや~、非常に勢いがあっていいんだけど、今の君の演技だと何言ってるか分からないし、内にこもってたら、お客さんに何も伝わらないから』って稽古場で言われて。それで目の前が真っ暗になりました。『そうかぁ…今まで映画とかドラマの撮影で、(自分の)内にガーッと入ったら気合入ってるように見えたけど、それだけじゃダメなんだ』と。自分でずいぶん準備してきたつもりが、何も準備できてなかったんだなぁ、って。そのあと、美輪(明宏)さんの舞台に出るようになったら、もっとですよ。『この声はこのトーンで! 首の角度こう! 足の位置これ! 体の角度はここ!』とか。すごく厳密なので、ずいぶんと大変でしたけどね」

「何よりも、視聴者や観客がどう感じるか、それがすべて」と髙嶋は言う 
「何よりも、視聴者や観客がどう感じるか、それがすべて」と髙嶋は言う 撮影=山田大輔

さまざまな経験を経て、一番重要なのは「客観性」だと気づいたという。とにかく何よりも“どう見えているか”ということだけが本質なのだ、と。それをずっと学んできた。

「それにはもう、ただただ信じられる人と、現場で作っていくしかない。そして、お客さん、視聴者がどう感じるかがすべてなんですよね。以前、ミュージカルのときに風邪ひいちゃって、声が出なかったことがあって。結構高いキーが多い作品だったんですけど、全部1オクターブ下で歌って、『ダメだな、こんなことじゃ』って思ったら、楽屋口でファンの方が『今日の役、重厚でした!』って(笑)。そんな風に助けられることもありますね」

また、20代の頃には、疑り深くなって、悩みすぎていたのだとか。

「監督がOKって言っても『今のは本当はダメなんだけど、アイツだったらこの程度かな、っていうのでOK出してんじゃないのか…?』とか、そんなことばっかり考えてましたね。そういう俳優、意外と多いですよ。冗談のつもりで監督が言ったのを真に受けて、『俺のことバカにしてんだ』って陰にこもっちゃうとか。いろいろあるんです(笑)。俳優って非常に微妙な感情の職業なので、ちょっとしたことで被害妄想になっちゃう。でも最近は、いま自分にできる精一杯のことをやったし、もう監督がOKって言ったらOK。そんなことより次のシーンのこと考えないと、って。そういう心にようやくなりましたね」

下に続きます
<Profile>
たかしま・まさひろ=1965年10月29日生まれ、東京都出身。B型。
1987年に映画「トットチャンネル」で俳優デビュー。以降映画やテレビドラマ、舞台等で幅広く活躍。
2018年には、自身について赤裸々につづったエッセイ「変態紳士」を発売し、話題に。
出演舞台「醉いどれ天使」の開演を9月5日(日)に控える。

舞台「醉いどれ天使」
9月5日(日)~21日(火) 東京・明治座
10月1日(金)~11日(月) 大阪・新歌舞伎座
原作=黒澤明、植草圭之助/脚本=蓬莱竜太/演出=三池崇史
出演=桐谷健太 高橋克典 佐々木希 田畑智子 篠田麻里子 髙嶋政宏 ほか
公式HP: https://www.yoidoretenshi.jp/

<取材協力>
エレゾゲート (ELEZO GATE)
東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 3F
店舗サイト: https://www.toranomonhills.com/toranomonyokocho/1003.html

株式会社ELEZO社
公式サイト: http://elezo.com/

スタイリスト=井嶋一雄(Balance)
ヘア&メーク=TOYO
衣装協力=HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE

画像一覧 19

  • 髙嶋政宏×グルメにまつわるインタビュー。第3回は、俳優・髙嶋政宏が考える芝居の本質とこだわりを聞いた 
  • 【写真を見る】締めを飾ったのは、髙嶋も大絶賛の「放牧豚のロースト」 
  • ELEZO放牧豚のハムとサラミ 
  • ELEZO放牧豚のロースト 
  • 髙嶋政宏 
  • 数々の舞台を経験した髙嶋が語る、芝居、演技へのこだわりとは 
  • 髙嶋政宏 
  • 髙嶋にとってELEZOのシャルキュトリーは、思い出と衝撃の味 
  • 「何よりも、視聴者や観客がどう感じるか、それがすべて」と髙嶋は言う 
  • 髙嶋政宏 
  • こだわって飼育された放牧豚の肉は、旨味がたっぷり! 
  • 分厚い肩ロース肉をじっくり、こんがりと焼いていく 
  • 髙嶋政宏 
  • 髙嶋政宏 
  • 髙嶋政宏 
  • 髙嶋政宏 
  • 髙嶋政宏 
  • 食事中の髙嶋はまさに“一食入魂”。素晴らしい料理の数々をただただじっくりと味わっていた 
  • 生き生きと語る髙嶋の言葉には、芝居への愛、そして食への愛があふれていた 

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パレ・ド・Z〜おいしさの未来〜

出演者:高嶋政宏 田口トモロヲ つみきみほ 

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