YouTube“共存”時代 気軽で満足感ある動画からドラマへ誘導
コロナ禍での“巣ごもり需要”増加以降、YouTubeの利用者数は伸び、2020年の9月時点で日本国内利用者数は約6500万人と国民の約半数がYouTubeを利用。また、テレビ画面でYouTubeを見る人数も1500万人突破と、いよいよテレビとYouTubeの垣根はなくなってきており※、テレビ局各社も、テレビとYouTubeの共存方法を探っている。
(※Think with Google「月間6,500万ユーザーを超えたYouTube、2020年の国内利用実態──テレビでの利用も2倍に」より。約1年前のデータなので現在はさらに増えていると思われる)
「ハコヅメ」の事例では、日本テレビがドラマ専門チャンネルを立ち上げ、無料で見られるプラットフォームのYouTubeをPRに最大限に活用。「通常点検」の再生数530万回などの数字を見るに、視聴層へのアピール効果は絶大で、視聴率にも少なからず貢献しているだろう。
では、なぜ同作の施策が飛び抜けて成功したのか。それは、気軽に見ることのできる長さの動画で満足感を与え、なおかつ動画視聴がドラマの面白さを伝えることに直結しているからだ。
現在、エンタメ作品はユーザーの可処分時間の奪い合いとなっている。テレビドラマのような、1時間じっくりと見る必要があるコンテンツは予備知識なしでは視聴ハードルが高い。
「ハコヅメ」のノーカット動画は、多くが5分ほど。YouTubeの関連動画や、SNSのシェアで見かけたときに「ちょっと再生してみよう」という気持ちにさせる長さである。
なお、人気がある出演者たちのオフショット動画も短時間動画の定番ではあるが、ドラマ視聴への誘導効果では、今回のノーカット動画に軍配が上がるだろう。オフショット動画は出演者たちの魅力や現場の裏側を楽しんでもらうためのもので、ドラマの内容と直結はしていないからだ。役者がドラマの番宣で出演したバラエティ番組を見たからといって、そのドラマを見たくなるとは限らないのと同様である。(もちろん作品の知名度向上には役立つので、一定の効果があることは間違いない)
つまり、「ハコヅメ」の短時間ノーカット動画は、気軽に見た動画をきっかけにドラマを見たくなる、というスムーズな視聴誘導をすることができるYouTube施策なのである。同作の成功を機に、今後ドラマPRにおける“テッパン策”の一つとなっていくのではないだろうか。(文=菊池正和)
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