エンタメ好きとしてチェックしておきたい話題の本やマンガ・アニメ情報を「ダ・ヴィンチニュース」の協力を得てお届け。今回取り上げるのは、『謎解きよりも大変だ(1)』。高校の「謎解き愛好会」に所属する主人公たちが繰り広げるドタバタを描いた青春謎解きストーリーの見どころを紹介。
現在、クイズ番組は多くのテレビ局でレギュラー化するほど人気であり、どうやら我々は「謎解き」が大好きらしい。それはギリシャ神話にも「スフィンクスのなぞなぞ」の逸話があるように、古来から不変のようだ。もちろんそのような人気コンテンツを、漫画のネタとして見逃すテはないのである。『謎解きよりも大変だ(1)』(遠藤準/講談社)は、高校の「謎解き愛好会」に所属する主人公たちが繰り広げるドタバタを描いた青春謎解きストーリーだ。
主人公の一ノ瀬瑛太は高校に入学してすぐ、「謎解き愛好会」の会長である十二野早妃から入会の勧誘を受ける。早妃と瑛太だけの愛好会だが、学園だけでなく街中でも評判の美人で文武両道の才媛でもある早妃とふたりきりの状況にいろいろ期待してしまう瑛太。しかしこの早妃、かなりの変わり者としても有名だった。とにかく「謎解き」が大好きで、ところ構わず自作の謎解きを瑛太に出題してくるのだ。ちなみにこの作品の謎解きには監修が入っているので、実にしっかりとしたものになっている。どんなものが出題されたか、例を挙げてみよう。
【問題】眼鏡を外して暗号を解け。
「ネモイチネーターシタアケロ」
早妃いわく「ベリーイージー」な謎解きで、制限時間は10分である。当然、問題文の「眼鏡を外して」という部分が重要だ。解答は漫画で確認してもらうとして、このような謎解きが早妃から瑛太へ出題されていくことで物語は展開していく。もちろん、ただ謎を解くだけで話は終わらない。早妃はちょっとドジなところがあり、問題文にミスがあったり、用意した仕掛けがトラブルを起こしたりと、なかなかスマートに謎解きができないのだ。その都度、瑛太はヒドいめに遭うのだが、悪いことばかりではない。そのトラブルにより早妃との距離が近づく展開も多く、まさにラブコメの王道展開だ。
ところで、なぜ早妃は入学早々、瑛太に声をかけたのだろうか。早妃いわく「私と君は生まれた時から謎解きをしあう運命」であり、そこには明確な理由があるのだった。実は早妃と瑛太には名前に重要な共通点がある。「一ノ瀬瑛太」と「十二野早妃」──そう、ふたりの苗字には数字が入っているのだ。勘のよい人なら、この数字がトランプの「A」と「Q」に対応していると気づくだろう。そしてふたりの名前には「瑛」と「妃」が──。つまりふたりの名前は「Q&A」にちなんでいたのである。なるほど、謎解き漫画にふさわしい仕掛けだ。
多彩な謎解きが用意され、それを解く楽しみは本作の大きな魅力である。とはいえ、肝心の漫画がおざなりかといえば、決してそんなことはない。謎解きを介して、瑛太と早妃の関係が少しずつ進展していくさまは、読んでいて非常に好感が持てる。さらに瑛太は野球少年であったが、故障により夢が絶たれたようなことも語られており、今後のストーリーにも関わってきそうな雰囲気だ。まあそれでも早妃と瑛太のトラブル喜劇を描いたラブコメなのは変わりなく、新入部員なども加わって、どのような物語が紡がれていくのか期待したいところだ。
文=木谷誠
謎解きの要素に加え、登場人物の関係性や背景など漫画としての完成度も注目される「謎解き愛好会」。話題の青春謎解きストーリーをチェックしてみよう!
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