ビッケブランカが「FATE TOUR 2147」ツアーファイナルを開催 アンコールにはサプライズゲストが登場
「次はかっこいいゾーンに入らせてもらおうかなと。目一杯、かっこつけさせていただきます」と言って歌ったのは「FATE」と「ミラージュ」。どちらも音源よりもハードロックテイスト強めなバンドアレンジで魅了し、このバンドの多様さとタフさを見せつけられる。
アルバムのタイトル曲である「FATE」では、「自分らしく」「ありのままで」といった近年音楽、映画等の作品やあらゆる場面で取り上げられるテーマが描かれているが、その描き方はビッケブランカらしく一筋縄ではいかない。宮沢賢治「よだかの星」を曲のモチーフとした日本文学の要素と打ち込みサウンドと鳥の鳴き声を混ぜ合わせてしまうような意外性に満ちている。
「アルバム『FATE』、いろんな曲を収録することができました。ここから1曲ずつ、僕のお気に入りの曲をしっかり聴いていってほしいなと思っています」と言って演奏したのは「夢醒めSunset」「ポニーテイル」「オオカミなら」「Divided」。
「夢醒めSunset」の“誰も意味を探さない この瞬間は戻せない”という印象的なフレーズは、意味や理屈ばかりを追い求めてしまう現代人にとって、特に意味も生産性もない時間がどれだけ尊いかを見事に切り取っている。
夕焼けが綺麗な海辺の景色が浮かんでくる曲ではあるが、ここLINE CUBE SHIBUYAで演奏されると、ライブの一瞬一瞬がミュージシャンにとってもオーディエンスにとっても、言葉で表せるような理屈や理由を一切抜きにして、人間の心に作用をもたらす尊い時間であることが表現されているようだった。
本間昭光をアレンジャーに迎えたJ-POP王道サウンドの「ポニーテイル」と「オオカミなら」から、ビッケブランカがフェイバリットに挙げているエルトン・ジョンやビリー・ジョエルなど時代を超えて愛されているUS、UKのポップススタンダードのような存在感がある「Divided」へとつなぐビッケブランカにはまた憎いと感じてしまう。
そして、「Divided」と同じくピアノ弾き語りで歌い始めたのは、ビッケブランカにとって代表曲の一つでもある冬のバラード「まっしろ」。
クライマックスに入る前のMCでは、コロナ禍で実施したこのツアーを振り返って「みんなの顔、1人1人見えてるんですよ。マスクで見えてないように思うかもしれないけど、思ってくれてること、感じてくれてることが全部分かるんですよ」とオーディエンスに伝えた上で、制限や規制がなくなった日常で今以上に熱気に包まれた状態でライブができる日を、ミュージシャンたちがどれほど待ち望んでいるかを代弁。
「2022年もたくさんの音楽、僕を筆頭に、全ての音楽を愛してもらえたらいいなと思います。どうぞよろしくお願いします」と、全てのミュージシャンや音楽シーンへの愛を語る。
最後は、バイオリンの2人も立ち上がった状態で「Slave of Love」「Ca Va」「ウララ」「天」を演奏し、壮大な音の重なりで会場を満たした。
ビッケブランカは、バイオリンの旋律とダンスミュージックのビートや、EDMとJ-POPの展開など、本来セオリーが違うものを組み合わせることで誰も予期していないサウンドスケープやライブでの景色を立ち上がらせ、オーディエンスを感動させる。
さらにラストの「天」では、明るくて至福感のあるトーンで包みながらも、人生の切なさや儚さを大きく歌い、だからこそ聴き手を現実と向かい合わせながらも希望のある次の章へと送り出すようだった。