「最低限のリアリティーを持たせないといけない」
――今回お二人が演じたのは特殊なキャラクターだったように感じますが、どのように役作りをしていったのでしょうか?
林:映画の中でも冒頭で生い立ちについて、子供の頃のエピソードだったり、家庭環境だったりと、どういった経緯で高坂が極度の潔癖症になってしまったのかということが説明されていましたが、見てくださる方に、彼はそういう人生を歩んできたんだなと自然と思っていただけるように、人物像の掘り下げを徹底しました。これはいつもと同じ準備なのですが、いつも以上にしっかりと心掛けました。
小松:私が演じた佐薙は原案小説では金髪なのですが、この映画では黒髪でやらせていただきました。この作品は“虫によってもたらされる恋”という特殊な話で、そこにインパクトがありすぎて、観ている方も「虫ってどういうことなんだろう…?」という疑問から入っていくと思うんです。そこで、自分が金髪+制服というビジュアルだと年齢的にもコスプレ感が出て、世界観を邪魔してしまうのではないかと。
いろんな要素が盛り盛りすぎるとよくわからなくなってしまうし、柿本監督のCGや音楽で作り上げる世界観が全部流れていってしまう気がして怖かったんですよね。もちろんいろいろな意見があるとは思うんですけど、監督もスタッフさん方も、佐薙の内側にある弱さだったり孤独さだったり、そこをちゃんと描きたいと、同じ意見だったので、ビジュアルを完璧に再現することはしませんでした。
林:確かに。僕は脚本を読んだときに、ファンタジーラブストーリーだけれども、現代社会において身近に感じる方もたくさんいらっしゃるだろうなと思う内容かつ役どころだったので、最低限のリアリティーを持たせないといけないなと感じました。だから、まずそこのベース作りから入りましたね。
小松:リアリティー大事ですよね。だから、台本のセリフを見て「ああ…これを言うのか…」というのも正直ありましたし、自分がその気持ちにちゃんとなれるかという不安もありました。全てを言葉で説明することはしなくていいかなと思って、監督と話し合い、重要なセリフだけを残してもらって、ほかは言葉ではなく表情や行動で伝えることにしようという話でまとまりました。引いて足した感じですね。
ほか、感情がどんどん激しくなったり、言葉尻りだったり、「君」と呼ぶなどの違和感があるセリフだったりは、全部“虫”のせいにして。実際にそういうお話でもあるので、“虫”がそういうことを言わせたり行動させたりしているという風に、自分の頭の中で変換すれば、いろいろと腑に落ちました。ちょっとした心情や表情の変化とか、繊細な部分はちゃんと丁寧に描きたいなと。でも、湖のシーンとか感情が剝き出しになるところは、全部出さなきゃと思っていたので、キャラ作りは結構大変で苦労しましたね。
11月12日(金)公開
出演:林遣都 小松菜奈
井浦新 石橋凌
監督:柿本ケンサク
脚本:山室有紀子
原案:三秋縋「恋する寄生虫」(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
主題歌:Awich「Parasite in Love」(ユニバーサル ミュージック)
配給:KADOKAWA
公式サイト:koi-kiseichu.jp/
(C)2021「恋する寄生虫」製作委員会