ひとり「佐久間(宣行)さんがそういう存在(師匠のような)ですかね」
――“師弟関係”が描かれた作品ですが、それぞれ師匠のような存在の方は?
柳楽:僕は初めて舞台に立たせてくださった演出家の蜷川幸雄さんです。それまで映像の作品しかやったことがなかったんですけど、舞台での演技の仕方を厳しく教えていただいて、演技の楽しさと厳しさをあらためて気付くきっかけにもなりました。
――大泉さんは?
大泉:基本、師匠はいないんですけど。大学で演劇研究会に入って、サークルの仲間で演劇をやっていた中で、一つだけ社会人演劇団の「劇団イナダ組」に僕は出させてもらってました。その時の稲田博という方が舞台での“立ち方”みたいなものを、教えてくれました。少しダメな方なんですけどね(笑)。僕らの舞台を見に来て、アンケートを書いてくれるんです。師匠っぽく1行だけバーン!と。「役者の汗が足りない」って書かれたつもりだったと思うんですけど、漢字を間違えていて「役者の“汁”が足りない」になってたりするんです。そんな男です(笑)。
ひとり&柳楽:ハハハハ。
大泉:そんな人ですけど、僕が何も分からない時にいろいろ教えてもらいました。
――劇団ひとり監督はどうですか?
ひとり:師匠っていうよりも感覚的には“お兄ちゃん”みたいな感じなんですけど、「ゴッドタン」という番組の演出の佐久間(宣行)さんがそういう存在ですかね。「ゴッドタン」以前にもいろいろバラエティーをやらせてもらってましたけど、全く違うバラエティーなんです。それまで一度も開けたことのない引き出しをいっぱい開けましたね(笑)。あの番組に出たことで芸風もかなり変わったと思います。
――他の芸人さんもそうですけど、いろんな引き出しや扉を開けてくれる番組ですよね。
ひとり:そうですね。中には、いくら引き出しを開けても空っぽっていう方もいましたけど(笑)、僕はすごく感謝しています。
――では、この中でコンビを組むとしたらどちらと?
柳楽:僕は大泉さん。2人ともリードしてくれそうですけど、映画で師弟コンビを演じましたから。
大泉:ありがたいねぇ。僕はね、劇団さんと組んだ方が楽だと思うんです。でも、どっちがおいしいおいしくないで揉めるんじゃないかと。そう考えると柳楽君ですね。柳楽君は言うこと聞いてくれそうですし(笑)。
ひとり:僕は大泉さんですね。大泉さんと舞台あいさつをやったら、すっごく頼り甲斐があります。こっちは何も言わなくても大丈夫なくらいいろいろ話してくれるので楽できそう。
――もう年末ということで、2022年の目標を。
柳楽:30歳の時に「浅草キッド」の撮影をして、この作品を撮ったことで「30代も頑張るぞ!」って、でっかいエンジンを積んだ気分になれました。それぐらい自分にとって特別な作品になったので、2022年もその勢いでいろんな作品を頑張りたいと思います。
大泉:カッコいいこと言うねぇ。僕も大量の燃料を積むことができたので。
ひとり:すぐに乗っかる! さっきの質問ですけど、コンビを組むなら柳楽さんがいいです!
大泉:柳楽君のコメントがカッコよかったから乗っかりました(笑)。分かりました! 今年と同じぐらい稼げればいいかなって思っています!
ひとり:何それ?(笑)
大泉:ほら、途中で変なツッコミ入れるから最低な答えになっちゃったじゃないですか。
――劇団ひとり監督は?
ひとり:僕は本業がバラエティーで、テレビが主戦場なんですけど、こういう作品づくりみたいなこともどんどんやっていきたいですね。ハイブリッドエンジンを積んだような気分で。
大泉:おい、乗っかり過ぎだろ!(笑) じゃあ僕も環境に優しい水素エンジンでお願いします。
ひとり:もういいから(笑)。
――では最後に代表して、劇団ひとり監督から読者に向けて見どころとメッセージをお願いします。
ひとり:はい。狙ってたわけじゃないんですけど、今、“昭和レトロ”が流行ってるんですよね。あと、おぼん・こぼん師匠の仲直り回の番組(「水曜日のダウンタウン」TBS系)が「ギャラクシー賞」を受賞したんですけど、番組内で「浅草キッド」が流れてましたし、ちょっといい風が吹いてるなって思ってます。ぜひ見て楽しんでください。
◆取材・文=田中隆信
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