一人でもいいから、誰かの心に深く刺さるものを作りたい
──『料理の鉄人』もまた、作り手の遊び心が感じられる番組でした。
「当時僕は『5年後』(’92~’93年フジ系)という深夜番組に参加していたんですけど、その『5年後』のチームに、突然料理番組の発注が来たんですよね。石原隆さんが『今までにない料理番組を作りたい』といって、料理番組なんてやったことがない僕らに声を掛けてきたわけです。
まず、前提として “料理バトル”の番組をやろうという話があり、天才演出家の田中経一さんが“キッチンスタジアム”というセット図を書いてきて、それが全ての始まりでした。ただ知らない人同士が料理の腕を競い合っても面白くない。そこで、腕のある料理人を3人お呼びして、“鉄人”というキャラクターになっていただいて、毎回いろんな料理人が彼らに挑戦する、というフォーマットにしました。プロ野球も、巨人軍という圧倒的に強いチームがいて、巨人ファンとアンチ巨人ファンがいるから野球界全体が盛り上がるわけで、それと同じ理屈ですね」
──結果、「料理の鉄人」は15%以上の視聴率を連発する大人気番組となったわけですが、小山さんは“視聴率”というものをどのようにとらえていますか?
「あんまり気にしないんですけど、高かったら高かったで、それはやっぱりうれしいですよ(笑)。ただ、本来の僕の資質としては、6~7%くらいの番組をやるのが得意だと思ってるんですね。だから、テレビ局から『視聴率は6%くらいでいいから何か企画を考えて』と言われたら、『じゃあ素晴らしい番組を作ってみせますよ』と(笑)」
──小山さんが番組を企画するときに最も強く意識していることは何ですか?
「まず、自分自身が興味があること。やっていて楽めるものかどうか、ですね。そして、それが誰かを幸せにできるものかどうか。多くの人に支持されるよりも、一人でもいいから、誰かの心に深く刺さるものを作りたいと思っています。
先日亡くなられたおヒョイさん(藤村俊二)がストーリーテラーを務めてくださった「東京ワンダーホテル」(’04年日本テレビ系)という、僕が企画・脚本を担当したドラマがあるんですが、先日おヒョイさんを偲ぶ会を開いたときに、第1回の放送を当時のスタッフたちと見てみたんです。そうしたら、当時の自分が何に興味を持っていたかが全部丸分かりで、すごく面白かった。レストラン『スガラボ』の須賀(洋介)くんとか、BEAMSの設楽(洋)さんとか、今も深く付き合っている人のほとんどが出演しているし、後の自分の仕事にもつながるアイデアの素のようなものが散りばめられてる。“あれがあったから今の自分があるんだな”ということが再確認できて、この作品をやってよかったなと改めて思いました」