そんな、心優しき常連客・渡会がまるで別人のように怒りをあらわにする姿を『メイヨーエン』の店主・陽子は一度だけ見たことがある。相手は、決まって毎月10日に店に現れる高校生くらいの女の子なのだ。
一方、スーパーアクティブな引きこもり生活を送る開は、毎日のように見かける一人の女にいら立ちを覚えていた。名前は知らないが、近所の喫茶店の店主であることは分かっている。そして、この女がとんでもない“嘘つき”であることも。
そんな中、宙は路上で見覚えある男とすれ違う。宙は小学生の時に初めて会ったその男・開に特別な興味を抱いていた――。
「できるだけ自分の素を見てほしい」
2週目のストーリーの始まりに立つ宙。演じる奥平は、2020年に映画「MOTHER マザー」のメインキャストに大抜擢され、デビュー作にして名だたる映画賞の新人賞4冠を達成した注目俳優。今年も、映画「マイスモールランド」(5月6日公開、NHK BS1にて3月24日にドラマ版が放送)をはじめ多数の作品に出演している。
映画界が注目したのは、奥平の嘘のない素直な感情表現から生まれる演技。インタビューでも「オーディションの時に自分を取り繕うことが好きではなく、できるだけ自分の素を見て判断してもらいたいと思っているので、失礼のない範囲でできるだけフラットにいるようにしています」と話していた奥平、その自然体のたたずまいが見る者の視線を惹きつける。
後悔のない人生を送りたいなら、自分を突き動かす“衝動”を見つけるのが一番だ。10数日後に地球が滅亡するというあり得ない緊急事態の中、その衝動を探して日々を過ごす宙。その感情を、奥平が見たまま、感じたままの素直な感性で演じている。そんな宙のストーリーから始まる「サヨウナラのその前に―」第2週の物語を堪能したい。