マーベル・スタジオのオリジナルドラマシリーズ「ムーンナイト」(ディズニープラスにて独占配信)の最終回・第6話が5月4日に配信された。「ムーンナイト」は「アベンジャーズ」「スパイダーマン」「アイアンマン」シリーズ等と同じMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に属する作品。主人公であるムーンナイトはMCUの過去作に登場したことはなく本ドラマが初登場のため、MCU初心者でも抵抗なく見ることができる。マーベル作品といえば、ヒーロー達の活躍に胸を躍らせスカッと楽しめる内容を思い浮かべる方が多いと思うが、今作はかなり毛色の違う作品となった。ヒーロー要素とミステリー要素が融合した異色作を振り返る。(以下、ネタバレを含みます)
夜のビル群を飛び回りながら戦う
「ムーンナイト」の配信スタート前に公開されていたあらすじは以下のものだった。
――「ムーンナイト」は、複数の人格を備えたダーク・ヒーロー“ムーンナイト”が活躍する、MCU史上最もミステリアスなアクション・サイコスリラー。
主人公は、国立博物館のギフトショップで働く、穏やかな男スティーヴン・グラント(オスカー・アイザック)。夜通し悪夢にうなされ、身に覚えのない“狂気に満ちた残酷”な記憶に怯える日々を過ごしていた。
頭の中に響くのは“もう一人の自分”の声。コントロールできない凶暴な人格マーク・スペクターに支配され、彼に“ある力”が宿るとき、純白のスーツに身を包んだ闇のヒーロー“ムーンナイト”が誕生する。――
あらすじだけを読むと、確かにミステリアスではあるものの、“ダークヒーロー”を主人公とした作品だとすれば、そこまで突飛ではないように思える。
「正義か悪かの二元論では割り切れないヒーローが、様々な悩みを抱えながらも“本当の悪”と戦う作品」と予想した視聴者が多いのでは。実際、第4話の終盤まではそういう物語だったし、その部分だけでも十分クオリティの高い作品として成立していた。
オスカー・アイザック演じるスティーヴンが複数の人格を持つ苦しみに耐えながらムーンナイトに変身。“スカラベ”なるキーアイテムを巡り“悪のボス”アーサー・ハロウ(イーサン・ホーク)率いる謎の集団と戦うという王道の展開。
今作はエジプト神話をモチーフとしており「ムーンナイト」はエジプト神話の月の神・コンスの化身。“スカラベ”とは古代エジプトで神聖な虫とされていたスカラベ(=日本語でフンコロガシ)型のアーティファクトだ。
ダークヒーローを扱った作品らしく、人間の闇を感じるシーンや過激な場面が盛り込まれていた。第1話冒頭から、“謎の人物”がガラスの破片を大量に靴の中に入れ、その靴を自身ではいてカチャカチャと音を鳴らしながら歩き去って行くという、とてもヒーローものだとは思えない描写だった。
第2話から第4話の中盤まではアクション&アドベンチャーシーンが多く描かれる。ムーンナイトに変身した主人公と“他の人間からは見えない怪物”が夜のビル群を飛び回りながら戦うエキサイティングなシーンに興奮し、エジプトの遺跡を“インディー・ジョーンズ”さながらに探索する場面でワクワクする。世界を股にかけた物語に惹きつけられた視聴者も多かったのでは。
何が現実で何が妄想か
しかし、第4話の終盤に急展開。アーサー・ハロウに銃で撃たれたマーク(スティーヴン)が気を失い場面が一転。目が覚めると、そこは病院の精神科と思われるような場所。マークは担当医に「区別がつかないんだろう。何が現実で何が妄想か」と問われる。
院内には、これまでスティーヴンが出会ってきた人たちが入院中で、ムーンナイトはフィギュアとして登場。その後マークとスティーヴンが別の肉体で“対面”「こんなのありえる?」と2人で悩む。たたみかけるように、カバの顔をした神様が登場「どうも♪」と能天気な声でスティーヴン&マークに声をかける…という場面で第4話が終了する。
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