『流浪の月』を通じて築き上げた、松坂桃李と横浜流星との関係性
――ダブル主演を務めた、松坂桃李さんとの思い出に残るエピソードはありましたか?
桃李さんとは、文と更紗は再会しても喋らないシーンが多く、最後のほうになってようやく普通に笑って話せるようになりました。カットさてしまったのですが、電車に乗るシーンでは、数日後に撮影の終わりが近づいてたので、撮影外でもタメ口でお話して、文と更紗と呼び合ったりしました。
心の支えになってくれる距離感という意味では、違和感なく居てくれるのが松坂桃李さんでしたね。スタッフが誰も居なくても、そこに2人で居るという空気感を作ってくれた。一緒にいると居心地が良い人という印象です。
――更紗の婚約者である、中瀬亮を演じた横浜流星さんとのエピソードは?
流星くんとはお互い人見知りと言うこともあり、最初は更紗と亮君になれなかったです。「そんな人見知りや緊張なんかしてる場合じゃないよ」と李監督にずっと2人で怒られていました(笑)。
その分、流星くんとは撮影関係なくリハーサルを含めて関係性を作る時間をたくさん設けてもらいました。クランクイン前に2人で長野に1日遊びに行き、ハウススタジオを借りてスタッフさんもいない中、過ごしました。2人で心理テストしたり、夜ごはんを作ったりして、ひとつ屋根の下で一緒に生活してみるという距離感の時間を設けてもらった。
流星くんも居心地がよかったんですけど、割と更紗と亮君の距離感を保っていました。本当に楽しい会話は、割とすぐに終わったので。物語後半は、関係性としてほぼ話さなかったので、最初に2人でいっぱい話したという感覚ですね。
「自分を知ってもらいたい」という気持ちはない、役の表現の方が大事
――『流浪の月』は、「元誘拐犯」、「被害女児」という重いレッテルを貼られて進んでいく物語です。芸能人も時に、レッテルを貼られて、生きづらい世の中を感じることもあるのではと思います。広瀬さんが逆境に負けない為に心がけていることはありますか?
シンプルなことですが、自分が役を通さずにテレビに立たせてもらう場合は、どう思われても多少はしょうがないかなと思っています。表現者として、役に立たせてもらってるので、表現以外の自分を知ってもらいたいという気持ちがあまりないです。
自分の評価に神経質になるよりも、お芝居や作品を通して見てもらうことが嬉しい。ひとりの人間として思うことはありますが、それよりも表現の方が大事なんです。例えば、「こうなんです、違うんですよ」と反論する方法もあると思いますけど、そこまでして“見られ方”を気にしないです。
――逆に、広瀬さんが主張するときは、どんな時ですか?
私は自己表現が得意ではないので、人と話すときに自分の意見が言えなくて、グッと抑えてしまう。発信できる方々は、かっこよくて憧れる部分もあります。だけど、私はそれを出来るほど器用じゃないので、諦めています(笑)。主張したいときもありますけど、平和主義にいようと思うタイプです。
――最後に、映画をこれから観る人にメッセージをお願いします
『流浪の月』という作品はきっと観る方によって伝わることが違い、いろんな方の答えがあるんだと思います。それが何かのキッカケに繋がり、自分の中で見えていた世界が少し変わったり、自分自身を信じてみたり、皆さんの支えになる映画になったらいいなと。是非、劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。