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広瀬すず、「流浪の月」で直面したスランプと共に掴んだ表現者としての誇りとは<インタビュー>

2022/05/21 10:00

広瀬すず
広瀬すず 撮影=杉山慶五

元誘拐犯と、その被害女児。偏見と好奇の目で許されない2人の宿命は愛よりも切ない絆であり、新しい人間関係の旅立ちを描いた『流浪の月』(2020本屋大賞受賞のベストセラー小説)が待望の映画化となった。物語の主役でもある、被害女児という繊細な役、家内更紗を演じた広瀬すずに『流浪の月』に懸けた想いを語ってもらった。

元誘拐犯と、その被害女児。許されない2人をどう演じたのか

映画「流浪の月」より
映画「流浪の月」より (c)2022「流浪の月」製作委員会


――広瀬さんが日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞した『怒り』でご一緒した李監督から、『流浪の月』のオファーが届いた時に感じた率直な感想は?

呼んでくださることに「え?」という感じで。前回の『怒り』のときは、オーディションで抜擢していただいた理由を、「この感情を知っていると思って」と言われました。李さんを映画監督として、凄く信用していますが、ある意味怖いんです。全部を任せていただける現場でもありながらも、全部を見透かされる感じもあります。少しでも嘘ついて誤魔化すとピンポイントで全部的確に当てられたりします。

映画「流浪の月」より
映画「流浪の月」より (c)2022「流浪の月」製作委員会


――『流浪の月』は、10歳のときに誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗と、その事件の“加害者”とされた当時19歳の大学生・佐伯文の関係を描いた物語ですが、どのように作品作りは進んでいったのですか?

李監督の現場は、準備期間が特別多いです。『怒り』のときは割と李監督が力強く追い込んで、そこから反発精神を含めた感情で作ってくれたのですが。今作では、お互いの意見を言いながら、関係性をしっかり作りました。一人で抱えるではなく、桃李さんが演じた文や流星くんが演じた亮くんと自分達の中で触れ合った瞬間に伝わった感情を凄く大事に表現した作品でもありました。李監督は、私たちから生まれてくるものをずっと待っているスタンスでした。

――その分、演じる上で試行錯誤ができたと思いますが、広瀬さんの中で大事にしていたポイントとは?

流浪の月』は、いらだちや複雑な環境を細かい部分まで体感していないと表現できない感情が繊細に描かれています。自分の過去も含めて見られ方が決まっていて、感情を押し殺して意志を基本的に発さない生き方というか。我が強くなる瞬間は文や家族に対してだけ。そこだけをイメージしながら、役を作り過ぎずに演じていました。更紗が、「何でも慣れた方が楽ですよ」という台詞があるんですが、そういうときに対応する流し方は共感出来なくもない。私自身と似てない訳ではないんです。


――今回、“待っているスタンス”の李監督でしたが、言われた言葉で印象に残ってることはありましたか?

「もっと肌感覚として役を馴染ませ滞りなく演じてほしい」と言われたことがとても印象に残りました。「頭で考えても何も分からないから」とずっと言われながら、演じていました。経験が増えていくと、こなすだけでなく自分のスタンスが生まれると思いますが、いい意味でゼロにしてくれる現場でした。

「感情を流すクセに慣れていた」…どうしたらいいか分からない中で臨んだ

 
  撮影=杉山慶五


――広瀬さんは、『流浪の月』を撮りながら、スランプを抱えていたというお話を聞きましたが…?

お芝居に対して、フワフワしていて、感情が湧いてこないというか。変に自分が感情を流してしまう癖に慣れていました。演じていても違和感すらなかった。この6年でいろいろなことを経験したことで『怒り』のときと価値観やお芝居の感覚が今の自分が違うのがよくわかるというか。絶対に良くないなと思っていましたが、でもどうしたらいいか分からなくなる現象でした。

未だに、お芝居する際に怖い部分でもあるのですが、ずっとフワフワしていて人の感情に触れられなくなっていた。それをクランクイン前に李監督に伝えていました。「それじゃダメでしょう。どうするんだよ?」と返ってくるんですけど、そんな私を見て李監督もどうしたらいいか分からなくなっていた。

――そんな状態をどう乗り越えていったのですか?

それでも、なかなか「やってやるぞ」っていうモチベーションまでは持っていけずでした。
『怒り』のときもそうですけど、自分の感覚をいい意味で全部壊してくれるからこそ、何とかなるかなと思っていた。それが、想像以上に自分の抱えているものが頑固でなるようにならなかった。やっぱり触れられないものには触れられない。色々と考えていたのですが、李監督からも「頭で考えることじゃないと思う」とアドバイスされて、納得しました。

良くも悪くも一緒に作った作品として、「最後に後悔は無いよ」と言ってもらえたのですが、
今回、改めてその壁に当たっていましたね。

――葛藤を抱えた状況でも、広瀬さんの中で思い出に残っているシーンを挙げるとするなら?

台本にはなかったのですがカフェ「calico」の前に橋があって、その下に川が流れている場所を見つけて李監督が、「そこで撮影するぞ」と下に降りて。

何を撮るんだろう?って思ってたら、「そこで自由に動いてほしい。走ってもいいし、飛んでもいいし」と何してもいいからと。それで自分が思うままに感情を解放させていく表現を撮ったんです。それが凄く気持ち良くて、そのシーンで発散できたというか、一気に更紗として気持ちが楽になった。完成された映像をみて凄く綺麗で印象的でした。心の中の更紗を表現してるようなシーンで、台本に描かれてない分、余計にやりやすく自由な時間でしたね。

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