“刑事失格の推理マニア”鹿浜鈴之介(林遣都)
元県警捜査一課刑事だが今は境川署刑事課所属、しかも大きなヘマをして現在停職処分中。神童と呼ばれたのは小学生までだった。勉強はできるのにひどく要領が悪い。人付き合いも下手だった。
十五歳の時に家に引きこもり、本ばかり読んでいた。シャーロックホームズに憧れたのを皮切りに、ミステリー小説を読みあさり、結果、古今東西の凶悪犯罪オタクとなった。サッカーよりもアニメよりも、実際の凶悪事件が大好き。凶悪犯人に興味津々。
探偵になりたかったが、現実の探偵は浮気調査ばかりと知って刑事になった。ところが現代の刑事の仕事に推理する機会など、ほとんどなかった。実際に起こる事件は全然面白くない。今では監視カメラを見るのが刑事の主な仕事だったりする。
違う違う、思ってたのと違う。僕は凶悪犯罪に出会いたくて刑事になったのに。鈴之介はすっかりやる気を失ってしまった。もしかして僕が憧れていたのは刑事ではなく、犯人だったのではないか。なんてやばい考えまで頭の中をよぎりはじめていた。
「楽に生きていきたい。でも運命がそうはさせない…」馬淵悠日(仲野太賀)
境川署総務課職員。署内の警察官が安心して仕事に取り組めるようバックアップするのが仕事、というのが大義名分の部署。この時期は暑中見舞いはがきの作成、送付が忙しい。雑務も引き受ける。コピー用紙の補給も電球の交換も彼のところに連絡が来る。捜査とは無縁の仕事だ。
同僚が刑事への憧れを口にする中、自分の身の丈に合った仕事をしていると言う悠日。みんなから馬鹿にされてますよと言われるけど、馬鹿にするより、馬鹿にされる方がいいと笑う。自分に期待していないし、上を目指すとか興味ないし、人間関係でストレスを抱えたくない。いつもヘラヘラ振る舞っているのは、そうやって人に壁を作っているから。
ところが、最近面倒な事を署長の雪松から任された。署内の鹿浜鈴之介という男の素行を見張れと言われたのだ。元県警刑事の鹿浜が家宅捜査の情報をリークしているとの噂があるらしい。自分はただの行政職員ですよ、とヘラヘラ笑って答えたものの「お前なら相手も油断するはずだ」と言われてしまう。
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